単独猟日記:猟期最後のご褒美か? シカとシシを頂きました
2月15日。多くの地域では猟期の最終日です。わたしの地域ではイノシシは終わりですが、シカは月末まで延長されています。
ただ、わたしの仕事の都合上、2月16日以降は猟に出られるかもわからず、もしかするとこれが最終日になるかもしれないという気持ちでの出猟でした。
※獲った獲物の写真があります。気分を害する人はこの先は読まずに閉じてください。
凡ミスでシカを見逃す
集中力ってどうしても波があって、高い集中力を維持するのって難しいものです。この日も、山に入って1時間ほどでシカの群れに遭遇していたんですが、ボーッとしてて、鳴かれて気が付く有り様でした。
開けた場所で、近かったし、どう考えても丸見えだったはず……。
10頭くらいの群れで、慌てて追ったのですが、発砲には至らず……。
「最終日に何やってんだよ!」と自分に喝を入れます。じつはこれ以外にも2回ほど獲れてもおかしくないシチュエーションを逃しており、悔しさMAX。これで猟期を終えるなんて嫌すぎる、と気持ちが昂ぶります。
上の写真の斜面を中腹まで登り、そのままトラバースしながら獲物を探します。するとこの30分後に物音に気が付きました。
物音……鳥? シカ?
尾根を回り込んだ向こう側で枯葉を踏むような音。それが2度3度と続きました。
自分のいる位置から尾根を回り込んで見えるところまで行くには枯葉ばかりのエリアを20mほど通り抜けなければいけません。
音を出せば逃げられる……と徹底的に忍び歩きに集中します。途中で小枝を踏んで「パキッ」と鳴り、心臓が締め付けられるような思いがします。大きな音が出てしまったら動かず、場を鎮めてから、また動き始めるようにしました。
そして視界が開けます。
全身をいきなり出さず、まず顔を出して、回りをチェック。パッと見では何もいません。
「あれ〜鳥だったかな?」
と諦めかけたとき、50mくらい先の藪の影に気になるシルエットが……。双眼鏡で確認するとはっきりシカと分かります。藪の後ろにいるのではなく、藪の外の丸見えな場所に立っていたんですが、日の加減で影になっていて、そこにキレイに収まって2頭が立っていました。
1頭はこちらに興味もなく餌を食べています。もう1頭はちょっとこちらの方向を見ているようですが、少しズレた位置を見ています。たぶんわたしのたてた音が気になっているのでしょう。ちょっとだけ警戒していますが、わたしの存在には気が付いていないようです。
顔だけ出している状態なので、手元で鉄砲の用意をし、ゆっくり銃を出します。傾斜のある場所なので、四つん這いの変な姿勢で射撃姿勢をとります。ヒジは地面についている状態です。
パッと見でやや小さそうに見えるシカを狙って撃ちます。胸にあたり、1発で転がり落ちていくのが見えました。驚くのはもう1頭。なんとまったく動きません。落ちていくシカを見て茫然としている様子。弾は2発込めていたので、ボルトを操作して2発目を装填し、2頭目に照準を合わせます。
「猟期最後だし、2頭頂くのも悪くないよね」
……
「いや、待てよ。2頭獲るならイノシシを探しに行きたいゾ」
と思い直して、弾を脱包。撃ったシカはすぐ下で倒れていました。
急いで血を抜き、腹を出し、沢に沈めます。こういう沢がないと、気楽に「イノシシも」とはいきませんね。
鮮血が激しく、かなり血だらけになりました。
さて、大急ぎで沢に沈めたので、今度はイノシシ探しです。
イノシシの寝屋&えさ場
この山に1ヶ所だけ、かなり有力なイノシシスポットがあるのを知っていました。寝屋があり、その近くにえさ場もあり、入り組んだ地形で2年連続でイノシシを見ています。
「あそこに行っていなければ今日は終わりだな」
とその場所に向かいます。この場所は南向きに開けた入り組んだ谷です。斜面はかなり傾斜がきつく、人間はゆっくりしか移動できない場所。そこにイノシシの獣道があるので、その獣道の上方40mくらいの場所をトラバースします。
谷の奥まで行きますが、残念ながらイノシシがいません。途中鹿の群れは通りがかりましたが、黙ってやり過ごします。
そして先ほどのシカを沈めた場所に戻ろうと、来た道を戻り始めたところ、下方で物音がします。ガサガサガサ、といかにもイノシシっぽい音。でも見えない。ちょうど斜面の途中に段差があり、その段差のあたりにいるようなのです。
傾斜がきついので近づくのも億劫ですが、仕方ありません。ゆっくり降りていきます。
ガサガサガサ
まだいる。鳥の可能性もあるけど……。
ジワジワ近付いて行きます。
するとイノシシの背中の毛が見えました。どうやら地面のエサをほじくっているようです。どうやら小ぶりのイノシシが2頭いるようですが、その後ろでも音がするので、3頭いるのだろうと当たりをつけます。
しかし背中しか見えないので撃てません。イノシシを撃つなら1発で仕留めるつもりで撃たないと、長々と走られてしまいます。
待っていてもバイタルや頭が見えてこないので、またジワジワと距離を詰めます。砂地の地面が滑り、ズルッと音が出てしまいます。すると奥にいた1頭が頭を上げました。大きめのイノシシです。こちらを睨み付けますが、わたしが木の裏にいたため、すぐに逃げることはありませんでした。
とはいえ、ソワソワし始めて、しまいには子どもだと思われる小さめのイノシシの尻をつつき始めます。
「これ逃げようとしてるんじゃないか?」
と慌てて銃を構えて、大きめのイノシシの頭に照準を合わせてヘッドショット。揺れる視界の中でゴロゴロと落ちていくのが見えました。
「ヨシ!!!」
と思ったのも束の間、パニックになった小ぶりのイノシシが2頭ともわたしの方に突進してきます。どうやら下から襲われたと勘違いしたようです。
一直線に向かってくるイノシシに銃を構えます。急登なので、動きも遅く、撃てば当たる状況ですが、さすがに持ち帰れません。
腹から声を出して驚かせてやると、そのまま方向を変えて逃げていきました。
イノシシ!!!
逃げていくイノシシ2頭を見送って、改めて下を見ます。急斜面ですが、降りられないほど急ではありません。転がり落ちていくのははっきり見ているので、恐らく下で死んでいるはず。少し下が沢なので、そこにいるのだろうと思います。
——と思っていても心の中では「万が一にでも走られていたら困るな……」と不安な気持ちが拭いきれません。
しかしそれも斜面を降り始めてすぐに見つけたこの血痕で払拭。これで生きているとは思えません。
はやる気持ちを抑えて、急斜面を降りていきます。最後はちょっとした崖になっていたので、近くのつる性の植物を伝って降りていきます。そこにはすでに事切れているイノシシが。
やった。やった。やった。本当に嬉しくて嬉しくて、その場で「よし、よし、よし」とぶつぶつ呟いてしまうほど。
なにしろこのイノシシはただのイノシシではありません。次の春には北海道に移住するため、イノシシが獲れなくなるんです。そして、この猟期でイノシシが獲れるのは今日で最後。その最後の日に、ピンポイントで狙った場所で見つけたイノシシを獲ることができたわけです。
こんなに嬉しいことはありません
持ち帰りは地獄
いつも言っていることですが、単独猟は獲って終わりじゃありません。むしろ本当に大変なのは獲ってからです。
ひとりで獲った獲物を持ち帰らなければならず、それはそれは大変なことです。しかも、イノシシとシカの2頭分。「できるだけ肉は持ち帰る派」のわたしですから、その肉の重量はかなりのもの。
それでも何時間もかけてどうにか持ち帰りましたけどね。
それから2〜3日は筋肉痛でした。とほほ。
獲物が獲れたらまずは内臓系から食べます。この日はハツを。沢でしっかり冷やして血抜きもしてました。
こんな感じで適当に切り……。
おろし生姜+醤油+酒に10分くらい漬けて、フライパンで焼けばこんな感じに。これがウマイ! 獲物が獲れた日に、これを食べながら飲むビールは最高です。
最後のイノシシ猟
当面は、この日がわたしの「最後のイノシシ猟」でしょうね。
北海道に行ったらエゾシカがメインになるでしょうし、そもそもイノシシいませんし。
最後のイノシシ猟がこのような最高の結果になって、山の神さまっているんだな〜と都合良く思ってしまいました。花を持たせてくれたかなという感じです。
ちょっと移住関係で忙しくて、更新が滞り気味。恐らく3月後半まではこの状態が続くと思いますが、ブログをやめるわけでもなく、ただ忙しすぎるというだけです。4月くらいからはまた書く時間を確保できると思っているので、ご心配なく。これまで2年間本当に休みなく書いてきたので、ちょっとしたお休みだと思ってくださいな。それまででも書けそうなときは書きますしね。
チャオ!
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