わたしが単独忍び猟で棒立ちのシカに出会えるように意識していること
最近ようやく棒立ちのシカに出会える機会が増えてきました。毎回とまではいいませんが、かなり高確率で出会えています(とはいえ遠かったりして、撃てるとも限りませんが)。
猟期になるまで散々下見で山を歩きシカを探し、猟期に入ってからもシカを探し、それでもぜんぜん出会えなかった「棒立ちのシカ」です。猟期も中盤を迎える頃、ようやく出会えるようになってきました。自分なりに意識していることがありますので、メモしておきます。
今年の猟期もそろそろ終わりですね。
来期の自分に向けて書いてみたいと思います。
※いつものことですが、ハンター1年生のわたしが書いているものです。間違っていること、書くまでもない当たり前のこと、考察が甘いものがあるかもしれません。わたしの成長の記録ですので、わたしが「今気にしていること」という内容であることをご理解の上、読んで頂ければと思います。
棒立ちのシカなんて存在しないのだ!
猟期の最初の頃、Twitterなどで単独忍び猟をやっている人たちが「今日、歩いていたら棒立ちのシカがいて、シカが獲れたよ!」とか書いているのを見て、本当に羨ましく感じました。
その頃、わたしだってシカには遭遇していましたが、ほとんど逃げるシカです。棒立ちしているシカなんて見たことありませんでした。猟期直前にこんなツイートさえしています。
棒立ちしてるシカとか、そんなん都市伝説に違いない。 存在しないんだ!
— やまくじ (@yamakuji_jp) November 1, 2017
当時、単独で駆除をされている人が「棒立ちしているシカ」のことを呟いていて、羨ましいを通り越して、焦りを感じていました。このままじゃ、猟期を迎えても獲物は獲れない! という焦りです。
しかし、今振り返って見ると、自分が悪かった。何が悪かったか? 当時の自分にアドバイスするつもりで書いてみます。
また、ここでは技術面について書いていますが、じつはもっと重要なこととして「シカがいる場所を知っている」ということが挙げられます。
わたしも同じ山を歩き続け、「早朝のシカはここにいる」「日中はここ」「夕方はこっち」とシカの動きをずいぶん把握しつつあります。その中でも「シカが日中のんびりする場所」を見つけたことは大きいですね。この場所を見つけていなかったら、いくら丁寧に歩いても鹿に出会うのは難しいかと思います。
その話はまた別の記事にでも。
シカを見つける目
歩き方も重要ですが、まず強調したいのは「シカを見つける目」の重要性。
人間は探しているものが明確でないと見つけることはできません。たとえばある場所にシカがいるかどうか見るとき、「その場所に立っているシカの大きさやシルエット」を具体的にイメージできている人の方が圧倒的に早いですね。
たとえば100m先のシカの大きさって想像できますか? 思ったよりも小さく見えるものです。その大きさをイメージできていると、肉眼でも見つけられます。
また、シカはいつも身体の横を見せて、こちらを向いているわけではありません。下のGoogle画像検索を見てください。左上のようなシカをつい探してしまいますが、たとえば下段左から二番目のように横になっているときもあります。
また、こちらの写真の左上のように、身体がこちらを向いていることもあるし、下段左から二番目のように、頭を下げていて屈むような姿勢をしていることもあります。
さらにいえば、上に挙げた写真のように全身が見えていることばかりではありません。頭を木の後ろに隠していたり、身体も半身が藪に入っていたり、頭だけ藪から出ていたり……。そういう可能性も含めて探さないといけないですね。
まぁ、何が言いたいかというと、「シカがどんな姿勢をしていても見つけられる目」が必要なんですね。わたしもぜんぜん未熟でして、ずーっといたのに見逃していることが多くて嫌になります。でも、前よりもずっと見つけられることが増えたので、たぶんこういう「ハンターの目」が養われてきたのだと思います。
どう養うか? たくさん見るしかないと思います。いないと思っても、しつこく肉眼&双眼鏡で探す。何度も見る。いい加減にパッと見て満足せず、じっくりじっくり探します。段々探すのが早くなる気がします。
ハンターの耳
目と同じ話ですが、耳も重要。シカは本当に静かですが、決して無音ではありません。歩けば音がします。
その音を聞き逃さないことが重要ですね。
そのためには耳を澄ますことと同時に、自分が動かないことが大事ですね。ピタッと止まって、周りの音を聞かないと聞き逃します。
警戒心を与えない歩き方
最初の頃は「シカに気付かれないように歩く」ということだけを意識していました。
もちろん、気付かれないように歩ければそれが1番ですが、人間はどれだけがんばっても「完全な無音」にはなりません。だからいつも「気付かれないように歩くのは無理だよー」と思っていました。
そこであるときから、「気付かれてもいいから、警戒心を与えない歩き方」を意識するようになり、確実にシカとの遭遇が増えました。
まず「自分なら……」という考えで、警戒心を持つであろう歩き方を考えてみました。
とにかく「早足」がダメ。山の中の動物は理由がない限り早足で歩くことはないと思います。ムダに疲れますから。早足で歩くということは、何かから逃げているor追っていることを意味すると思います。
ということで、「急いでいる」と思われないように歩くことが重要です。そのためにやっていることは——
- 1歩と1歩の間隔を長く取る(時間的な間隔です)
- 3歩程度を目安に、完全に停止する(イメージは餌を食べる動物。数歩歩いて、足下の草や虫を食べて、また数歩歩くというイメージです)
- 地面に足をおくときにドサッと置かない。まずは地面(枯葉など)に触れる程度、そこからゆっくり体重をかけていくイメージ。
- 大きな音が出てしまったときは長めに停止
大きな音をたてないことは重要ですが、かといって無音は無理。多少の音がしても仕方ないので、枯葉ばかりの場所などでも、「静かに歩くのは無理だよー」と諦めず、丁寧にゆっくり歩きます。枯葉地獄のような場所でも、棒立ちの鹿に出会うことがあります。音は聞こえていると思うので、やっぱり速さが重要かと。
上半身の動かし方も重要
歩き方とは別に、上半身の動かし方も重要だと思っています。
シカは動いている物を警戒します。当たり前ですね。
いくら忍び歩きがうまくできても、上半身がフラフラ動いていてはダメ。遠くから見られたら、すぐに逃げちゃいます。
わたしは上半身は完全固定、絶対に動かさないように努力しています。イメージはSWATみたいな人が、建物に突入するときのイメージ。足は素早く動いていますが、上半身は鉄砲を構えた姿勢であまり動かしませんね。いつ敵が現れても素早く射撃姿勢には入れるようにしているのだと思います。わたしもそのイメージです。
首・頭の動かし方
あえて首・頭は別のトピックにしました。
当然、動かさないことが重要なのは変わりませんが、頭は動かさないといけないのは事実。なぜなら、静かに歩くために足下を見なくてはいけませんし、獲物を探すために周囲を見ないといけない。
でも、首をキョロキョロ動かしてはダメ。この動きで逃げられることも多いです。
まず、わたしは下を見る動きはしないように意識しています。遠くの地面を見るように、斜め下を見て、視界の隅っこに自分の足下が入るようにします。で、眼球の動きだけで足下と周囲を見ます。どうしても見えない範囲を見るときだけ、最低限だけ頭を動かしますが、そのときもキビキビと動かさず、ヌラーっと動かすイメージ。わたしは自分に「風にそよいで動くように」と言い聞かせています。
シカが棒立ちしている場所に行くこと
これが実は超重要ですね。
そもそもシカはランダムにあっちこっちで棒立ちしているわけではなく、彼らなりに「棒立ちしたい場所で棒立ちしている」わけです。
山をひとくくりに考えず、「ここはシカの移動経路」「ここはシカのえさ場」「ここはシカの休む場所」と区別して考える必要があります。
移動経路でいくら探しても、棒立ちしているシカはいません。逆に移動中のシカに遭遇することもあり、それはそれで大チャンスですが、それはまた別のお話。
時期や気温によるかもしれませんが、わたしが棒立ちしているシカに遭遇するのは、杉林が多いですね。とくにちょっと谷間に面していて、風が吹き込まず、南向きでちょっと暖かい居心地のいい杉林。で、あまり杉が密集しておらず、遠くまで見渡せるような場所。
そういう場所の真ん中に入らず、端っこを歩くのがいいですね。で、ゆっくりゆっくり探す。
つまりこういう場所でシカが休んでいることが多いんですね。これまでこういう場所で何度も寝ているシカに遭遇しました。
(いたからといって撃つとは限りませんけどね。わたしは当てる自信がないほど遠いときは撃ちませんので)
余談、逃げられない歩き方
最後に、ちょっと歩き方について補足すると、無警戒なシカとはべつに、「めちゃくちゃ警戒しているけど逃げないシカ」というのもいます。
こっちに完全に気付いていたはずなのに、ずーっと動かず、お互いが視界に入った途端、びゅーんと逃げてくシカです。逃げるチャンスはいくらでもあったのに、どうして最後まで我慢するの? と思ってしまいますが、これはこれで理由があると思います。
わたしなりの考察ですが、これは「シカに逃げるタイミングを与えなかった」ときに起こることが多い印象です。シカにとって逃げるという行為は命がけです。なにしろ自分の居場所を相手に知らせるようなものですから。だから、シカの戦略としては
- 逃げなくていいなら逃げないでやり過ごす
- 逃げるなら、できるだけ相手の出す音に紛れて逃げる(つまり、人間が歩いているときだけ歩く形で逃げる。「だるまさんが転んだ」的な?)
- 遠くにいるうちに敵に気が付けば、ダッシュせず、静かに逃げる
という方法で敵から身を守っているのだと思います。上の方で書いた「警戒心を与えない歩き方」は、ここでいう1を誘うやり方ですね。シカとしては「う〜ん、なにかがいるっぽいけど、向こうものんびりしているし……ま、様子を見ておこう」とでも思うのでしょうか?
実は頻繁に立ち止まる理由はシカに警戒心を与えないだけではなく、2のパターンを防ぐ目的もあると思っています。シカはこちらの足音に乗じて逃げたいのに、相手が頻繁に立ち止まるので、逃げる隙がないというわけです。
となるとシカとしては「逃げたい! けど逃げるタイミングがない! どうしよう!」とドキドキしているうちに人間が視界に入り、我慢できずにダッシュするというわけ。
まぁ、これは完全に想像で、シカに聞いたわけではないので分かりませんが、数歩おきに立ち止まるようにして歩いていると、たとえ1歩1歩の足音が大きくなってしまっても、けっこう近くまで寄れる印象です。何が言いたいかというと、「とにかく頻繁に立ち止まるのは大事」ということ。
まぁ、全部、自分なりの考察です。勝手にシカの考えを想像して書いていますが、まるっきり違うかもしれません。猟の最中はこうやって鹿のことを考え続けて、自分の行動に反映させていますが、正しいかどうかなんて分かるわけもなく……。
それに「じゃぁ、お前はもっとシカが獲れるはずだろ」といわれても困っちゃいます。なにしろ「遭遇すれば獲れる」ものでもないので……。鉄砲の腕も当然ですが、やっぱり銃を準備している途中で逃げられたり、遠すぎて撃てなかったり、数秒は棒立ちしていたけど、やっぱり気付かれて逃げられたり……。獲れない理由が山ほどあるんです……泣
来期もがんばりますよ。
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