単独猟日記10:強風のジンクスに抗うために新しい猟場へ

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朝、猟場に向かう車の中で、わたしは頭を悩ましていた。

「こういう風が強い日はシカに会えないんだよなぁ」

——と。

ジンクスというレベルかもしれないが、とにかく強風の日はシカに会える気がしない。そこで、どうせいつもの猟場に行っても会えないならば、前から気になっていた新しい猟場を開拓してることに。どうなることか。

いきなりシカに遭遇

いつもわたしはある林道の北側の山に入る。今日は同じ場所の南側の山へ。車を止める場所はいつもと一緒なので、不思議と不安は少ない。

今までも何度か行こうと思ってやめてきた場所なので、一応地形図は頭に入っているが、車の中で改めてチェック。こちらはいつも行く場所に比べてグッと入り組んだ地形。リアス式海岸調の山並みになっている。これが風を遮る上で重要な役割を担うのではないか、というのが今日の仮説だ。

今日のルートは湾のように、尾根にグルリと囲まれた深い谷間からスタート。いきなり風が少ない場所なので山に入った瞬間に猟モード。音を殺して歩く。

わたし歩くとき、音の少なさ以上に、“鹿のように歩く” を心掛けている。当然音は少ないにこしたことはないが、絶対にゼロにはできない以上、シカが音を聞いたときに「ん? もしかしてシカか?」と思ってくれれば嬉しいという考えだ。もちろん、こちらのそんな思惑などシカは知ったこっちゃないので、逃げるときは逃げるのだけど……。

 

歩き始めて30分。見上げた尾根の稜線上にシカのシルエットが現れた。急いで弾を装填。シカは動かない。立射でも十分に当たる距離。だけど、バックストップがない。銃口は向けられない。シカはこちらに横顔を向けているが、たぶんわたしの方を注視しているのだと思う。もし、尾根のこちら側に降りてきたら撃つつもりで待機するが、案の定尾根の向こう側へと降りてしまった。

小さなメスジカだった。

 

山を荒らさない

朝一で現れたシカは警戒音で鳴くこともなく、大慌てで逃げることなく、スッと消えた。恐らくわたしの存在をそれほど恐ろしい脅威だと認識しなかったのだろうと思う。逃げる様子も大急ぎと言うよりも、「よっこらしょっと」というのんびりしたもの。

あえて追うことはせず、むしろこちらはその場で立ち止まり、しばらくシカを逃がすことにした。

シカが激しく藪をかき分けて逃げ、ピー、ピーと激しく鳴いてしまうとしばらくシカに遭遇しにくくなる気がしている。まだ数少ない経験の上で感じていることなので、確信はないけれど、シカの立場になってみれば、仲間が命からがら逃げて、警戒音を上げているのだから、そりゃみんな警戒するだろうと思う。

というわけで、無理して追っても撃てる見込みがないときは、むしろ静かに逃がした方が次のチャンスが多い印象を持っている。この「撃てる見込み」の有る無しを読むのが難しいのだけど……。

 

歩きやすい山

今日は行った山はつくづく歩きやすい山だった。恐らく林業従事者が踏み固めた道だろうと思うのだが、それがいい感じに繋がっていて、かなり足音を殺して歩くことができる。

今日はこの山に入るのは初めてだったので、この道がどう繋がっているのかを探りながら歩いていた(このことが別の日に役に立つことになる。明日の記事参照)。

単独忍び猟をやる上で「歩きやすい山」はかなりの武器になる。藪をかき分けて歩くような山よりも、絶対にシカに遭遇しやすい。

——なんてことを考えながら、斜面をトラバースするように歩いていると、斜面下方でガサガサ音。どうやらわたしの存在に気付いて逃げようとしているらしい。3頭ほどの群れだ。

しかし逃げ方がゆるい。全力ダッシュではなく、念のため逃げておくか……という程度の緊張感のない逃げ方。

「これはすぐに立ち止まるはず」

大急ぎで鉄砲を用意。弾を装填し、すぐさま近くの杉の木に銃を押し当てる。逃げる最後尾のシカをスコープに納め、「止まれ止まれ」と念じる。距離は50mほど。この時の緊張感は言葉にできないものがある。

シカの歩みが遅くなり、ピタッと止まったのは……、木のうしろ。ちょうど3本の木が並び、その後ろに全身が隠れる形で停止。お尻の白い毛が見えているだけで、ボディが見えない。

「あと1歩、あと1歩前へ」

念じるどころか声に出てしまう。1歩前へ出れば頭が出てくるであろう場所に照準を合わせ、待機する。

数秒後、シカはそこから姿を見せることなく向こうに消えてしまった。するのを忘れてた呼吸を慌てて再開。

こうなると、木の後ろに身体を隠したことも偶然ではないような気がしてしまう。

 

シカの擬態

シカは擬態する。

猟をするまで知らなかったことだった。

尾根上を歩いていたときのことだ。ゆるやかに下っていく斜面を丁寧に丁寧に観察しながら歩いていく。2〜3歩歩いては立ち止まり、シカを探す。それを延々と繰り返す。

突然、斜面下方で音がした。小さなメスジカが逃げていくところだった。

またも逃げ方が弱冠ゆるい気がした。こっちの存在には気付いているはず(お互い丸見えの場所だったので)。なぜ逃げ方がゆるいのか?

「もしかして他にもシカがいる?」

わたしの感覚では群れになっているシカが逃げるときは、単独のシカに比べて逃げ方が遅い気がしている。気のせいかもしれない。このとき、そのことを思い出して、逃げたメスジカがいた場所に、他のシカがいないか探してみた。

ジーッと探すこと3〜4秒ほど。なんてことはない。メスジカのお尻が丸見えだった。まったく隠れてもおらず、どうどうと突っ立っていた。距離は40mくらい。立射でも当たる。急いで鉄砲を用意して構えるが、その動作で驚かせてしまい、一目散に逃げていった。

丸見えのシカに気付かなかったことがあまりにショックでその場で座り込んでしまった。

シカは擬態する。そのことを痛感させられた。

 

4回の出会い

結局、この日、4回の出会いがあった。

が、獲物は獲れず。わたしなりの反省点は2点ある。

 

1.依託射撃に頼りすぎない

これは最近、感じていたことなのだが、獲物がいると「委託できる木がないか?」を探す癖が付いている。もちろん状況によってはそれが正解だと思うし、その余裕があるなら、委託するにこしたことはない。

が、しかし、スッと構えて、スッと撃つことが重要な場面も多い。そういう場面の方が多いんじゃないか、とさえ思う。

少なくとも射撃場での練習で50mまでならば、バイタルゾーン(シカに致命傷を与えられる場所)に入るくらいの精度は出ている。であれば、まず立射で素早く撃つことを考えてもいい気がする。すばやく射撃姿勢には入れれば、よりチャンスを多く得られる気がする。

 

2.もっとシカを丁寧に探す

これは言うまでもないけれど、とにかくシカを見つける “ハンターの目” を養う必要がある。

これは「よし丁寧に探そう」と思うだけで良いという問題ではなくて、たぶん「とにかくシカをたくさん見る」という経験に尽きるのだと思う。

サバイバル登山の服部文祥氏が、Amazonプライムビデオのカリギュラという番組で「いろんな角度のシカを想像できることが重要」という内容のことを話していた気がするが、まさにそれだと思う。今日、見つけられなかったシカはお尻をこちらに向けていた。真っ白い尻を探すという意識が足りなかった。どうしても横向き・正面向きで立っているシカばかり探していたと思う。

 

良い猟場

とにかく良い猟場だったので、また来てみたいと思う。

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