【単独忍び猟】2ヶ月橇を引いて狩猟に取り組んで分かったこと
以前の記事で書いたとおり、今期になって初めて橇を引いて出猟してみました。
いろいろ課題はありつつも、なかなかよかったもので、それ以降も橇を活用しています。で、2ヶ月ほど使ってきていま思っていることを書いてみたいと思います。メリットデメリットはもちろん、「こういうのもよさそう」という妄想も含めてお話します。
単独忍び猟における橇の効能
狩猟を始めたとき「獲物を獲るのが大変」というイメージでしたが、いまは「持ち帰るのが大変」という気持ちの方が強いです。
わりと体力がある方で、そうそう筋肉痛にもならないんですが、獲物を持ち帰った日だけはやっぱり筋肉痛になります。それくらい背負って帰るのは大変なんですよ。
大変だと何が起こるかというと——
「ああ、ちょっと遅くなってきたし、車から遠いし、獲って帰るの大変だなァ」
っていうネガティブな感情がちょっと湧いてきて獲るのを躊躇するようになります。あるいは心の底で、そういう気持ちがあるからか、歩き方が雑になったりする気もします。
その点、橇を使うようになって、そういったネガティブな感情はなくなって「回収は大丈夫」という気持ちが強くなりました。
安心して解体〜回収ができるというのは、狩猟を続ける上で重要だな〜と痛感しています。
(じつは無雪期の回収も同じことが言えて、それはそれで自分なりに満足のやり方に至ったので、今年は「回収改善の年だった」と思っています。参考:狩猟用ザックStone Glacier EVO3300はムダのない優等生)
まず橇を使って感じたメリットから
①回収が楽
これは前述の通り
②ザックを背負わない分、行動中の上半身が自由!
ザックを橇に括り付けて行動しているので、狩猟中にザックを背負わなくなりました。ウェストポーチやビノハーネスだけはつけていますが、やっぱりザックがないので上半身の自由度が格段に上がります。
たとえばザックは立ち止まっていても、重さから逃げられるわけではありませんが、橇は引くときこそ重さがあれど、立ち止まるとゼロになります。これはすごい。
また同じ理由で、「撃つとき」にザックがないんです。重さはないわ、肩ひもはないわ、で撃つ上ではメリットしかない印象です。
ただ発砲に関してはデメリットもあるので、それは後述。
デメリットもある
①最後の忍び寄りで邪魔に感じることも
これが1番のデメリットで課題です。獲物が見えていて、ソーッと忍び寄りたいときなど、橇が邪魔になります。
ちょっとのことではあるんですが、やっぱり音も気になるし、どうしても後ろにあるだけに意図しないところ木にこすれたりして、予期せぬ音が出てしまうこともたまにあります。
で、対策はとにかく「簡単にはずせるようにしておく」です。
ぼくはウェストポーチにカラビナを使って固定しています(ウェストポーチは前側に荷物を持つようにいているので、後ろのバックルあたりにカラビナを介して橇に繋いでいます)。カラビナを外してしまえば、橇を置いていけるので、大事な場面ではそうしています。
これで概ね問題は感じないかな、と(強いて言えば、カラビナを外すのがちょっと面倒…
②トラバースで橇が落ちる
斜面をトラバースをすると、橇だけズリズリっとずり落ちることがあります。
でも、じつはこれをあまり問題には感じていません。
というのも、橇を使う時期(雪の深い時期)だと、当地ではシカは山の上には行かず、平野周辺に集まります。そんなに「山岳地帯」を歩くことはありません。というかまったくないです。
だからひたすら平野か、穏やかな丘を上り下りする程度。厳しい斜面をトラバースすることがないので、このデメリットを感じたことはないです。
1度か2度、自分の不注意でちょっとした斜面をトラバースしようとして「おっとっと」となったことがある程度です。
自分なりの工夫
そんなに突き詰めてアレコレ工夫しているわけではないですが、模索してきた部分もあるので、そのあたりを共有します。
①橇を背負う案はダメだった
橇を背負って行くほうが行動しやすいかも、と考えて1度試してみましたが……
橇を引いて行くのも悪くないけど、今度は橇を背負っていこうかな。帰りは引いてくればいい。いろいろ試してみる。
にしても、亀仙人みたいになりそう。 pic.twitter.com/LWMS3OAy9p
— やまくじ『山のクジラを獲りたくて』 (@yamakuji_jp) January 26, 2022
ダメでしたね。1度やってダメだと思いました。肩に背負った鉄砲が橇に当たってガチャガチャうるさかったです。
これ、やってみたけど、ぼくはだめだ。鉄砲を肩に背負うと橇に当たるし、引いた方がやっぱり楽。
あと、引き紐を棒にする事で、下り坂での追突防止にしてたけど、普通に紐でもあんまりストレスはなかった。行く場所の地形によるかもしれませんが、当面は紐でやろうと思います。 https://t.co/UYxMzIQqTe
— やまくじ『山のクジラを獲りたくて』 (@yamakuji_jp) February 1, 2022
②引き紐は “紐” か “棒” か
引き紐に関しては “紐” か “棒” という迷いがあります。過去に「橇は棒で引いた方がいい」というのを読んだことがあり、それに従って最初は棒を使ってみました。棒を使う根拠としては、たとえば「下り坂で後ろから衝突されない」ということが大きいでしょう。小さなメリットとして、多少は橇のコントロールもしやすくなる気がします。
ただ、紐も試してみたところ、あんまり不便は感じませんでした。軽量化できる分、メリットの方が大きい印象です。
これは地形にもよるのだと思います。ぼくが行くところだと高低差がなく、平野+丘くらいのもの。それだと棒のメリットが出てこないのかな、と思っています。いまはいつも紐です。
③ザックは気取らず最軽量のものを
ザックは背負わず、橇に括り付けます。これは行きも帰りも同じこと。
なので、最軽量のザックを使うのが吉です。ぼくはこれを愛用しています。
参考:やっぱりいいじゃんキスリング系のサブザック(関東でも使えば良かった!)
重量404gの軽量ザックです。ほぼただの袋なので、軽くて当たり前ですね。むしろタダの袋でもいいのですが、いざというときに背負うという選択肢を残しておきたいことから、一応ザックに固執しています。
④紐は外しやすく
とにかく引き紐の脱着は簡単にできるようにこだわっています。といってもやっていることは先述の通り「カラビナで繋いでいる」というだけのこと。
今後、脱着しやすいバックルなどを検討してもいいかな、とか考えています。ここはいろいろやりようがありそうです。
⑤紐はスキーに当たらない範囲で短めに。
長いとコントロールしにくいし、短いとスキーに当たります。
そのせめぎ合いです。
今後の改善&妄想
という感じで、かなり満足しているのですが、「これもやってみたいな〜」という妄想はいくつかあります。
まずは「橇の裏にアザラシの皮」ですね。これはゾンメルスキーと同じ要領で、後ろ向きに滑らないようにする工夫です。
いくら平野がメインだと言っても、微妙な上り下りはあります。ちょっとした登りで橇がズルッと後ろに滑りそうになるのはややストレスです。
高価な皮でなくても、人工的なナイロンとかでもいいので、スキー用のシールなどを切って貼るのもいいかな、って。
つぎに「網をかける設計」も気になっています。ママチャリのカゴに盗難防止で網をかける人がいますが、あの容量でざっくり網をかけられたら便利そうだな、と。必要に応じて細かい荷物を固定することもできるし、肉の回収でも、肉を橇に固定しやすそうです。
橇の周囲に網をかける穴でも開けておけばいいので、難しいことでもないんで、そのうちやろうかな、と思ったりしてます。
さっさと橇を使えば良かった
もう、ひと言で言えば、北海道の初年度から橇を使えば良かったです。
それくらい気に入っています。まぁ、捕獲まではちょっとだけ「邪魔くさい」って気持ちがあるんですが、なにしろ単独猟の課題である「肉の回収」が捗るのだから、文句は言えません。
地形などにもよると思うので、万人受けするわけでもないでしょうけど、一考の余地はありますよ。
「こういう工夫をしているよ」っていうのが、あったらぜひ教えてください。
マネしたいです。
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