生まれて初めての巻き狩り:初心者目線で流れや荷物をについてまとめます

最終更新日

先日、わたしがお世話になる猟隊長から「週末、出猟するけど見に来るか?」と声をかけていただきました。

まだ弾の許可証がないため、鉄砲を持っていくことはできませんが、見学&雑用という立場で行ってきました。

当日の流れや必要だと感じた荷物をまとめたいと思います。自分としては、今後巻き狩りに参加する上でめちゃくちゃ参考になった体験です。この冬から出猟する方々が知っておくと助かることもあるかもしれませんので、ぜひご一読ください。

巻狩、1日の流れ

8:00〜 猟場へ

朝、わたしは猟隊長の家の前で待ち合わせ(近所ですから)。他のメンバーは猟場で待ち合わせるそうです。

猟隊長の家に行くと、もうベストも長靴も着用済み。「あとは鉄砲を持てば出猟できる」という服装でした。一方わたしは「現地で着ればいいか」と猟友会ベスト・猟友会帽子・長靴など着用していません。もし猟場について「すぐ行動!」って言われたら、時間を取らせてしまうな〜とちょっと後悔。でも、猟友会ベストに対して悪い印象を持つ人(警察含む)もいるから、いまでもちょっと迷うところです。

とにかく猟隊長の車に付いていく形で、猟場に向かいます。

 

8:30〜 アシを読む

山中の林道にはすでにメンバーが到着しており、慌ただしくしています。どの山に獲物がいるかを調べているとのこと。別の林道を調べているメンバーもいるようです。

ここで無線機の周波数を教えてもらい、無線をON。すると、活発にやりとりが行われていました。

「こっちにシカのアシ(足跡のこと)があるけど小さいなぁ」
「○○から××山に向かうアシを見つけた。何個もあるし、でかいぞ」
「この林道を行ったり来たりしているアシがある。最終的にどっち側の斜面に行ってるかが追い切れない」

など、それぞれが調べたことを報告し合っています。猟隊長とわたしも車で林道を走り回りながら、アシを探します。

 

10:00〜 会議

この獲物探しが10時ごろまで続き、それが終わると集合地点に集まります。猟隊長がわたしのことを紹介してくれました。みんな優しくて若造のわたしに「よろしくね〜」と和やかにいってくれます。かといって、ベタベタと馴れ合うこともなく、サバサバした感じ。居心地が良かったです。

みんなが集まると猟隊長が中心となって情報を整理します。このやりとりはまるで会社の経営陣への報告会のような緊張感がありました。

猟隊長「佐藤さん、○○谷で見たってアシは本当に××山に向かってた? 途中で△△沢に降りてたら、話が変わってくるけど」
佐藤さん「××山に向かってたと思います」
猟隊長「『思ってる』ってどういうこと? ××山に向かうアシを確認したの?」
佐藤さん「いえ……途中から草がすごくてアシがハッキリしなくて……」
猟隊長「そうなの? ちゃんと確認しないと!」

ってな具合。けっこうな緊張感ですよ。かといって、みんな猟隊長に頭が上がらないわけではなく、「ぼくはぜったいこっちに向かったと思いますよ!」と強く主張する人もいて、怒鳴り合いとまではいかないものの、言葉を投げ合う議論の応酬が続きます。端から見たら近寄りたくない雰囲気でしょうね〜。

こんなやりとりがしばらく続き、巻き狩りをする場所が決まります。

 

10:30〜 タツを決める

場所が決まると次はタツ(射手)を決めます。

みんな過去の経験から「あそこの谷から逃げられることが多い!」「あの尾根から山の向こう逃げられたらおしまいだ」とタツの位置を決めていきます。

わたしは猟隊長の後ろで見学することに。

 

11:00〜 犬を放つ

それぞれがタツに入り、準備ができます。そして無線で「犬入れたよ」と報告。猟隊長さんの緊張感が高まるのを感じます。

犬を入れて10分。なにも変化はありませんでした。

「もしかして1時間くらい待つのかな?」なんて思った矢先。突然、ワンワンと本気で鳴く犬の声が。

わたしが立っていた場所から見て、小さな尾根を越えた向こう側にいるようです。動物なら越えるのに1分もかからないような小さな尾根。つまりこっちに来る可能性がある。

となりの射手が逃がせば地形的にこっちに来るのは必至。山中の空気が張り詰めた感じがしました。

すると尾根の向こうからタァーンと銃声。

沈黙。

たまらず誰かが無線で「獲ったか?」と確認。撃った佐藤さんは「獲った、と思う」と息を切らした声。撃った獲物が斜面の上に倒れているらしく、そこに向かっているらしい。

「ちゃんと止めろ」と猟隊長。

「はい」

少し間を置いて2度目の銃声。

「止まりました」

あとで聞いたところ、1発目の弾は腰に入り、倒れてはいたけど致命傷ではなかったようです。で、人間が近付いてくるから逃げようと起き上がったので、もう1度撃った(今度は頭)ようです。

 

あとの流れ

この巻き狩りを2度3度とやるときもあるそうですが、今日はこれで終わりとなりました。

この時点で全員が獲物の所に集まるかと思いましたが、そうではなくて、配置が近い人間だけが獲物の所に集まり枝肉に解体。残りのメンバーは解体所(として使っている場所)に集合して、解体や肉の分配の準備をします。

わたしは解体組に同行。いろいろ教わります。山の中ではずっと緊張感のあるやりとりばかりでしたが、もうみんな笑顔。解体所に行き、みんなで枝肉を分配します。うちの猟隊のやり方は、マタギ勘定と呼ばれる方法と同じっぽいですね。とにかく人数分に肉を当分して、ビニールに入れて見えなくした状態で、テキトーに分ける。だからエライ人が多く取るとか、新人は少ないということは起きません。犬を持っている人だけは犬用に多めに取ります。

余談ですが、今回の経験を通じて、犬の重要性を痛感。犬を入れて10分で大シカが獲れちゃいましたからね。犬ってすごいなと思いましたよ。と、同時に犬を飼っている人の苦労を思うと、犬持ちの人には多めに肉を分けたい気持ちさえ湧いてきます。なんなら犬も人数に勘定したいくらい。

見学のわたしも肉を均等に分けてもらいました。嬉しいですね〜。トレー2枚分のたっぷりお肉。自分で撃ったわけではないけれど、参加した(見学だけど)中で得た初めての肉。

帰宅後、肉パーティーをやったのは言うまでもありません。

 

荷物のこと

わたしの場合、事前に荷物のことを猟隊長に聞いたら「無線とお弁当と水」と言われていました。まぁ、見学だし、戦力外だからそれだけでいいよ、ということだと思います。

しかし自分なりに少しでも力になりたい、と他の荷物も持っていきましたし、それでも足りないと感じた荷物があるので、「この経験を踏まえて、わたしが次の巻き狩りに持っていくもの」をまとめてみたいと思います。

 

1.無線

これがないと話にならない。みんなの会話はほとんど無線で行われる。

2.弁当・水・行動食

まぁ、必要だよね。

3.ナイフ

撃った獲物の血抜きや解体で必須。今回参加した人のナイフを見ていると、大型の剣鉈を持っている人は半分くらい。あとは刃渡り15センチ以内くらいですね。

とにかく1本は持って行きましょう。解体の仕方が分からなくても、他の人のやり方を見ながら手伝えるかもしれません。

4.ゴミ袋(できれば厚手の)

山中で枝肉に分けるとき、分けた肉を入れる袋が必要です。わたしは用意していませんでしたが、他のメンバーが当たり前のように持っていました。ないと困るものなので、次からは絶対に持っていくことにします。細かい部位を入れるスーパーのビニール袋と、足を入れたりする、大きなゴミ袋があると良いですね。できれば厚手の袋が良いです。車の中で破けたら最悪だから。

5.薄いゴム手袋

解体のときにこういう使い捨てのゴム手袋があるといいですね。手も汚さないし、肉も汚さないし。

6.タオル

汚れてもいいタオル(でも清潔なもの)を持っているとなにかと便利。

解体をしているときに手が汚れるかもしれないし、鉄砲が汚れたら拭けるし。

7. モービル無線機

急に高価なものになりますが、やっぱりモービル無線機(車載用の無線機)はあったら便利だな、と痛感。

というのも実際に猟に入るまでは、車で走り回りつつ、無線でやりとりをしているので、社内での使用時間も結構長いのです。

先日車載無線について、『ハンディ無線機を車の中で使うために知っておくべきこと』という記事を書きましたが、この方法だとハンディのアンテナを付けたり外したりしなければならず、かなり手間です。というか、実質無理でした。

だって、林道を走りながらアシを探し、見つけたら降りて、ちょっとアシを追い、また車に戻って少し走り……という具合にストップ&ゴーを繰り返します。そのたびに無線機を出して、アンテナを外して、車載アンテナにつなぎ替えて、イヤホンを取って……、なんて面倒なことこの上なし。

すぐに買うかは別ですが、「確実にあったら便利」とは思いましたね。今回は車載アンテナを使わず、ハンディを胸ポケットに入れてずっと運用していました。

(まぁ、それでなんとかなったので、急いでモービル機を買う必要はないかもしれません)

8.GPS的なもの

GPS専用機でも、スマホのGPS機能を使ってもいいともいますが、とにかく地形図+現在地が分かり、かつ移動の軌跡を記録できるツールを持っていると便利です。

山歩きと違って、(わたしの行った場所では)迷子の危険はあまりありません。だからGPSはいらない、と思ってしまいそうですが、わたしは持って行きました。

なにに使うかというと、タツの記録や、移動の記録です。とくにタツの場所は仲間内で呼び名が決まっていて、入ったばかりの人間にはまったく分かりません。たとえば例を挙げると

  • 丸太の所
  • 7番(理由不明……)
  • 杉の所
  • たっちゃんの外したところ

などなど。そこで、新人としてはコツコツと場所を覚えていくことになります。わたしも今回猟隊長と同行して1ヶ所教えてもらいましたが、時間が経てば忘れてしまうかもしれません。そこでGPSで記録しちゃいましょう。自分が立った場所をメモしておけば、便利ですよ。

また「後日ひとりで巻き狩りした場所を散策したい」みたいな時にも、この記録が役に立つはず。

 

9.犬用の紐

犬用の紐も必須だと思います。

「え、ぼくは犬飼ってないし……」

という人も、2〜3本くらい(最悪でも1本)は犬用の紐を持って行った方がいいです。

なぜか? 巻狩で、犬が追っている獣がめでたく自分のところに来たとします。もちろん撃ちますね。みごと仕留めたあと、最初は犬も倒れたばかりの獣に興味津々で噛みついたり吠えたりしていますが、そのうち興味が薄れると、次の獣を探すためなのか、その場を去ってしまうことがあるようです。

そうすると「犬探し」という新しい仕事が生まれてしまうんですね〜。聞いたところでは、山を越えちゃって、探すのが1日がかりになることもあるとか……。

そうならないために、撃った人はその場で犬を捕まえて、木に繋いでおくといいようです。そのためにできれば犬の数だけ紐があると良いですね。

 

あーーー楽しかった

結局、なにが言いたいかと言いますと。

「めちゃくちゃ楽しかった」

のひと言に尽きます。

弾の許可も近々出るそうなので、次は実際に出猟できそうですね。そのときは少しでも戦力になりたいです。

と、同時に「単独猟もやっぱりやりたい」とも思いました。うちの地域の巻き狩りでは「山を歩く」という感覚はあまりないです。林道からちょっと入ったところで撃つって感じ。だから体力的にはすごく楽ですが、1日山の中で過ごすのが好きなわたしとしては、単独でじっくり山を歩く猟もやりたいわけです。

初年度は巻き狩りと単独をうまく両立させたいですね!


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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3件のフィードバック

  1. おめでとうございます。

    なのかな(^_^;)
    良かったですね♪
    やっぱり、やまくじさんの目線で書かれるお話って、引き込まれるなぁ(°∀°)

    なんと言っても、やまくじさんが楽しんで参加できたっていう悦びを感じます。

    ワタシは無線の存在を忘れてました(^_^;)
    講習会受けようかな~

    あ、救命関係も受けとかなきゃだ。

    あと6週間…切ったかな?
    楽しみですね
    (  ̄▽ ̄)

    • ありがとうございます! 実際のところ、ここで書いた100倍くらい楽しくて、興奮しました。他の先輩方の熱意もすごくて、現場にいるとそれこそ引き込まれます。ひと足早く経験できてよかったと思っています。