書評『サバイバル猟師飯』ブッシュクラフト&ハンティングという提案

最近読んだ狩猟系の本が、今日ご紹介する『サバイバル猟師飯(荒井祐介著)』です。

これがまたグッとくる本なのでぜひオススメします。

『サバイバル猟師飯』

タイトルの通り “飯” を紹介する本です。では “猟師飯” とはなんでしょう? いや、さらに “サバイバル猟師飯” とはなんだ? と疑問が浮かぶと思います。

この辺のニュアンスをくみ取って、もし「それおもしろそう!」と思ったなら、この本はぜひ読むべきでしょう。

わたしなりに解釈しますと、著者が言う  “サバイバル猟師飯” とは、「山で取った狩猟鳥獣+魚を、そのまま山の中で食べるもの」です。言われてみれば当たり前かもしれません。単に “猟師飯” であれば、それは山で獲った狩猟鳥獣を家で食べることに聞こえてしまいますから、あえてサバイバルという言葉を足した意図は「そのまま山の中で食べる」という部分にあるのでしょう。

とまぁ、自分で考察しなくても、実は表紙がすべてを語っています。まず写真。焚火で渓流魚を焼いています。そして、本のサブタイトル。

獲物を山で食べるための技術とレシピ

そう。わたしの考察の通りですね。しかし、ただのレシピではないんです。「技術」にポイントがあります。

 

技術とレシピ

この本がおもしろいところは「レシピ集」にまとめなかったこと。あくまで「技術とレシピ」なんですね。焚き火の熾し方、野営の仕方、動物の解体方法、肉の背負い方など、料理そのものではない「山の技術」にもページが割かれています。

で、この「技術」と呼ばれる部分ですが、わたしの意見としては「サバイバル」と呼ぶよりも、「ブッシュクラフト」と読んだ方がしっくりきます。実際、本の中ではブッシュクラフトという言葉を使っていますね。もしかするとタイトルはキャッチーにするためにサバイバルという言葉を使ったのではないか、と勘ぐってしまいます。

僕が単独狩猟を好む理由は、単に自由気ままな旅を愛し、協調性に欠けているからではなく、長年取り組んできた「ブッシュクラフト」との出会いにある。

『サバイバル猟師飯』P.015

ただ、よくあるブッシュクラフトを実践する人と違うのは、著者が猟師であるという事実。そして(たぶん)それが理由で取り入れた日本の技術なんじゃないかな、と思っています。

ブッシュクラフトは輸入されたアウトドア技術のため、日本の風土や気候に適していない技術も多い。それらを補うのは、マタギなどから得た知識や伝統的な手法だ。山菜類の栽培、肉の処理、保存、調理、すべてが厳しい環境で無駄を省かれながら育まれてきた日本のブッシュクラフトだ。狩猟記に得た獲物の羽は、夏の間に使う毛鉤になり動物の腱やスジは革を縫うためのシニュー糸に加工する。毛皮は一枚一枚自分の手でなめし、無駄なく道具に変わるのである。

『サバイバル猟師飯』P.015

つまりブッシュクラフトで学んだあれこれの上に、猟師としての経験を積み重ねたスタイルということでしょう。

 

憧れの実践!

入口が狩猟であれ、ブッシュクラフトであれ(あるいはその他のどんなスタイルであれ)、「山の中で獲物を獲って、長く山の中でこもれたら楽しいな」と思う人って少なくないんじゃないでしょうか。

わたしも憧れています。

そういう憧れのスタイルを実践している人の本だから、その行間や写真の端々から伝わってくる空気感に魅了されます。

なんというか、「うまいレシピが載っているからこの本はオススメ」ではないんです。うまいかどうかなんて抜きにして、おもしろいスタイルで山遊びをしている人だから、そのスタイルを見てほしくてオススメしているんです。

だいたいレシピ自体も作り方はそんなに丁寧に説明されていません。極めて簡単な紹介だけ。むしろ、著者自身とそのレシピの関係。どういうときに食べるとか、どこで知った料理なのかとか、ちょっとしたエッセイ的な文章の方が大部分を占めます。

だいたい山で食べる飯に詳細なレシピなんかいらないでしょ? あんまり細かいこと考えず、ザッと作るから楽しいんじゃない?

 

「旅」に重きを置いた本も読んでみたい

勝手に期待を書いてしまいますが、もっと「旅」に重きを置いたこの著者の本を読んでみたいンです。

そういう本も書いていそうだな、と検索してみたのですが、わたしが見つけられたのはこれだけ。

これはこれで、気になる本ですけど、技術ではなく、旅そのものをノンフィクション的に書いてくれたらおもしろそうだと思うんですけどね〜。

とまぁ、次の本が気になるくらい、おもしろい本でした。ちなみにあえて書きませんでしたが、出てくる猟師飯も実際うまそうでしたよ。「鹿の時雨煮」とか絶対やる!

書評『息子と狩猟に』”キレイゴト” との戦い

『息子と狩猟に』これは山岳・狩猟ライターである服部文祥氏の初めての小説作品だ。彼は昔から小説を書きたいという願望があったようで、念願叶って書いた作品らしい。
この本、実は発売してすぐに手にし、すぐに読み終えていた。そしてすぐに紹介記事を書くつもりだった。

しかしこの本を机の隅に積んだまま、ずっと書けずにいた。でも、いい加減、そろそろ書こうと思う。

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書評『黄色い牙』エンタメ性が高く、風刺も効いている小説でした

狩猟系の本、特にマタギに関わる本は見かけたらできるだけ読むようにしています。

最近読んだのは『黄色い牙』。書いたのは志茂田景樹氏。直木賞受賞作ということで、注目度の高い1冊なのですが、お恥ずかしい話、この本の存在を知ったのは最近のこと。

とってもおもしろかったので、マタギ・狩猟系の小説に興味がある人はぜひ読んでみてください。
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本紹介『最新読図術』リアルなケーススタディで知る地図とコンパスの重要性

今日ご紹介するのは読図術に関する書籍です。

地図とコンパスについてとても丁寧に細かく紹介してくれている本ですので、流し読みせず、じっくり地図をにらめっこしながら読むことをオススメします。

『道迷い遭難を防ぐ 最新読図術』

この本はわたしが購読しているブログ『北欧ナイフでお気軽アウトドア』さんで紹介されていて、すぐに購入しました。

参考:お役立ち書籍紹介vol.20

いわゆる、基本的な地図とコンパスの技術は知っているつもりですが、今一度再確認することと、いろんなケーススタディが掲載されているということで、この本を手に取りました。

リアルなケーススタディ

まず紹介されているのは実際に道迷いで遭難した大小のケーススタディです。

25000分の1地形図を使って、登山者の予定コースと道迷いのコースを紹介し、なぜそれが起きたのかを検証していきます。

本当に些細な間違えから、死亡に至るケースもあり、このケーススタディを読んだだけでも気が引き締まる内容でした。

また「道に迷ったが、地図とコンパスの技術を用いて解決できた」ケースもあり、地図とコンパスの重要性を再確認するには最適です。

いや、ほんと怖いですよ。

知識ではなく、技術

これは本に書いてあったことではなく、わたしの意見なのですが「地図とコンパス」は知識ではなく、技術だと思っています。

たとえば地図の整置の仕方を知っていても(知識はあっても)、スッとできないなら意味がない(技術がない)。技術は繰り返し練習して習得するものです。プロサッカー選手はボールの蹴り方を知っているから上手なのではなく、繰り返し練習して、「考えなくても蹴れる」くらいに習得しているから上手なのです。地図とコンパスもそれくらい深く習得する必要があるのでしょう。

この点では、自分も所詮 “知識” として知っているだけで、まだ “技術” の習得に至っていないな、というのが実感です。

山の中で道に迷うと結構焦ります(経験者)。日中の道迷いでも焦るのですから、陽が沈んだり、雨が降り始めたり、極端に冷えてたりすれば、その焦りは高まります。

そんな焦りの中、ちょっとばかり地図とコンパスの知識があっても、活かせるとは限らないのです。やはり繰り返し練習して、当たり前のようにできなくてはいけなのだな、と思います。

そんなことを痛感させられる本でした。

実践的な知識

この本の中では基本的な地図の読み方はもちろんのこと、実際の25000分の1地形図と現地の風景写真を対比しながら、どう現在地を見極め、どう行くべき方角を判断するのかを説明してくれます。

読むときは文字だけを流し読みせず、ぜひ読む手を止めて、地図をじっくり読み取ることをオススメします。それだけでもただの知識ではなく、経験値として身につくこと間違いなしです。

本当に実践的な知識が豊富な1冊です。

わたしはそんなに大量の地図・コンパス系の本を読んできたわけではありませんが、この本はお気に入りですね。

本棚に置いておいて、時々開いて再確認したいと思いました。

書評『アニマル・トラッキング』山の動物に興味を持ったら読んでみたい本

山歩きをしていて、「おや、何かの足跡があるぞ?」とか「あれ、樹皮が削れてる」なんてことありませんか?

何も知らないと「動物の痕跡だ!」としか分かりませんが、少し知識があれば「シカだな」とか「イノシシだな」と動物の種類を見分けられるようになります。

今日ご紹介するのは、そういったアニマル・トラッキングの入門にオススメの1冊です。

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書評『越後三面山人記』ダムに沈んだ三面の記録

今はダムに沈んだ新潟の山間の集落『三面』。この三面がなくなる前に、その生活を記録しようと立ち上がったのが、著者である田口洋美さんでした。

この本はその記録の集大成です。東北の狩猟や山での生業などに興味がある人にはオススメできる1冊です。

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