書評『アウトドア・ナイフを使いこなす』3インチセミスキナーが好きなら共感することも多いかも
今日ご紹介するのは信太一高氏の『アウトドア・ナイフを使いこなす』という本です。
なかなかアクの強い1冊で、好き嫌いが分かれそうですが、わたしは結構楽しんで読みましたのでご紹介します。
『アウトドア・ナイフを使いこなす』
読んでまず思ったのは「相田義人さん、あるいは3インチセミスキナーに傾倒しているンだなぁ」ということ。
紹介するナイフも相田義人さんの作品が多いし、いろんなエピソードや考え方が3インチセミスキナーに向かっています。
たとえば
もし、キャンピングのとき、包丁のようなナイフが使いやすくていいや、と思ったらその人は「コック」だ。
とか、
ラブレスの「ウイルダネス」は、全長275mm、ブレード超148mm、厚さが6mmもある。この大きくて、重いナイフを、アウトドアで終日、もちろん個人差はあるが、平均的な日本人が腰に吊して活動するにはやはり無理があるように思う。
とか、ゆるやかに3インチセミスキナーに向けて、外堀を埋めていくような文章が散見されます。言っていることが間違っているとか、誘導的だと言いたいのではないのですが、そこまで言い切らなくても……、と思わないでもないです。包丁も立派なナイフだと思うし(わたしだって山に包丁を持っていくことがあります)、平均的な日本人なら大型ナイフを腰に吊して1日行動することだって可能です。登山ならザックいっぱいの荷物を背負って1日歩くのですから……。
また「ナイフは無目的でなければならない」という強い意思があるようで、目的を持ったナイフは、少なくともこの書籍の上ではナイフの定義から外されているほどです。
ナイフにはたくさんの種類がある。たとえばアウトドアで使う事を目的にしたものにハンティング・ナイフやファイティング・ナイフがあり、また、キッチンナイフやテーブルナイフ、フルーツナイフなどのように、用途を特定しているものもある。
しかし、ここではキッチンナイフやテーブルナイフなどはナイフとは呼ばない。ブレード(刃物)ではあるけれど、ナイフではない、とあえていう。大工の使うノミやカッターナイフなども、同じようにブレードではあるけれどナイフではない。
とまぁ、こんな感じの本です。なかなかアクが強いというか、偏りを感じさせます。
日本人は3インチセミスキナー?
またこの本の中では日本人には3インチセミスキナーが合うと断言している章があります。
日本人の手のサイズに合ったナイフ それが3インチなのだ
私は「4インチセミスキナー」をアレンジした、相田の「3インチセミスキナー」が「日本の標準サイズ」だと思っている。
このように海外で標準とされているものを鵜呑みにせず、日本人には日本人のサイズがあるのだ、という考え方には賛成ですが、今の時代日本人だって多種多様。手の大きな人も、小さな人もいる。男と女でもずいぶん違う。大人と子どもでも違う(子どもだってアウトドア遊びをするのだから)。
だからせいぜい「多くの日本人にとって4インチでは大きすぎると思っている」くらいにしておくべきだったかな、と感じました。
このあたりは『ナイフの愉しみ(織本篤資)』のほうがしっくりきます(この本の紹介記事はこちら)。
ナイフに限らないが、適正な道具のサイズは、扱う対象とともに、使う人間の体格とより密接な関係がある。3インチによりも4インチ、4インチよりも5インチ……などと、単にメジャー上のユニットによって割り出すものではないのである。
ひと言で言えば「人それぞれ」とまぁ、そういうことです。
ただしアクの強さはおもしろさ
と、ここまでこの本に対して懐疑的、というニュアンスで紹介してきましたが、決して悪い本ではないと思うンです。
むしろアクの強さはおもしろさにも繋がります。読んでいて「そうだそうだ」と共感するばかりが良書ではなくて、「違うんじゃないか?」「そんな考えもあるのか?」と首をかしげる本があってもいいと思うんです。
またこの本に関して言えば、「(相田義人さんの)3インチセミスキナーをアウトドアで使いこなす本」みたいなタイトルだと思って読むととてもおもしろい。
実際、いろんなシチュエーションでのナイフの使い方が写真付きで説明されているので、自分のやり方と比べてみると発見もあるでしょう。
それに読んでいて相田義人さんのナイフが欲しくなりましたよ。
ナイフはガンガン使うもの
またこの本全体として「ナイフはガンガン使ってなんぼ」というメッセージが込められているように感じます。
缶切りとして使う人を見て「ナイフに関して進んでる」と表現するほどで「より使う人がエライ」という考えなのだと思います。
これはまさにその通りで、わたしとしてもキレイに保管されているナイフよりも、使われて傷がついているナイフの方が美しいとさえ思います。
よい本だったと思っています
全体を通して写真も多く、それらがまた美しいので、見ていて楽しめました。
読んで良かった、と思った本です。
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