単独猟日記8:初めて獲ったシカのこと。自分で決めて自分で撃つこと。

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やりましたよ! やりました。「初めてのシカ」を犬なし単独忍び猟で獲りましたよ。

そのシカを獲る一部始終をご紹介します!

※ 獲ったシカの写真含め、人によってはショッキングに感じる写真もあります。そういったものを見たくない方はページを閉じるようお願いします。そういった写真は面白半分にご紹介しているものではなく、誰かの役に立てば、と思って掲載しています。ご理解いただきますようお願いします。

その瞬間は唐突に

単独猟も8日目。

もちろん、これまでの7回は獲物が獲れていません。ニアミスだったり、大チャンスはありましたが、結局は獲れていないわけで、心のどこかで「獲れないクセ」がついてきたような気がします。この日も朝の日の出と共に山に入り、「さあて、日暮れまで頑張るぞ」と思っていました。「日暮れまで頑張る=獲物は獲れてない」ですからね。

いつもの山、いつものルートを歩きます。

ルートは少しずつ見直してきて、ずいぶん「いい感じのルート」ができあがってきました。よく鹿に遭遇するスポットを通り、しかも危険度が低く、足場がよくて忍びやすいルート。少しずつ改善して、自分なりに開拓してきたルートです。

日の出は約6時半。歩き始めて3時間が過ぎた頃のことでした。

ちょっと急な斜面をジグザグに登っていました。広い尾根の上です。

ガシャガシャガシャガシャ、ゴロゴロゴロゴロゴロ!

隣の尾根からかなりでかい音が聞こえてきました。一瞬軽い雪崩かと思ったほどの音です。これまで山の中で聞いたことがないような音でした。

これまで聞いてきたシカの足音であれば、かなり用心深く「カサ……カサ……」と1〜2歩歩いては止まり様子を見るようなものばかり。激しい音が聞こえるとしたら、こちらの気配を気取られて、大慌てで逃げていくシカくらいのもの。だから、隣の尾根のシカがそんなに音をたてるのを聞いたことがありません。

相変わらず続くガシャガシャガシャという音。

その音はこちらに向かっている気がします。谷を下って、こちらの尾根に来ようとしているのかもしれません。しかし確信もなく、一瞬「傍観者モード」になりかけます。

「ダメだダメだ! もしかしたら獲物かもしれないから、準備をしないと」

幸い、もしシカかイノシシだとしたら、自分たちが大きな音をたてているため、こちらの音に気が付く心配はありません。けっこう堂々と鉄砲の用意をして、弾も装填します。

この場所ってもしかして!

さて、どこに立って、どう待ち伏せようか!? と考え始めたときに気が付きました。

「あ! この場所!」

じつは、この場所は前回の忍び猟で鹿に出会った場所だったのです。

参考:単独猟日記7:痛恨の失敗獲れるシカを獲らなかったこと

同じ場所どころか、音の様子から察するに、まったく同じ獣道を通って、まったく同じように向かってきている気がします。そのうえ、わたしが立っている場所もほぼ一緒。

「なら、シカが出てくる場所はばっちり分かるぞ!」

かなり自信を持って、音の主が飛び出してくる場所に銃を構えます。念のため杉の木の後ろに半身を隠すように立ちます。

音もどんどん近づいてきます。もういつ出てきてもおかしくない……。最初に音を聞いてから、ここまで30秒ほどでしょう。あっという間のことでした。

シカの群れ!

飛び出してきたのはオスジカ。オスジカは恐る恐る出てくるのではなく、姿を見せたままサーッと5mほど歩いていました。そこでピタリと止まります。わたしを見ているわけではありませんが、こちらの方向を気にしているようです。オスジカとわたしの距離は15〜20mほど。たぶんですが、人間の匂いに気が付いたのだと思います。

後ろからメスジカが3頭か4頭ほど出てきました。オスジカが周りの様子を伺っているのを見て、メスジカも止まります。

この瞬間、まるで山の時間が止まったようにすべての動きが止まった気がしました。

わたしの銃は、ほぼ無意識のうちにオスジカのバイタルゾーンをずっと狙っていました。右目でスコープを覗き、左目でボンヤリと後ろのメスジカもチェックします。

「メスの方がうまいって言うし、メスを獲るか? でも迷って鉄砲を動かせば逃げられる。もう『惜しくも逃げられた』なんて体験はしたくない! オスを撃て!」

最後の「撃て!」という言葉は本当に心の中で叫んだように思います。

引き金を引きます。あとで思えばすごく冷静に引くことができた気がします。ガク引きもなく、自然と引けました。

オスジカが真上に跳ねました。

「当たった」

すると音に驚いて蜘蛛の子を散らすように、すべてのシカが四方八方に散っていきます。一瞬「他のシカは?」と気を取られて、キョロキョロしてしまいました。下に逃げるシカ、来た方法に戻るシカ、それぞれバラバラと派手に音をたてて逃げていきます。

どこ行った……?

ひと通りのシカが逃げていって、残されたのはわたしだけ。

「で、俺の撃ったシカは……?」

飛び跳ねたのはハッキリと見た。かなりの致命傷のはず。

「初めての獲物だ!」

気持ちはかなり昂ぶります。喜びもありますが、「ちゃんと最後までやらないと! 生きているなら一刻も早く仕留めないと! 死んでいるなら血抜き、解体を早くやらないと」という責任感と言いましょうか? 率直に言って慌てるような気持ちがかなりありました。

「おれのシカはどこに逃げたんだろう?」

他のシカの動きに気を取られて、撃ったシカを目で追うのを忘れていました。弱ったシカは斜面を下る傾向があると言います。パッと見て、下っていく足跡——というか斜面を崩すような激しい跡が2本ありました。

「どっちだろう? でも、本当に下に行ったんだろうか?」

——撃ったら獲物が立っていた場所を見ろ

とは、猟師がみな言う言葉ですね。その基本に則って、シカの立っていた場所にいってみました。

肉片です。ちょっとエグい写真ですので、白黒にしました。写真右の枝にぶら下がったものが肉片です。スラッグ弾の威力をまざまざと見せつけられた気がしました。

血が垂れていることは想定していましたが、その場で肉片が飛び散るとは……。ショッキングな光景です。しかし、そんなことに思い耽っている場合ではありません。

血を追うことにします。見ていると、点々と血が垂れています。その血は想定通り下へ下へと向かっています。それも、途中からは「点々……」というよりも、「ドバッ」と垂れてて、しばらく血がなくて、また「ドバッ」と垂れている感じに変わりました。

恐らく、斜面が急なため、事切れたシカが転がり落ちたのだと思います。で、岩などに当たるたびに血が多く出たのだろうと思います。

結局、シカのいた位置から30mちょっとくらいの場所でシカは事切れていました。

引き金の重み

シカを獲れた喜びはもちろんありました。ガッツポーズしたくなるような気持ちです。しかし同時に、さっきまで生きていたものが、今は生きていない。それも自分ひとりの判断によるものだということをまざまざと感じてもいました。

罪悪感とか、申し訳ない気持ちとか、そういうこととは違う気がします。そういう気持ちもありますが、もっと違う何かです。ずっと考えているのですが、このときの気持ちを短い言葉で表現することができずにいます。少なくとも言えるのは「自分の判断でくだした結果である」ということ。それが重要です。

「ほら、あれを撃っていいよ」

と誰かが言ってくれたわけではありません。自分ひとりの判断で猟場を選び、自分ひとりの判断で今日出猟し、自分ひとりの判断で引き金を引くと決めたわけです。だれにも押しつけることのできない事実です。あのとき撃たない判断をすることもできたけど、あのとき自分のために、自分で撃つと決めたわけです。猟果を得たい。うまい肉を食べたい。これまで頑張ってきた結果をだしたい。そういういろんな気持ちが引き金を引かせるわけです。

「引き金を引くのが自分なら、引いた結果も自分が背負わなくちゃいけない」

そういう重さを感じました。

解体

さて、現実には、そんな感慨に耽っている時間はありません。

一刻も早く解体をしなくてはいけません。

巻狩に参加して、解体を見ていたことはありますが、自分でやるのは初めて。

「まずは血抜きか?」

どういうやり方がベストかは分かりませんが、前に服部文祥さんが首を切って血抜きしているのを見た記憶がありますので、その方法をとることにしました。しかし、まったく血が出ません。あとで分かりましたが、弾は心臓の端に当たっており、血は胸腔の中にたまっていましたね。もしかしたら、胸腔をあけるように切れば血が出たかもしれません。

ともかく内臓を抜く必要があります。本当は足場のいい、平たい場所に移動したかったのですが、重くてひょいひょいと運べるものでもありません。斜面なので転がり落とすことは可能なのですが、一度転がしてみて、力なく、岩に当たりながら落ちていくシカの身体を見て、なんだか痛ましくなってしまい、斜面で解体することにしました。とはいえ、うまい具合に収まりのいい場所を見つけたので良かったのですが……。

YouTubeでもかなり解体の動画は見ました。

参考:いつかくる鹿の単独解体に備えて:解体動画を集めてみた

その記憶を探りながら、腹をあけます。腹は簡単に開きますが、肛門の処理で悪戦苦闘。美しくやれたとは思いませんが、それでもとにかく肛門も除去し、なんとか内臓を抜きました。

胸骨も割って広げると見たことがあったので、手持ちのナイフでやってみます。ちなみに現場で最初から最後まで使ったのはこちらのナイフ。ナイフ作家である奈良定守さんのナイフです。

ナイフ作家、奈良定守さんのナイフ

胸骨もこのナイフで切り開いていきます。骨の隙間にナイフを押し当てて、手で叩いて割っていきます。刃の欠けが怖かったのですが、まったくそんなことはなく、切れ味も落ちた感じはしませんでした。ナイフに関してはノーストレスでしたね。

大バラシ

持ち帰るためにある程度の大きさにバラしていく必要があります。現地で細かく分ける人もいるようですが、できるだけ早く撤収したかったこともあり、大雑把に枝肉(腕とか足に分けただけの肉)に分けるだけにしました。上手とは言いがたいですが、とにかくやりきります。

また、せっかく初めてのシカがオスだったので、頭も持って帰ることに。また革もなめしてみたい気持ちがあったので、そちらも持ち帰ることに。

ただ、残念ながらわたしが肩を撃ってしまっており、前足はすね肉以外はとれませんでした。心臓も当たってしまっておりアウト。肝臓は持ち帰りましたけどね。

※鹿の首などが映っているため、小さな写真にしてあります。興味がある人はクリックすると大きな写真で見られます。以下同様。

持ち帰るために、持ってきていたのが土嚢袋。ビニール袋じゃすぐに破けるのが目に見えていたので、ゴミ袋に入れたあとに土嚢袋に入れて持ち帰る作戦です。そしてすべて土嚢袋に収納した様子がこちら。

考えてみてください。土嚢袋2つです。肉の塊です。

帰りは危ない

体力には自信があります。

肉だって持ち帰ることに不安はありませんでした。しかし舐めていましたね。

普段ならひょいひょいと歩く山道も、これだけの大荷物を持っていると本当に危ないです。ちょっとバランスを崩せば転ぶし、足場は崩れるし、石は転がり落ちます。とにかく危ない。

車に戻るのを諦め、1番近い林道におりました。それでも1時間半は歩きましたね。で、林道近くの山中に肉と鉄砲以外の荷物を隠し、鉄砲だけ背負って車に戻ります。あとは車で肉と荷物を拾えば完了!

帰り道のことを甘く見ていましたよ。

大量の肉!

家に帰り、さっそく肉をバラしていきます。これも下手くそながらも、感だけで進めていきます。上の写真に加えてもう少しあるかな。肝臓も写っていませんね。これらを適当な大きさに切り分けて真空パックし、冷凍しました。

参考:真空パック機の威力に感動:ハンターに限らず持っていて良いかも

背ロースだけは熟成させてみることにしました。本当は他の肉も熟成させたいのですが、そうすると冷蔵庫を占領してしまうので背ロースだけ。

幸せな夜でした

この日の夜は肝臓と背ロースを焼いて、ビールを遅くまで飲んでいました。テレビも見ず、「猟をやりたい」と思った1年前のことから、今日1日のことまでを振り返って、酒と肉を交互に口に運んでいました。

もちろんさっき書いたようにシカを撃った直後はいろいろセンチな気持ちにもなりましたし、その気持ちはこの記事を書いている今でも残っていますが、でもその気持ちは獲物を獲った喜びを薄めるものではありません。とにかく嬉しいし、達成感があったし、幸せな気持ちでした。

また次の獲物も頑張って獲ります。そのために一生懸命に山に関わっていきたいと思います。

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