書評 『ナイフ学入門』実用とロマンを兼ね備える清く正しいナイフの本

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ナイフのイロハを改めて学ぶために、いろいろ読んでおきたいな、と思って手にした1冊です。

『ナイフ学入門』だなんて、もしかして数式や理論の応酬なのかな、と思って恐る恐る読み始めたのですが、これがなんとも読みやすく、勉強になる1冊でした。そしてロマンに満ちている。

ナイフに興味を持ったすべての人にお勧めできる書籍です。

 

ナイフ好きらしいロマンに満ちた文章

内容に入る前にぜひお伝えしておきたいのは、この本に込められたロマンです。

ナイフを好きになる人なら分かると思うのですが、ナイフにはなんとも言いがたいロマンがあります。

「このナイフがあれば、どこまでも行ける気がする!」

「このナイフがあれば、どんな状況でも切り開ける!」

そんな気持ち、ありませんか? この著者も絶対こう考えているタイプでして、もう文章の端々がロマンチックなんですね。例を挙げればキリがないのですが、ロマンチックな著者らしさを1つご紹介します。

たったひとりの異国の旅で、もし、ナイフを携行しなかったとしたら、旅はまったく別の顔で立ちはだかったに違いない。汗と粘液、すえた大麻の残り香と猜疑心が、湿った熱気のように沈殿するゲスト・ハウスで過ごした夜の心境も、スープのそこからビーフンを掬い上げ、しゃがんですすりながら眺めた街の光景も――すべては別の様相を呈したと思われる。

気ままだったけれど、心細いわたしの旅は、あきらかに一本のナイフによって支えられていたのである。

『ナイフ学入門』旅とナイフ P.109

いえ、もし、文章のすべてがこんな調子だったなら、くどくて読んでいられない人もいるでしょう。しかし、この本のいいところは、時々こうしたねっとりした文章が出てきたと思えば、スッと目を覚まして、切れ味のいい明快な文章に転ずるのです。そのバランスが心地よく、読み手を飽きさせないんですね。あっぱれです。

 

ロマンと実用の果て

この著者のいいところは、ロマンを全面的に肯定しながらも、実用主義であることなんですね。

「ナイフなんて好きなものを使えばいいんだよ」

「でもね――辿り着くところは、実用性なんだよ」

「でも、やっぱりそこにはロマンがあってさ~」

という、ロマンと実用の天秤を揺らすこと自体を楽しんでいるかのような本です。

 

で、内容はどうかというと

この本はとてもバランス良くナイフの全容を扱っています。

まずは構造的なナイフの知識(刃、柄、分類など)から始まり、アウトドアでのナイフ、工作で使うナイフ、旅で使うナイフ、コレクションとしてのナイフ、海で使うナイフ、などシチュエーション別に「ナイフの魅力」と「選び方の勘所」を語ります。そしてメンテナンスの話を終え、最後に著者が勧める10本のナイフを紹介して締めくくられます。

西洋式のナイフはもちろん、和式ナイフもバランス良く取りあげられていて、和式ナイフに注目しているわたしも楽しめました。

あえて言えば、著者はハンターではありませんので、狩猟に必要なナイフという具体的な説明はありません。しかし「大型ナイフ」に関する著述はありますし、例として土居良明氏の小猪刀(参考:e刃物.com)を紹介していたりもしますし、そうでなくてもアウトドアや旅のナイフの章を見ているだけでも、示唆するものは多分にあります。

 

この著者のファンになりました

ナイフに関してある程度の知識があり、ウェブで情報を漁った人、あるいは本の1~2冊読んだ人ならば、この本の中身についてはすでにご存じのことが多いかもしれません。

それでもなお、この本をオススメできるのは、この著者の文章のおもしろさや、織り込まれたロマンが魅力的だからです。

趣味というのはいつだってロマンが織り込まれてなくちゃいけない。そう思いませんか?

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