書評『ゴールデンカムイ』 アイヌの狩猟やその哲学が垣間見えるマンガ
以前、ブログのコメント欄から教えてもらった『ゴールデンカムイ』というマンガ。これがなんともおもしろい上に、アイヌ民族の文化を知ることができる良い本でした!
アイヌの文化
現在8巻まで出ており、完結はしてません。完結したマンガしか読みたくない人は、もう少し待ちましょう。
ストーリーを語り出すと長くなりそうですので、思い切って短く行ってしまえば——
舞台は日露戦争のあと。日露戦争を生き残った杉本とアイヌ民族の少女アシㇼパは “ある目的” が一致し、いろんな人と戦いながら北海道のあっちこっちを旅する。
という話です。あくまで話の趣旨は「戦いながら旅をする」部分なので、アイヌに興味がなくても楽しめるでしょう。と言うか、アイヌに興味がないまま読んでいる人も多いだろうと想像します。
もちろん「戦いながら旅をする」だけのマンガなら、このブログで紹介する理由がありません。
このマンガのおもしろいところはアイヌの少女アシㇼパの「アイヌ人らしさ」です。アシㇼパはアイヌの狩猟にも精通しており、アイヌ流の狩猟をしながら旅をしているのです。またアイヌ民族ならではの猟に対する哲学も見えてきて、「狩猟好き」ならきっと楽しめるだろうと思います。
ニリンソウへのこだわり
なんとなくおもしろいと思ったのは、アシㇼパが持っている「ニリンソウ」へのこだわりです。
ニリンソウは山菜として食べることはあれど、決して日常的な食べ物ではありません。そのうえ、見た目が毒草として有名なトリカブトにそっくりなため、山菜狩りに不慣れな人は獲るべきではない山菜である、とも言えます。
そのニリンソウをアシㇼパは「肉のうまさを倍増させる」と言って、いつも大喜びで探し、食べるのです。そして鹿肉などと一緒に煮込んで食べます。
また、一方でトリカブトの毒もフル活用します。熊などの大型銃を狩るとき、アイヌ民族は弓矢を使うのですが、その矢に非常に強い毒を塗っています。その毒こそトリカブト(だけではないようですが)です。
この「最高に旨いニリンソウ」と「最強の毒であるトリカブト」の両方をちゃんと理解して使っているという姿に、自然と精通した姿を見た気がしました。
狩猟の哲学
狩猟という行為は例えそれが「生きるため」であろうと、「趣味」であろうと、どうしても理由だとか哲学が求められてしまいます。ほかの趣味のように「なんとなく」やっていてはいけない雰囲気がどうしてもあるんですね。
(釣りだと別に求められないんですけどね……)
それを面倒なことだと思うか、それも含めておもしろいと思うか、人それぞれかもしれません。
わたしは狩猟に興味を持つ前に、いろんな民族の文化に興味を持っていました。チベットなどヒマラヤ山域の民族の文化に興味を持ち、その興味が広がっていくうちにマタギの存在に出会い、そういうきっかけも手伝って自分も狩猟をやろうと思うようになりました。
そんな経緯もあるので、いろんな人の「狩猟哲学」に強い興味を持っています。なぜ? どうやって? どういうポリシーで狩猟をやるのか? 別に聖人のような理由が必要だと思っているわけではありません。ただ、人の考え方が色濃く表れる行為だと思うからこそ、その考え方を知りたい、と思うのです。
このマンガのように「狩猟が生きるため」だった時代の文化を知ることは、すごくおもしろいのと同時に、頭が下がるような思いがします。
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