単独猟日記19:最後のシシ猟の最後の10分
2月15日。猟期最終日です。わたしの住む地域ではニホンジカが例外で2月末まで。というわけで、2月15日はわたしにとってイノシシ猟の最終日というわけです。
シカは冷凍庫にもいっぱいあって困っていないので、最終日はイノシシだけに注力して出猟することにしました。
その最後の10分が大興奮だったので、そこに絞ってレポート!
この日は出会いが渋い
この日、イノシシの付き場をいくつか回ってみましたが、ギリギリ1頭を見ることができただけで、とても発砲に至る状況でもなく、渋い状態でした。
狙っていないとはいえ、普段ならポンポンと遭遇するシカにもあまり出会うことはなく、結局4頭群れに1度遭遇しただけ。撃つ気もありませんでしたが、やっぱり出会わないとちょっと寂しいですね。野生動物は見るだけで興奮します。
そして時刻は15:30。
「帰るか……」
イノシシを狙って獲るという目標に向けて、今期の最後の2週間はがんばってきましたが、とうとう獲れませんでした。やっぱり単独でイノシシを獲るのは難しいですね。
——なんて考えながら、とぼとぼと下山です。
林道を目の前にして……
下山中も諦めることなくイノシシを探していましたが、とうとう出会いがないまま林道まであと10メートルほどのところまで帰ってきました。
鉄砲をしまうためにボルトを抜き、銃カバーを取り出したときのことです。
「あれ……」
足下にイノシシの足跡がありました。しかもかなり新しい。すぐ横の谷間に向かっています。「まさかね……」と思いつつ、足跡を追って谷間を覗き込もうとした瞬間です。
ガラガラガラ……
すぐ近くで岩が転がる音。音がイノシシっぽい!
時計を見ると16時過ぎ。発砲可能時間は17時30くらい。あと1時間くらいは撃てる。抜いたボルトを差し直し、弾を装填します。そして音の方向へと向かいます。
「もしこれが本当にイノシシで、音がした方向に逃げたとしたら……」
実はイノシシが逃げた方向は切り立った谷間なんです。
写真で伝わるか分かりませんが、この谷間の左右は切り立った岩になっていて、登れば登るほど急勾配となり、最後は90度の絶壁になります。また奥も同じように絶壁。
つまり行き止まりなんです。
その後も、途切れ途切れにシシが逃げる音が聞こえます。その音は確実に谷の奥へと続いています。
銃を持ち、ゆっくりと谷の奥へ……。
シシの音が聞こえなくなりました。
「奥でジッと隠れてるか?」
「それとも、わたしの知らない逃げるルートがあったのか……」
迷いが出てきます。よく見れば、シシなら逃げられそうなルートがないわけではない。人間には行き止まりに見えても、野生動物ならあるいは逃げられるのかもしれません。
もう行き止まりまで10メートルちょっとというところまで来てしまいましたが、イノシシの気配がありません。
「あれー、おかしいなぁ。もしかしてやっぱり逃げるルートがあったのかなァ……」
振り返って、ここまでの経路に逃げ道がないか探していました。つまりちょっと諦めムードだったんです。
その瞬間。
ガラガラガラ!
谷の奥から岩が転がる音。慌てて、そちらに身体を向けつつ鉄砲を構えます。谷の奥の岩陰からイノシシが飛び出します。その姿はまさにジャガー!
助走ゼロで飛び出したイノシシはなんと絶壁を蹴り、2度3度と飛び、絶壁を上まで上がりきってしまいました。そして上がりきった瞬間「ブヒ」という鳴き声だけ残して、山奥へと消えていきました。
茫然、これがシシ猟の締めか……
そこにイノシシがいるとわかっていて、しかもその先は行き止まり。圧倒的有利な状況。
たった1つのミスは迷いでしたね。油断して後ろを振り返ってゴニョゴニョしていたのをイノシシに見透かされて、その瞬間に逃げられてしまいました。イノシシの運動能力を甘く見ていましたね。
マンガみたいにその場でへたり込んで、イノシシが逃げていった方向をずっと見ていました。
時計を見るとシシを見つけてから10分くらい。たった10分ですが、大興奮の10分でした。
あのとき、わたしはどうすれば良かったのかな……。いい機会なので、じっくり考えました。
そもそも、いま思えばぬかぬかと歩み寄ること自体が失敗だった気がしています。というのも、今回はイノシシが絶壁を登ってくれましたが、もし間近にまで歩み寄って、イノシシがわたしを襲うと決めたら下手すりゃ牙でやられてしまいます。イノシシの突進の速さはかなりのもの、銃を構えて撃つのが間に合うとは限りません。
とくにわたしの銃はスコープ付きなので、実はこういう超短距離は不利。
ということで、少し距離を置いて、できるだけ視界のいい場所を見つけて腰をすえて待つべきだったかなって思ってます。
物音ひとつさせず、息も殺して、発砲可能時間の残り1時間かけて待ち伏せるべきだったかな。もしかしたらイノシシが諦めてソーッと出てくるかもしれませんし、最悪ピョンと飛び出したとしても、遠くから狙いを付けて待っていれば撃てたかもしれません。
単独の猟ではこういう根気が必要ですね。待ち伏せ猟という意味だけではなく、獲物がいそうなときは時間をかけてゆっくりアプローチしたり、ジッと耐えたり、とにかく結果を急いで行動しちゃいけないですね。大きな反省を残してしまいました。
でも、イノシシを見た喜び
とまぁ、獲れなかったという意味では失敗ですが、初年度のわたしとしては「イノシシを見つける」ということが第一目標なので、実は大成功とも言えると思います。
それもこうやって間近で見ることができたのは、やっぱり嬉しいですね。
と同時に、イノシシの難しさを痛感させられます。シカに比べて狩るのは難しい動物ですね。とても慎重で、忍耐力があって、逃げると決めたら逃げる。隙がない動物で、とてもステキです。
さて、猟期は残り2週間。友人たちに「シカ肉が欲しい」と言われているので、あと1頭か2頭は獲れたらいいなと思っています。
張り切っていきましょう。
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