単独猟日記15:山のクジラを獲りました
やりました! この日のために狩猟を始めたと言っても過言ではない、と思うのです。
もちろんこれで「目標達成、満足満足」というわけではありません。課題はたくさんあり、これからもがんばっていくわけですが、やっぱり目標にしていた獲物を獲った喜びは大きいものです。
というわけで、初めてのイノシシを獲りました。イノシシを獲った、ちょっと不思議な経緯をおはなししたいと思います。わたしにとっては本当にラッキーな出来事でした。
※ 獲ったイノシシの写真含め、人によってはショッキングに感じる写真もあります。そういったものを見たくない方はページを閉じるようお願いします。そういった写真は面白半分にご紹介しているものではなく、誰かの役に立てば、と思って掲載しています。ご理解いただきますようお願いします。
シカのチャンスを何度か逃した
この日、シカと何度か遭遇し、大チャンスもあったのですが、未熟さゆえに逃し、意気消沈。それも決定的チャンスが1度、中くらいのチャンスが2度あり、多分ちょっとうまい人ならすべて獲れたであろうと思うくらいの状況で、すべて逃したことで戦意喪失。
最近、狩猟の途中で長い休憩をとることはなく、時々ちょっと休んでおにぎり1つ食べ、またすぐに行動を再開するというスタイルで取り組んでいます。
しかし、ちょっと心がやさぐれてきたので、しっかり休むことに……。
非常食として持ってきている羊羹をちびちび食べつつ、景色を眺め、心を落ち着かせることにしました。
ゆるやかに帰路
時間は13:30。
そろそろ帰路につかないといけません。帰路とは言え、ちゃんとシカがいる場所をあるきますし、ゆっくり丁寧に忍びます。少し休んだおかげで集中力も回復。むしろ「こういう日こそ、獲ってやる」と昂ぶる気持ちさえありました。
そうして歩き始めて30〜40分ほどが過ぎたときのことです。
まばらに杉が生えている長い南向きの斜面で、高低差が100mほどあります。その斜面の上の方(でも尾根上ではなく、斜面上)をトラバースします。この歩き方がわたしの中では鹿に出会いやすいですね。
何歩か歩いて、立ち止まって周りを観察するのを繰り返します。そのときです——。
「なんか寝てる!」
シカがごろんと横になっています。これまでシカが杉林で寝ているのを見たことは何度もありますが、いつも顔だけは上げていて、犬や猫が寝るときのように完全に頭を下げているのを見たことがありません。でも、こいつは完全に伏せて丸くなって寝ているようです。
「撃つか?」
ひとまず銃の準備をして、膝撃ちの姿勢をとります。しかし撃てない。なぜなら、顔が見えないのです。まずカモシカの可能性がある。じつはこのシカ(らしきもの)にはちょうどまだらに陽がさしていて、そのせいでいまいちハッキリ見えないのです。双眼鏡で見ても生き物であることは質感から確実ですが、顔が見えず、輪郭が分からない。カモシカだったら大変なことになりますので、発砲準備をしたまま待つことにしました。
顔を上げれば分かるので、その瞬間を待ちます。いくら何でも近くに人間がいるのに長く呑気に寝ていることもないでしょう。
起きない……
ところが、こいつまったく起きないんです。
10分ほど待っても起きないので、ちょっと声を出して起こしてみます。
「tututututu」と声をだしてみたり、舌打ちしてみたりしますが無反応。あんまり大声を出すと、驚いていきなり走ってしまうかもしれないので、できれば「ん?何の音?」と疑問をもつくらいの微妙な声量で起こし続けます。
でも起きない。
——もしかして、死んでる?
シカが死んでいたっておかしくありません。誰かが半矢にしたシカがここに来て死んだか、自然死したか。正直、死んでいる可能性が高い気がして、もう死因を確認するために見にいこうかと思い始めていましたが、もし見にいっている最中に起き上がって逃げられたら後悔します。
というわけで小石を投げて起こすことに。遠いので、ぴったり当てられませんが、近くに落ちたりしますが、まだ動かない。4度ほど小石を投げたとき、むくっと突然 “ソレ” が顔を起こしました。
その顔を見るまでもなく、顔を上げる仕草ではっきり分かりました。
イノシシです。
なんというか、シカとイノシシって首の形が違うので動かし方も違いますね。
即座にスコープを覗き、改めてイノシシの顔を確認。発砲。
イノシシは起き上がることなく、その場で短い間だけ宙を蹴ったあと、息絶えました。まわりで逃げる音がしたので、死角には他のイノシシがいたようです。
解体ができるところ……
この場所はそれなりの急斜面。上の写真だと伝わらないかもしれませんが、足場が悪く、解体がしにくいです。少し下を見ると、やや平らな場所があったので、そこまで落とすためにイノシシを軽く動かし始めたところ、なんとイノシシが重かったことで、勢いが止まらず、なんと100mの斜面を下まで転がり落ちてしまいました。
今でもちょっと悔やんでます。
家で肉の処理をしていたとき、全体的にちょっと血が入っている気がするんですよね。この落下による内出血? みたいなことも起因しているのではないか、と疑っています。
それになんというか、死体になってもあんまり粗末に扱いたくない気持ちもありまして……派手に斜面を転げ落ちる様子を見ながら心が痛んだのも事実です。必要な移動はしなくちゃいけないし、多少手荒なこともしないといけない場面はありますが、あまりにも派手に転がっていったので……。
しかし、そのおかげで、解体後の下山は早かったですね。普通ならジグザグと長い距離をかけて歩くコースを、最短距離で降りたので……。
また、斜面の下は人が入ることがない暗い谷間になっているので、安心して解体ができます。
イノシシの解体はシカとは違う……
大きなイノシシです。イノシシは自宅の周辺でよく見かけるので、見慣れていますが、そうやって見てきた中で1番とは言わないものの、大きい部類だとは思います。
「チンタラやってると日が暮れてしまう。チャチャッとやって下山しないと……。それに肉が多いから二往復しないといけないかもしれないし……」
シカで解体も慣れてきたので、少しは早く終わるかと思ってましたが、大苦戦。シカとは本当にぜんぜん違います。脂の量も、皮の固さも、ぜんぜん違う。
1時間くらいで終わるかと思っていたら2時間近くかかってしまいました。
そして積み込んだ結果がコレ……
わたし、最近はザックを背負わずに山に入っています。上の写真にある青いリュックサックは折りたたむと手のひらサイズになるアタックザックと言われるものです。並のシカであれば、これで概ね収まります。はみ出したりもしますが、紐で結わいたり、余った分を外に括り付けてやれば大丈夫。
しかし、見てください。アタックザックの中身は肉だけです。そして、もう1つの土嚢袋。これもパンパンの肉です。予備で持ってきた土嚢袋が役に立ちました。
しかし紐で括ってみたものの、うまく背負えないし、実はこのとき時間は16:25。日の入りの時間は16:50。つまり、あと25分で日が暮れます。
谷間なのでどんどん暗くなっていきます。背負い方を悪戦苦闘している場合じゃありません。
頭にヘッデンを付けて、いつ暗くなっても大丈夫なように準備。そして下山します。実は先ほどのイノシシの転落で、概ね “下山” は済んでいて、あとはこの谷間を歩いて林道まで行けばOK。とはいえ、人の入らない谷間です。獣道もなく、大雨時に沢になるようで、結局は岩がゴロゴロ転がる場所なんですね。歩きにくいことこの上なし。肉は手で抱えているし、重くてバランスがとれないし、大した距離じゃないのにチンタラチンタラ歩いて林道まで出ました。
林道から車まではまだ距離がありますが、ひとまず肉は林道沿いに隠します。鉄砲と刃物だけを持って車に戻り、車で肉を回収します。
シカだったら余裕で収納できるクーラーボックスも、フタが閉まらないほどの肉の量でした。仕方なくフタはせず、ビニール袋などで上を覆い、肉を冷やしつつ帰宅。
すごい肉の量
ちょっと血が入ってしまっている気がして、お見せするのが恥ずかしいのですが、こちらがイノシシの後ろ足。脂を落として持って帰るべきなのか、残しておいた方がいいのかも分からず、テキトーな感じになっています。
イノシシの解体は勉強不足です。恥ずかしい。
まぁ、血が入っていようと何だろうとありがたく全部食べますけどね。
で、ざっくりばらしたのがこちら。こちで後ろ足1本分。
とにかくすごい量の肉になりました。
じつはこのイノシシで冷凍庫がほぼほぼいっぱいに。まだ工夫すれば詰めることもできますので、そうするつもりですが、いやー、もっと小さい冷凍庫を買うことも検討していましたが、「買うならでかいのを買え」という持論に従って良かった。
筋肉痛で思う肉の持ち帰り方
翌日は全身筋肉痛です。普段の猟ではまったく筋肉痛になんてなりませんので、それほどまでに下山の肉の重さがすごかったということです。
今後も猪が捕れる可能性があるわけですし、今回のように下山ルートが短いとは限りません。この量の肉を持ち帰る方法はよく考えないといけません。もしこれがもっと長い距離だったら、本当に無理だったと思います。もちろん何往復してでも持ち帰りますが、いらぬ苦労はしなくていいですもんね。肉の持ち帰り方法は最重要課題です。
道具のお手入れ
さて、猟を終えたら道具をお手入れしないといけませんね。とくに獲物が獲れたときはやることが多いです。
まずはこちら。血だらけのブーツです。シカは慣れてきたからか、それほど血がつかなくなりましたが、猪は慣れない中で悪戦苦闘していたので、血だらけです。
レザーってのはけっこう血が落ちるんですよね。スポンジで優しく洗って、オイルを塗ってあげればこの通り。

お次はナイフ類。洗ったり研ぎ直したりするわけですが、今回ご紹介するのは今回初登場のこちら。ビクトリノックスのファーマーです。のこぎりが付いているので、胸骨と骨盤を開くのに使うつもりで持参していました。細かいレビューは別記事にまとめたいと思いますが、ひと言で言えば「滑るし、骨盤が切れなかった」ということです。シカなら違うかもしれないし、あるいは骨盤は切る場所を間違えている可能性もあります。急いでいる中でパッと試して、ダメだったのですぐに諦めちゃいました。今後の課題ですね。
さて、マルチツールの大弱点はこの汚れです。
表面はまだしも、この隙間……。
さぞかし洗うのに苦労するだろうと思っていましたが、コレが思いのほか、あっという間にキレイになりました。強い水流でザーッと洗えば血肉はとれちゃいますし、そのあとで洗剤で洗って、アルコール除菌スプレーでキレイにして完了。
骨盤は切れなかったと書きましたが、胸骨はバッチリいけました。今まではナイフでやっていました。これで刃が欠けるということはないものの、刃を鋭くし過ぎると欠ける可能性があります。のこぎりを使えばその分だけ刃に負担をかけないで済むのでありだと思いますよ。
大満足
ブログの名前「山のクジラを獲りたくて」の通り、イノシシを獲りたいと思ったのが「猟を始めるきっかけ」でした。
その後、いろいろ勉強し、経験し、イノシシだけじゃなくてシカも同じくらい高いモチベーションで対象としてみているつもりですが、やっぱり最初のきっかけとなったイノシシは感慨深いものがあります。
また「単独でイノシシは無理だよ」と言われることが多く、わたしも本当にそう思っているので、ラッキーだったにせよ、イノシシをとれたことは大きな成果です。
また、今回の経緯を見ればただのラッキーと思われるかもしれませんが、自分としては小さな成長を感じています。というのは、前だったら多分あのイノシシに気が付かなかったと思うんです。杉林の影で寝ているイノシシ(シカだと思ってたけど……)は本当に周辺に溶け込んでいて、いい加減に見ていては絶対に気が付きません。それに気付くことができたことは、この最初の猟期で得た1番のスキルな気がしています。
ともあれ、1頭で満足しているわけではありません。今後も真摯に取り組んでいきますよ!
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