狩猟ナイフ4:狩猟では片刃と両刃、どちらがいいんだろうか?
これまでナイフに関して少しずつ勉強してきました(柄の違い・刃の鋼材)。
今日は片刃と両刃の違いについて勉強して、どう使い分ければ良いものなのか、考えてみたいと思います。
片刃と両刃
みなさんご存じのことかと思いますが、片刃と両刃の刃の断面はこうなっています。
*裏スキや糸刃など省略しています。
比較的、和式ナイフや和包丁は片刃が多く、洋物は両刃が多いようですが、もちろん両刃の和包丁もあります。
さて、これら刃の形状がもたらす機能の違いとは何でしょうか? あれこれ調べてみた結果を踏まえ、表にしてみました。参考にしたページもリンクしておきますので、詳しく根拠を知りたい方はそちらをご覧ください。
片刃 | 両刃 | |
切れ味 | よく切れる | 片刃には劣る |
研ぎやすさ | 研ぎやすい | 研ぎにくい |
割りやすさ(木を割るなど) | 割りにくく、左に片寄る | 割りやすく、まっすぐ割れる |
薄切り | 薄切りしやすい | 難しい |
刃先の強さ | 両刃には劣る | 強い |
*太字の方が「より優れている」ポイントです。
《参考サイト》
- 問題の回答 片刃・両刃の違い(片刃はどうでしょう ~嫁入り道具は片刃のシェフナイフ~)
- 刃の構造について【片刃・両刃の違い】(鍛冶屋トヨクニ)
さて、表を元に改めて片刃と両刃の特徴をまとめてみると……
《片刃》よく切れ、研ぎやすく、薄切りがしやすいが、何かを真っ二つに割るような用途には向かない。
《両刃》割る用途には最適で、刃先も強い。
で、狩猟にはどちらが?
片刃も両刃もメリット・デメリットがありまして、「狩猟ならば片刃(or 両刃)」と言い切れないんですね。
なので、具体的なシチュエーションを挙げて、どちらがより適しているかを考えてみたいと思います。
挙げるシチュエーションは狩猟を軸に、アウトドア一般を考えています。また、あくまでわたしが上の表をもとに想像しているだけです。焚き火や料理は経験値を元にしていますが、狩猟に関するアレコレは想像です。ご理解ください(むしろ、経験者が見ていましたら、「俺はこう思う」とコメントして頂けるとありがたいです。その際はここにどんどん追記していきます)
獲物の止め刺し
片刃・両刃どちらでも良いのではないでしょうか?
片刃の方が鋭く、止め刺しに向く気もしますが、獲物の骨に当たって刃こぼれすることなどを考えると、両刃の刃持ちの良さも魅力的です。マタギが使っていたマタギナガサなどは片刃ですね。
皮剥
直感的には片刃が向いている気がします。
片刃はものを薄く削ぐのに適しています。皮に肉を極力残さず、薄く削いでいくとき、片刃なら皮に対して寝かして滑らせるように向くことができそうです。その点、両刃だとどうしても刃を立たせ気味になりますので、不利な気がします。
ただ、獣の皮を剥ぐとき、魚のようにまな板の上でやるわけじゃないんですよね。だから、片刃だと使いにくい場面が出ることも容易に想像できます。というのは、片刃というのは刃の付いていない側に寝かせて切るのは得意でも、その逆は途端に難しくなるからです。
つまり、こう切るのは楽だけど――
これは苦手——
その点、両刃はどちらもおなじように切ることができるわけです。
これが実際の解体の場面で、どう出るのか、詳しい人の意見を聞きたいところです。
解体
これも、皮剥と同様に、切る向きなんかによって片刃では不利になることがありそうな気もしますが、やはり切れ味重視で考えれば片刃に軍配が挙がるのでしょうか?
こうやって書きながら、自信がなくなってきました。
両刃だとまっすぐ切るのが簡単なので、初心者には両刃が取っつきやすいのかもしれません。しかし、骨から肉を外すときなどは片刃が適している気がします。
焚き火(バトニング)
これは圧倒的に両刃でしょう。
焚き火(フェザースティック)
これは本来片刃が適していると思うのですが、どうもブッシュクラフトの人は洋物ナイフを使う人が多いようで、結果として両刃でやっていますね。
超ナイフ愛好家のJPSikaHunter氏も両刃でやっています。が、興味深いのは彼もフェザースティックを作るナイフは刃の左側をスカンジグラインド、右側を蛤刃にしているんですね。よく考えてみると、これは「変形片刃」的な考え方に思えてきます(スカンジグラインドの広い刃面をピタッと木の表面につけると、片刃のように滑らせて切ることができる)。
言い換えれば、これはバトニングとフェザースティックを1本のナイフでやるときの苦肉の策であって、もし「フェザースティック専用ナイフ」を買うなら、片刃の方が適していると思うのです。
料理
これは好みでしょうし、ケースバイケースでしょうね。わたしは片刃派です。
ヤブ払い
これは片刃に軍配が挙がります。なにしろヤブを払うための「ナタ」片刃が主流ですからね。
片刃優勢!?
こうして書いてきて、どうも片刃が優勢になっている気がします。それはきっと「わたしが片刃に魅力を感じているから」なのでしょう。
また場面場面を見ていくと、片刃が優勢でも、「刃持ちの良さ」という魅力を考えると両刃がいい! という意見があるだろうと思います。山の中でいくら素晴らしい片刃のナイフを持っていても、刃こぼれしてしまったんではガッカリです。それならきっちり研がれた両刃のナイフの方が――と考えるのも自然でしょう。究極の切れ味よりも、刃持ちの良さ、というわけです。
きっとナイフに和式派・洋もの派がいるように、片刃派・両刃派がいるんだろうな、と考えるとおもしろいです。
いつか猟師の人に会ったらいろいろ意見を聞いて勉強してみたいと思います。
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