単独猟日記7:痛恨の失敗→獲れるシカを獲らなかったこと
この日、タイトルの通り「獲れるシカを逃した」わけです。このときの落胆と言ったらもう……。
そのシカは歩き始めて1時間でやってきた

この日、発泡可能時間である6時半頃から山に入りました。
いつもの山ではありますが、ちょっと気分転換に入山ポイントを変えてみました。延々と続く杉林。オスジカでも寝てないかな〜と期待を込めて慎重に歩きます。
杉林にも色々ありますが、この場所は足下には大量の杉の枝が落ちていて、それらを踏むたびにポキポキッと鳴る、忍び猟には向かない場所。
「これじゃ、忍びも糞もないわなァ」
気分的に諦めムードではありましたが、これまでもぜんぜん忍んでいないときに、不意に鹿に遭遇することもあったので、とにかくSLLS(Stop, Look, Listen, Smell)を繰り返していました。
そして1時間が過ぎた頃。
数歩歩いて立ち止まった瞬間、尾根の下からガサガサと派手な音。この尾根は谷に向かって急な崖に近い斜面になっています。そして音は谷から聞こえてくる。谷と言ってもまったく深くなくせいぜい数メートル。
その音のする辺りまで10mもありません。しかし死角になっていてまったく見えない。もし上から見下ろすことができればまちがいなく撃てる場所。あと4〜5歩も進めば見えるだろうとは思いつつも、足下は杉の枝の絨毯。とてもじゃないけど、枝を折らずに近寄るのは無理。
「相手が動いた瞬間にこちらも動けばバレないかもしれない……だけどバレたら1発で逃げられる……どうする……」
音の主はゆっくりした足取りですが、ジワジワと近づいているようにも聞こえます。あるいはその場を動いていないようにも思えます。
猪か?
わたしは音の具合から猪だろうと想像しました。猪が地面を掘り返して餌を探しているときの音に似ていたからです。
自宅の周りに大量に猪が出没し、そうやって地面を掘り返す猪も見てきたから、けっこう強く確信していました。
「もしかしたらその場を動かず、ひたすら餌探しをしているのかもしれない……でもゆっくりとだけど近づいている気もする……」
姿を見られてバーッと逃げられるよりは、じっと待つことにしました。
待つこと20分強
この20分は恐ろしく長く感じました。
とにかく動けないけれど、かといってただ待っているわけにもいかない。もし猪(だと思っている音の主)がこちらに上がってきたら、すぐに撃たなくてはいけません。となれば鉄砲の用意は当然のこと、撃つ姿勢も作っておく必要があります。
足をゆっくりゆっくり、それこそ2〜3分かけて動かします。動かすといっても、向きを変える程度。絶対に音は鳴らしちゃならない、と気が張り詰めていましたね。
わたしなりに猪が上がってくるルートを想像し、その辺りに据銃できる姿勢を作りました。
「出てきた瞬間撃つぞ……出てきた瞬間に撃つぞ……」
ジワジワと近づいていたガサガサ音。そいつがすぐそこまでやってきました。そのあたりに構える準備だけをします(獲物を見ていないのに狙いを定めるのは良くないかな、と思っているので、銃はあくまで地面を狙う形。もしかしたら人間かもしれない、という気持ちは忘れちゃいけない)。銃口を上げるだけで狙える姿勢です。
ガサッ!
まっ黒い動物が姿を現しましたが、わたしが想定した場所と2mほどズレていました。そのうえ、ゆっくり「のそーっと」現れるかと思っていたら、出てくるときだけ勢いよく、バーッと走るように飛び出してきたものだから、想定よりも左に数メートルずれた場所に止まりました。
「あれ? イノシシじゃない?」
頭がフリーズしました。本当にイノシシだと思い込んでいたし、それにしてもイノシシのように黒い気がする(今思えば暗いところだったからそう見えたのかもしれない)。
「なんだこれ!? あ!? シカだ!」
と思ったときにはシカもこちらを見ています。わたしはそのシカの数メートル右を狙った姿勢で硬直していました。
「素早く撃つか、ゆっくり撃つか」問題
獲物を狙うとき、素早く構えて撃つべきか、ゆっくり構えて撃つべきか、という問題があります。
話によれば(当然のことですが)、ケースバイケースとのことです。素早く構えれば驚いて逃げてしまうシカも、ゆっくり構えれば「何だこいつ?」って感じで見ていてくれるときもあります。わたしも過去そういうことがありました。
一方、こっちが動かなくたって、一目散に逃げていくシカもいます。そういうシカの場合は一刻も早く構えて撃たなくてはいけません。
「どっちだ!?」
迷ってしまいました。鹿は頭を下げた姿勢で、上目遣いのままこちらを見ています。
わたしは動かない選択をしました。
一瞬でもシカが目を逸らしたら、その瞬間に撃つぞ、という気持ちです。そのまま数秒。長く感じましたが、もしかしたら1秒くらいのことかもしれません。
シカが飛び跳ねるように方向転換をして、来た方向へと駆けていきました。
追って撃つかどうか
過去に受けた助言の通り、逃げたシカも諦めずに追跡して撃てる体勢を取りました。
これまで何度もやってきたので、この日は冷静です。急いで見晴らしのいい場所に行き、委託できる木に左手を押し当てて、逃げたシカが姿を現すのを待ちます。わたしが予想したルートで逃げていれば、きっとここで姿を見せるはず、と待つこと十秒ほど。みごとに予想通りの場所に出てきました。
——が、立ち止まらない……。
ちょっと距離もあったし、難しい射撃になるのでこの日は撃つのはやめました。この判断は今振り返っても正しかった気がします。撃ってしまえば、周辺の獲物を散らすことにもなるし。当たらない or 半矢にする可能性が高いし。
判断即発射
この日の後悔は、鹿が姿を現した瞬間ですよ。
あまりにイノシシだと思い込んでいたものだから、とつぜんイノシシじゃないものが飛び出してきたときに判断が鈍りました。
それでもコンマ数秒でシカだと分かっていたんだから、その瞬間に待たずに撃つべきだった。銃口をちょっと動かせば良かったんだから……。
YouTubeを見ていると、犬を連れた猟で、藪の中からイノシシが全速力で飛び出してきて、一瞬の隙を突いて撃つような動画ってありますよね。あの判断力。あれが決定的に欠けてましたね。もう決定的に欠けてました。何を躊躇してたんだって感じ。
このあと、その場に座り込んでしまいましたよ。
イベントをひとつひとつクリアしてる気分
単独猟で、まだ獲物が獲れませんね。でも実のところ、まったくつまらないとは思わないですね。
いろんなイベントをひとつひとつクリアしている気分です。
ほら、ドラクエとかで(わたしはドラクエ5で記憶が停止していますが)、大ボスを倒すまでに小さなイベントを大量にこなしますよね。レベルを上げたり、武器を買ったり、敵につかまったり、誰かを助けたり、特殊なアイテムを探したり……ってな具合に。まさにそれをやっている気分なんです。
- 鉄砲を持ってシカを見る体験
- 棒立ちのシカを見つける体験
- シカが姿を現すのを待つ体験(今日の話)
- オスジカと出会う体験
- 待ち伏せ猟でシカに出会う体験
- 雨の中出猟する体験
ってな感じで、行くたんびに新しい体験をしていて、これがいつか「シカを獲る体験」に繋がるのだと信じています。そして、そこから先に「デカジカを獲る体験」とか「1日で2頭獲る体験」とか、「でかいのを獲るために小さいのをあえて見逃す体験」とか、上級者の体験が待っているというわけです。
まだ初心者だから今は基本的なイベントをクリアしているというわけです。
がんばりますよ。
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