書評『ナイフの愉しみ』 ナイフを《作り手》軸から読み解く本

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はてさて、じつは無作為にAmazonで購入した3冊のナイフ本が、ことごとく織本篤資氏の著書だったということに本を手にしてから気付いたのです。

そんな3冊目の織本篤資本はこちら『ナイフの愉しみ』。

ほかの2冊との比較をしつつ見ていきましょう。

 

3冊読んで見えてきた、それぞれの本のポジショニング

さて、この本の内容について語るとき、この1冊を単体で見ていくよりも、織本篤資氏が書いた他の2冊の本と比べてみると分かりやすいです。ほかの2冊というのは『ナイフ学入門』『和式ナイフの世界』です。

それぞれの本の特徴や構成をひとことで説明していきますね。

(発行順)

ナイフ学入門 → ナイフの構造的な知識 + シチュエーション別のナイフのアレコレ
和式ナイフの世界 → 和式ナイフの鋼材を中心とした知識 + 和式ナイフの歴史 + 作家紹介
ナイフの愉しみ → ナイフの基礎 + いろんな作り手たちの思い・エピソード

という具合。『ナイフ学入門』は《使う場面》を軸にナイフを紐解いているのに対して、『ナイフの愉しみ』は《作り手》を軸に紐解く形でナイフを愉しもうという構造です。この2冊は表の縦軸と横軸を織りなしているのです。

 

名工たち

恐らく意図的にでしょうけど、この本では日本人のナイフ作家が数多く取りあげられています。

というか、目次に名前が挙がる作家10人のうち、外国人はR・W・ラブレスとW・D・ランドールのふたりだけ。あとの8人は日本人です。

日本人といっても、和式ナイフばかりというわけではなく、むしろほとんどは西欧式のナイフ作家。和式ナイフはお馴染みの佐治武士氏と浅井丸勝氏のふたり。わたしは知らなかったのですが、このおふたりは隣同士に工房を構えているのですね。おどろきです。

こういった名工たちが、どういう下積み時代を経て、あるいはどう社会的に評価されながら成長していったのか? その点だけでもこの本を読む価値があります。

 

織本篤資氏の切れ味

さて、ここで改めて織本篤資という人の魅力を考えてみたいと思います。

魅力、というかその「価値観」がはっきりしているんですね。その価値観が合うと、読んでいて心地いいんです。逆に合わないと辛いかもしれません。

巨大なランボーナイフ(サバイバルナイフ)などの大型ナイフを無意味に持ち歩くことをかなり否定的に語ります。

肉厚で頑丈なナイフがあれば、万一ビバークやむなしの事態に陥っても、ブッシュをなぎ払って、応急のシェルターを作ることができる。必要とあれば、ちょっとした小屋掛けぐらいはできるかもしれない。枝打ちをして燃料を確保することもできよう。箸や用事を削ったり食糧が尽きればくくり罠を作って、小動物を仕留める。(以下略)

と考える人に対して、織本篤資氏は

もし、右のように考える読者がいたとしたらその人はまずナイフの初心者、アウトドア・ライフの初心者と見てまちがいない。

と言い切ります。説明するまでもなく、先に挙げたようなシチュエーションなんか起きやしないんですよ。もし遭難しても、「お腹空いたから小動物をとろう」なんてならないんです。人間、食べなくたって何日も過ごせます。むしろ火と水の確保が重要。

さて、そんな織本氏の名言は

「大は小を兼ねない」が正解である。むしろ「小が大を兼ねる」と考えた方が当たっている。

だと思います。

 

名言といえば——

最後に、この本で1番グッときた名言をひとつご紹介して、終わりにしましょう。

1本のナイフを手にすることは、ほとんど1冊の本を手にすることと同じである。

わたしはこの織本篤資氏のこの価値観が好きだからこそ、彼の本を3冊連続して読んでも尚飽きなかったのだろうと思います。とにかくロマンチック。ステキな人なんだろうな、と思います。

ちなみにわたしは上に上げた言葉とまったく同じことを万年筆に感じるんですね。万年筆もロマンチックな道具だと思います。まぁ、それはまた別のお話。

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