単独猟日記17:初雪の中、イノシシを求めて山を歩く
前回の忍び猟日記に書いたとおり(参考:単独猟日記16:小さなメスジカを見送って、大きなオスジカを獲る )、残りの猟期は少しイノシシ重視で取り組んでみたいと思っています。
もうシカは獲らないという意味ではないのですが、なにしろ自分が通う山のどこにイノシシがいるのかを少し研究しないことには、「イノシシ重視」にする方法さえ浮かんできません。それじゃ、シカがいるところに行って、シカを獲るっていう、これまで通りの取り組みになってしまうし、あえてシカのいないルートを歩いたりすれば、それはもはや闇雲。何も獲れないのは目に見えています。
「イノシシってこういうところにいるよね」という実感を持っていれば、少なくともそういう所を中心に歩くことで、シシとの出会いを増やせるかもしれません。
今日の猟はそういう「イノシシがいそうな所」を探すのが最大の目的でした。
前々日が雪。これがかなり助けになりました。
待ちに待った雪の猟
初猟期を迎えるまでのこと、YouTubeなどでいろんな人の猟の様子を見てはワクワクしていました。
そういったYouTuberの人は、たまたま雪国の人が多く、みなさん雪の中を歩いて獲物を追っていたものです。それを見てワクワクを膨らませていたわたしは、心のどこかで「雪の中で猟がしたい」という気持ちになっていました。
ところが、わたしの住む地域は雪のほぼ降りません。せいぜい年に1〜3度くらい。それも数日で溶けてしまい、日陰の雪だけがいつまでもしつこく残ります。だから、新雪に残る動物の足跡なんて期待できないのです。
しかし——。
雪が降りました。今シーズン初雪です。大雪で長靴がずっぽりと雪に埋まっちゃいそうな程の深さ。こりゃ猟に出ないと、とちょっと忙しい合間を縫って翌々日になってしまいましたが、出猟してきました。
雪山——というほどじゃないけれど
いつもの猟場が雪のおかげで少し違って見えます。
なんて言うと、雪国の人は「そんなへばり付いたような雪は雪のうちに入らん」と思うかもしれませんね。でも、いつも土と木しかない山に、こうして白がたっぷり塗られているのは、なかなか感慨深い光景なのです。
また、所によってはそれなりに深いままの雪もあり、はっきりと動物の足跡が見て取れます。
イノシシ、いるんじゃん!
じつはわたしが通っている山はシカばっかり、、だと思っていました。なにしろシカは多く。ちゃんとシカの居着く場所さえ分かっていれば、ほぼ確実に見つけることができます。たくさんの群れが住んでいて、本当に凄い数のシカがいると思っています。
一方イノシシはあまりいないと思っていました。なにしろここでイノシシを見たことは1度しかなかったからです。たまに糞はあるので少しはいると思っていますが、あまり数が多くないのかな、という印象でした。また足跡に関しては、地面が固く、わたしが見て、シカとハッキリ区別できるほどのイノシシの足跡が見つからないのです。
ところが、先日急に猪が獲れました。
偶然見つけたわけですが、そんなに少なかったらそもそも出会わないはず。実はわたしが知らないだけで、けっこうなイノシシがいるのではないか? と思うようになりました。
そんなときにこの雪です。チャンス! だって、足跡がハッキリ見えるはずだから……。
で、山に入るとさっそくこんな足跡が! イノシシです。
こういう足跡がけっして少なくありません。つまりわたしが気付いていないだけでちゃんとイノシシはいるんですね。これだけでも大きな収穫です。
シカ、シカ、シカ
この日、イノシシの足跡を追いつつ山を歩いていました。途中でシシの足跡を見失い、事前に目を付けておいたイノシシがいそうな藪に向かっていました。すると……シカです。
この印を付けた1頭が立っていて、残りの群れが寝ています。実はこの赤丸の中に2頭いるんです。さらに写真では見えませんが、全部で4頭。まったくこちらに気付いておらず、警戒心ゼロ。今日はシカは撃たない、と決めていたのですが、鹿の角と身体がとても大きく、猟欲がふつふつと湧いてきます。鉄砲に弾を込め、狙いを定めてみます。ゆっくり狙えるので、丁寧に膝撃ちの姿勢を取り、スコープを覗き、1番大きなオスジカの首にレティクルを合わせます。スコープの揺れも最小限。当たりそう。
——とそこまでやってから、脱包。
撃つのをやめました。正直に言えば、喉から手が出るほど獲りたかったです。でも、今日は違う。イノシシを獲りたい……少なくとも居場所を突き止めたいと思ってきているのだから、シカに時間を取られるわけにはいきません。
泣く泣く写真を撮りつつ、その場を去ります。ゆっくり歩いていると、そのうち向こうも気付いて静かに逃げていきました。とても大きな角のシカがこちらを一直線に見たときの顔が忘れられません。
その後も、余裕で撃てるシカの群れに2度も遭遇します。なぜかみんな無警戒ですね。雪のせいでしょうか? あまりに無警戒なので動画を撮ってみました。iPhoneで撮っているので、かなりシカが小さく見えますが、実際はぜんぜん遠くなかったです。こいつらも撮影前に一応鉄砲は構えて「うん、当たるな」と確認だけはしました。自己満足です。実際に撃って当たるかは、やってみないと分からないですもんね。
はいまたシカの群れ。3群れ目。ずーっと棒立ち。止まってると見えにくいので、動いてるとこだけどうぞ pic.twitter.com/vB4v1fsY1A
— やまくじ (@yamakuji_jp) January 24, 2018
そうやって撃てるシカを3群れも見逃すと、悟りの境地に辿り着きます。
「今日はイノシシを探すことだけが目的だ!」
という気持ちが湧いてきました
シシの足跡が……
さて、そうやって3群れのシカを見送って、イノシシに集中します。
するとシシの足跡を1つ見つけました。斜面を一直線に下っています。そいつを追跡すると、そのうち辿り着いたのは密な笹藪です。
どうやらこの笹藪の中に入ってる。この笹藪は密な上にかなり広いです。どこか入りやすい場所はないか、と周囲を歩いてみますが、急斜面で、足場も悪く、なかなか一周周るのもひと苦労。それでも裏側に回ると、こんなシシ道ができていました。
これがシシの寝屋というやつでしょうか。少なくともシシの居場所として定着しているのは間違いなさそうです。
問題は「今シシがいるかどうか?」です。
入っていく足跡はたしかにあります。出ていく足跡も、あります。っていうか沢山あります。雪が降ってからも何度も出入りしているようです。それだけでも現在使われている場所だと言うことが分かります。
突入!
藪が密で中はまったく見えません。
撃てなくてもいいから、シシがいるかどうかだけでも見たい。もし見ることができたら、自分のアプローチが間違えていないことが分かる……。
ということで、勇気を振り絞って、シシ道に頭を突っ込んで、四つん這いで入ることに。もちろん鉄砲は抱えて、前からシシが来たときに撃てるようにします。
はっきり言って怖いです。
あまり奥に入るつもりはありませんが、それでも怖い……。
——と、頭を突っ込んで、少し奥を見たときのことです。
「ブヒ!」
と鳴いて逃げていきました。藪からは出てませんが、奥の方に引っ込んでしまいました。お尻だけがギリギリ見えたものの、とてもじゃないけど撃てない。藪から出て、反対に回っても覗き込んでみるが、見当たらない。どうやら藪の中でジッとしているようです。なんとか、探し出そうと周囲を歩き回るものの、まったく分かりません。見えないし、音もしません。
困った……。
もう1度頭を突っ込んでみますが、怖い。とてもじゃないけど奥まで入るのは怖い。
しばらく外から見たあと、断念しました。
どうすりゃいいか?
さて、この日の猟を終えて、単独での猪の獲り方について考えていました。
「単独忍び猟でイノシシを獲るのは難しい。無理じゃない?」
という意見をよく見かけます。今日、こうしてイノシシ探しに取り組んでみて、わたしもそう思いました。あんな密な藪に入られたら、手が出ない。じゃ、どうすればいいか? 諦めるか?
——で、自分なりに考えました。
今日行ったような濃い藪はひとりじゃどうアプローチしていいか分からない……。でも、この前わたしが獲ったイノシシはもっともっと “見える場所” にいました。ちょっとした藪にいたわけですが、斜面の上から見れば丸見えな場所です。
つまり、イノシシだって濃い藪で寝るヤツもいれば、やや薄い藪で寝るヤツもいる。ひとりで狙うなら、薄い藪にいるのを探した方が良さそう。
ということで、わたしの計画を超簡単に書くと——
- やや中が見えるような薄い藪の寝屋を探す
- そういう場所を見回りつつシカとイノシシを獲るつもりで猟をする
という感じ。結局、ひとりで狙える寝屋を知っていないとダメですね。今後、そういう場所を探さないといけないなって。で、そういう場所を回りつつ、シカも探していれば、長い目で見れば、シカを獲りつつ、時々はイノシシも獲れるかな、って希望的観測で思っています。
まぁ、そんなに簡単にいかないのは重々承知です。あくまで初心者が立てた仮説です。こういう仮説を立てて、実際に取り組んでみて、実際どうなるか挑戦してみたいと思います。
「単独忍び猟でイノシシを獲る方法」ってあまり聞かないので、やってる人が少ないのかなって思います。だからこそ考えるのがおもしろいですね。
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