軽量装備を目指す! 解体でビクトリノックス・ファーマーが使えるか?
単独猟に出れば出るほど、装備が軽ければ軽いほどいいな、と思うようになりました。
参考:ザックなしで単独忍び猟に出てみて思った良いこと悪いこと
もちろん大事なものは削っちゃいけないので、軽量化というのは結構むずかしい課題なんですね。経験がものをいいます。やっぱり技術がある人は道具を削りやすいんでしょう。削っても、ちゃんと技術でカバーできるわけです。
わたしはまだまだ未熟ですが、少しずつ、軽量化を目指して模索を始めています。
今日の課題は「解体ナイフにビクトリノックスのファーマー」についてです。
なんでどうしてビクトリノックス?
ビクトリノックスを知らない人はいないでしょう。定番はこんなやつですね。
いわゆるマルチツールとか十徳ナイフとかスイスアーミーナイフとか、そんな呼び名が付いています。
正直、狩猟の解体道具としてこういうマルチツールを勧めている人は多くないです。その理由は明らか。マルチツールはいろいろできる分、1つ1つの機能は専門品には勝てない、ということですね。ナイフはシースナイフに勝てないし、のこぎりはちゃんとしたのこぎりに勝てない。
じゃ、なぜこれを持って行くことにしたのか? まず、そこからお話したいと思います。
また、実際に猟に持ち出していますので、実際に持っていった感想もそのあとで書いてみます。
なぜビクトリノックス?
獲物の解体は基本的にこのナイフ1本で処理しています。
解体ではまず腹を開け、胸骨を割ります。ナイフを胸骨に当てて、ガンガン叩けば、ちゃんと胸骨は割れます。わたしのナイフで試した限りでは刃が欠けることもないし、決定的な切れ味の低下もありませんでした。
が、そもそも切れ味に納得していませんでした。よりスムーズに、より快適に、よりキレイに快適する上で、もう少し鋭く研ぎたいと思っていました。誤解がないように言っておくと、この切れ味の話題はナイフの問題ではありません。研ぎ手の問題です。ユーザーの判断ですね。
鋭くするのは簡単です。しかし鋭く刃付けすれば、刃持ちが悪くなります。胸骨をがんがんやれば欠けたり鈍ったりすることもあるでしょう。だから、あんまり鋭くするのは控えていたというわけです。
そこで「胸骨をのこぎりで開けば、刃にかける負担が減るから、その分だけ刃を鋭くしても大丈夫じゃない?」と考えました。
また別の話題として、骨盤を開きたいという気持ちもありました。これまでは骨盤を開かず、骨盤の中から腸や肛門を引き抜いていました。しかし、腸・肛門の処理をキレイにやりたいという気持ちがあり、そのために骨盤を開くのがいい気がして……。で、これはのこぎりが必要。もし、胸骨を開くのにのこぎりを持っていくなら、骨盤も開ける。一石二鳥。
さらに……別の話として、肛門周りを開く作業があります。まさに肛門の周りに切れ目を入れて、肛門ごと腸を取り出す処理です。
糞や尿にナイフが当たるため、あまり衛生的な作業ではありません。予備のナイフを携行して、そいつで肛門の処理をして、肉の解体はメインのナイフでやるようにすれば、より衛生的です。
という3つの話が自然とマルチツールに繋がりました。
わたしがハイキング・トレッキング目的で持っていたビクトリノックスはこれです。
この商品の細かいレビューは他のサイトに譲りますが、わたしはとっても気に入っています。わたしが気に入っている理由を挙げると——
「他のビクトリノックスに比べてナイフが少し厚くて丈夫。ついている機能が過剰じゃない。のこぎりが嬉しい」
というあたりでしょうか。わたしは性格的にいらない機能の付いているマルチツールが嫌いです。このファーマーでさえ、缶切りなどいらないので、他の機能に変えるか、いっそ取り外してしまいたいとさえ思います。
まぁ、その話はおいておきますね。
手に持ってみるとこんなサイズ感です。
開くとかんな感じ。ナイフとのこぎりの質がいいんですよ。もちろん、このサイズですから何でもできるものではないですが、サイズの割にいいです。
このナイフの形、細長く、真ン中あたりに切っ先が来る形が、肛門の処理に向いている気がします。ベテランの人はどう考えるでしょうか? 肛門周りは狭いので、その狭いエリアをピンポイントで切り広げるには、細長い、先の尖ったナイフが適していると考えています。たまたまですが、このナイフは向いている気がしますよ。
強いて言えば、ちょっと短いでしょうかね? その点は気になります。
のこぎりは今まで木しか切ったことがありませんでした。指1〜2本分程度の枝を切るのにはバッチリ向いています。サイズの割にいい具合です。
栓抜きですね。
「山で栓抜きなんて使わねーだろ?」
と思うでしょうね。はい、使いません。が、先端がマイナスドライバーとして使えます。なにかをこじるのにも使える。今どき手元に何らかの機械があると思うので、それを直すのに使うことは多いです。
とまぁ、こういう考えでビクトリノックスのファーマーを猟の装備に加えました。
実際に持ちだした感想を続けます。
猟でビクトリノックスを使ってみたら?
<解体以外>
まず、解体ではないのですが、意外にすぐにビクトリノックスを使うタイミングがやってきました。
銃のお手入れです。
結果的には大したことがなかったのですが、薬室に砂が入ってしまい、それが噛んでしまったんですね。まぁ、症状はたいしたことではありませんでしたが、とにかくそれを改善するために、どうしても銃を分解する必要がありました。
もしドライバーを持っていなかったら、theエンド。試合終了です。
でも、ビクトリノックスを持っていたので、マイナスドライバーで分解……。掃除して、無事使えるようになりました。もちろん事前にビクトリノックス1つで銃を分解できることを知っていました。単独で山に行くなら、鉄砲のメンテ道具を持っていくべきだと思いますよ。
<解体で>
さて、ビクトリノックスを持ち出すようになってから、初めてのイノシシが獲れました。
そこで実際に解体に使ってみた感想を……
1.肛門処理用のナイフとして
これはいけますね。メインのナイフよりむしろやりやすかったです。
また、メインのナイフでやるときは、「極力糞に当たらないように」ってな具合に恐る恐る使っていましたが、肛門処理用として割り切っているナイフなので思い切って使えました。
2.胸骨を開く
胸骨を開く処理はすごくスムーズに行きました。ナイフよりも早くできるってわけでもないですが、労力的には楽かもしれませんね。少なくともナイフにかける負担が少ないのは精神的にも楽。その分、ナイフを鋭く研いできたので、その分解体全体がスムーズ。
だから、胸骨を開くことだけじゃなくて、これにより解体全体がスムーズになったと理解しています。
ただし、でかい弱点も1つ。めちゃくちゃ滑ります。いいですか? めちゃくちゃ滑ります。のこぎりで切るという作業は力がいります。力を入れていて、ズルッと滑れば手を切るかもしれません。これは工夫がいりますね。
1つ考えられるのはランヤードを使う事ですね。短いランヤードを付けておいて、のこぎりを使うときに指を1〜2本入れておけば、滑り止めになります。
なんにせよ、これは大きな弱点です。Twitterでこういうモデルを買っている人がいました。
こちらは形がよく、より滑りにくい形状です。ハンドルも(写真で見た感じでは)滑りにくそうな素材に見えますね。かなり気になります。
でも、なんてコルク抜きが付いているんだろう?
3.骨盤
これはダメでした。まったく切れなかった。骨盤が硬くて硬くて、ぜんっぜん切れない。
イノシシだからかもしれません。シカなら切れるのかもしれません。あるいは、刃を入れるところが間違えているのかもしれません。日没が迫っている中での解体だったので、あまりゆっくり研究している時間がありませんでした。
この日は骨盤を開くのは諦めて、今まで通り、骨盤の中から腸を抜きました。
<お手入れ>
というわけで、解体は概ねうまくいきましたが、帰宅後のお手入れはどうでしょうか?
まず、お伝えすべきなのは「現場で掃除するのは難しい」ということです。
まぁ、まだ外装は拭けば良いでしょうけれど、こんな状態です。
一方、中はこんな様子です。
現地でウェットティッシュがあってもキレイにはできません。これは受け入れるしかないですね。
現地で掃除するのは難しいですが、自宅では簡単です。外装はたわしで擦ればあっという間。中は強い水流で流せば1発です。とはいえ、除菌という意味では不十分。わたしは強い水流で掃除した後、食器洗い用洗剤でできるだけ中まで荒い、最後に洗剤を溶かした水に浸けておきました。小さなコップに入れておけばいいので簡単です。
今後も携行するか?
はい、課題はありますが、まだ携行します。文中で紹介したハンティングXTというモデルは気になっています。もしかしたら来期は考えるかもしれませんね。でも、マルチツールを1つ荷物に入れておくと、何かと便利です。
大きなのこぎりを持ち出さなくていいし、マルチツールについているナイフは肛門だけではなく、メインナイフの予備としても使えます。万が一メインナイフをなくしたとき、壊れたとき、少なくともこのナイフで解体はできる(不便だけど)。
また鉄砲のメンテナンス道具も兼ねているので、もしこれを持ち出さないことにしたら、その分ドライバーを1つ追加しなくてはいけません。それならこのビクトリノックスを携帯し、解体にも活用する方が合理的だと感じています。
でも、本当に課題はあるので、その点は今後も考えたいと思います。
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