第38回JKGナイフショーに行ってきたので気になったナイフをご紹介

最終更新日

第38回JKGナイフショーに行ってきました。こういったナイフショーは2度目。初めてではないので、思いっきり楽しんできたいと思います。

行ったことがない人は、ぜひ行ってみてほしいイベントです。

ナイフショーって買うだけのイベントじゃない

春にもカスタムナイフショーに行ってきました。そのときはカスタムナイフショーというイベントの雰囲気を良く理解しておらず、お金持ちしか行っちゃいけないんじゃないか、と居心地の悪さを感じつつ訪れたのを覚えています。

そのときの様子→カスタムナイフショーの記録、あるいは初めて行く人のための手引き

しかし、今回は2度目。もう慣れています。

第38回JKGナイフショー

もしかしたら「カスタムナイフって高いんでしょ? そういうのをポンポン買えない人は行っても気まずい思いをするんでしょ?」と思う人もいるかもしれません。

しかしそんなことはありません。各ナイフメーカーさんは本当に丁寧にナイフの紹介をしてくれます。買う買わないなんて関係なく、「このナイフはこういう目的で使うのを想定してるんだ」「一見普通のナイフだけど、ここに工夫があるんだ」と本当に楽しく説明してくれます。

ほら、オシャレな洋服屋さんとか行くと、「さぁ、どれを買うんだ!?」と追求されることがありますよね? ああいう居心地の悪さはゼロです。

ナイフメーカーさんも、そこに訪ねるお客さんもナイフ好きなので、「ナイフの話をネタに盛り上がろう!」って感じで軽い気持ちで楽しみに行きましょう。

 

※言うまでもありませんが、「俺は客だ!」みたいな横柄な対応はせず、同じナイフ好きとして、そしてナイフメーカーさんへの尊敬の気持ちを大切にしたほうがいいとは思いますよ(実はそういうのを感じられないお客さんが1人いて、残念に感じました)。

 

ハンター・釣り人多し

わたしも全員に聞いて回ったわけではありませんが、ナイフメーカーさんの中にはハンターや釣り人が何人もいました。

「自分で解体に使うナイフをあれこれ研究してるんだ」

「渓流釣りで使いやすいナイフはやっぱりこの形だよ!」

と自分で作っては使ってみて、トライ&エラーを繰り返しているそうです。もちろん、人によって考え方が違うので、それぞれのナイフメーカーさんにこだわりのポイントを聞くと、おもしろいですよ。それこそ話が止まらないってくらい盛り上がります。

 

わたしが気になったナイフたち

さて、わたしが気になったナイフたちをご紹介していきたいと思います。

前回カスタムナイフショーに行ったときは写真を撮り忘れて残念だったので、今回はいろいろ撮影したんです。

 

ナイフ作家:奈良定守さん

奈良定守さんのサイト

以前、奈良定守さんからナイフを購入したことがあります。今回伺ったら、顔と名前を覚えていてくださいまして、本当に嬉しかったです。というわけで、もともと好きなナイフ作家さんでして、今回もゆっくりお話しさせていただきましたよ。

奈良定守さんのナイフは手に持った感じが温かく、ハンドルの曲線がちょうどいいんですね、わたしには。奇をてらうような目立つ細工やデザインではないのですが、長く使える道具としての魅力を感じます。

そんな奈良定守さんのナイフの中で、“他のナイフ作家さんとちょっと違う” ナイフがこちら。鍛造ナイフです。

奈良定守さんの鍛造ナイフ

こういったカスタムナイフショーではATS-34という鋼材を使った、ホローグラインドのナイフがとっても多いです(気のせいでしょうか?)。たしかにATS-34は優れた鋼材ですし、ホローグラインドもハードな使い方(例:木を叩く)をしなければ、とっても使い勝手良いので好きではあります。わたしも使ってますし。

ATS-34のホローグラインドがとにかく多い中、奈良定守さんは鍛造ナイフを作っています。刃はスカンジグラインドを軽くコンベックスにした形。

なにが良いって、妖艶な、刃の鈍い輝きです。ミラーフィニッシュなどのピカピカのナイフもステキだと思いますし、実際上のメリットもありますが、こういう重く鈍く光るナイフもステキだと思います。美しいです。

 

ナイフ作家:内田啓さん

内田啓さんのウェブサイト

内田啓さんのナイフも実は所持しています(ナイフ紹介:内田啓さんのリトルケーパー。鉛筆握りが似合うかわいいナイフ)。そしてお気に入りのナイフでもあります。

先述の奈良定守さんも内田啓さんも、Fielder誌の「鹿一頭を解体できる最も小さなナイフ」という企画に参加していて、そちらの記事やナイフを見ても、いろんな挑戦をしているんだなァ、と尊敬しています(参考)。

で、こちらのナイフは4インチドロップハンター。まさに「鹿の解体用のデザインだよねぇ」と内田啓さんも仰っていました。実際に手に取ってみると適度な重さで心地良い。高級万年筆や高級ボールペンってちょっと重くてちょうどいいじゃないですか? ああいう感覚と言えば良いのでしょうか。

4インチということは約10センチ。モーラとほぼ同じくらい。そういう意味では「慣れた大きさ」と感じる人も多いかもしれませんね。しかし、重さの感覚が全然違うので、まったく違う魅力を感じました。

またハンドルの形がわたしに合うのか、手の中でクルクルと回す感じが心地よく、いつまでも持っていたくなります。

内田啓さん:4インチドロップハンター

 

もう1本気になったのはヘビーデューティーナイフ。内田啓さん曰く「ブッシュクラフト用」とのこと。まさにそういうデザインですね。グッと刃厚もあり、手に持った感覚はずしりとしています。男のナイフって印象です。また、鋼材が(たしか)CV-134というもの。マトリックス・アイダさんのサイト曰く——

硬度が高く、耐磨耗性と靭性に富み、ヘビーデューティー向きです。

CV-134

とのこと。まさにハードに使う用途にはばっちりな鋼材のようですね。また、個人的な感想ですが、ブッシュクラフト用という目的で作ったナイフだと、背がすべてフラットにデザインされていることが多いと思うんですが、こちらは真ン中から先が尖ってますね。そのへんが実用上どう活きてくるのか気になる1本です。

おもしろいナイフです。

内田啓さん:ヘビーデューティーナイフ

ナイフ作家:宮前敏行さん

宮前敏行さんのウェブサイト

宮前敏行さんはフォールディングナイフを中心に作られているナイフ作家さんのようです。関アウトドアナイフショーの関市長賞を受賞しています。

関市長賞を取ったのはマルチツールでした。下記の写真は同じものではありませんが、やっぱりすごいマルチツールですよ。手に持ったときのフィット感、ずしりとくる高級感、そしてムダのないツール選択、本当に欲しいと思いました。

マルチツールって余計なものが付いているというだけで、魅力が半減しませんか? あるいはせっかく全体的に良くても「はさみだけショボい」みたいに、一部手抜きが見つかると、ガッカリしませんか? あるいは開くときのバネの感触がぎこちないと拍子抜けしませんか?

マルチツールって総合芸術なんだな、とこれを見て思いました。見てください。はさみひとつ見ても美しいです。また、付いているツールがわたしの好みでして、なんにも文句が浮かばないですね。

宮前敏行さんのマルチツール

 

さて、こちらは2丁出しのフォールディングナイフ。2丁出しというスタイルっていいですね。これを見て「ありだなぁ」と感じました。

片方の刃が鈍ってきたら、別の刃を使ってもいいし、ちゃんと刃の形状も違うので、用途によって使い分けることもできます。ハイキングに持って行くような用途には向いていると思います。あるいは(日本では許されないけれど)日常的にポケットに入れておいて、チャチャッと使うのには最高ですね。

宮前敏行さんの2丁出しナイフ

 

ナイフ作家:金井洋一郎さん

金井洋一郎さんのウェブサイト

金井洋一郎さんは北海道で狩猟をされている方です。お話を伺ったら、「ほんと、狩猟で生きていきたいくらい好き」って仰っていましたね。また、ブログの方を拝見すると、猟友から依頼を受けてナイフを作ることもあるそうで、根っからのハンターナイフ作家という印象です。

また、北海道のハンターであるJPSikaHunterさんの動画を見て、「そこまで良いというならば」とバークリバーのナイフを見て、そのエッセンスを取り入れつつ、オリジナルのカスタムナイフを作られたそうです。それが下記の写真です。

バークリバーっぽいとか、そういうのは感じませんが、スカンジグラインド、コンベックスグラインドと、そのあたりのベースは踏襲しているようですね。また、個人的にはこの主張しないヒルト代わりの出っ張り(なんと呼ぶのでしょう?)が好きですね。

しっかりしたヒルトも嫌いじゃないですが、ヒルトがあると重くなる気がするし、見た目的にもずしりとした重厚な印象を受けます。一方、このデザインだと、まるでヒルトがないような、シュッとしたシンプルな印象を受けるのですが、最低限の滑り止め効果はちゃんと確保しているわけですね。う〜ん、ステキです。

う〜ん、下のナイフ、欲しいかも……。ふむ……。

金井洋一郎さんのナイフ
金井洋一郎さんのナイフ

ナイフ作家:道中俊明さん

フィッシングナイフやミニチュアナイフなどを作られている作家さんのようです。わたしも詳しくは存じ上げませんが、今回ふと手に取ったナイフが取っても印象的で、ある意味、今回のナイフショーの中で1番「おお!」と思った1本でした。

そのナイフというのはこちら。まず、見たときにシルエットにグッときました。スタッグハンドルは比較的シンプルな棒状のデザインが多い印象ですが、こちらは人差し指をかけるあたりが大きく削り込まれています。こういうハンドルって、持ち方を選ぶんです。順手では持ちやすいけど、逆手では持ちにくい……とか。でも、これはそういう印象はなく、いろんな持ち方を許す懐の広さを感じました。

道中俊明さんのナイフ

 

しかし、このナイフを見て「おお!」と思ったのはハンドルの形状だけではありません。裏返してみると、なんと片刃だったのです。

こういったデザインのナイフで片刃ってそもそも多くないと思うんですが、まさかこのナイフが片刃とは思わず「へぇ〜〜!」と唸ってしまいました。そして「なにに使いやすいかな〜」と妄想が広がります。

わたしがナイフを買うときは、まず用途があって、その用途に合わせて選ぶわけですが、このナイフは珍しく「これがあったらなにができるだろう?!」と妄想をかき立てられました。個人的に片刃って好きなので、欲しくなりましたよね〜。

道中俊明さんのナイフ

 

その他、気になったナイフたち

すこし記事が長くなってきました。最後にいくつか「へぇ〜」と記憶に残ったナイフをご紹介して締めくくりたいと思います。

 

まずはこちら。左のナイフはスキニングアックス。つまり皮剥ナイフですね。めちゃくちゃ使いやすそうでした。完全に用途は限られますが、ロマンはありますね。

一方、右のナイフはブッシュクラフト的火起こし用のナイフ。よく見ると2つの辺に刃が付いています(左下に向く辺と左上に向く辺)。左下を向いた刃はバトニング用、左上を向いた方はフェザースティックを作るため、らしいです。なるほどねぇ〜。おもしろいです。

 

これはわたしの趣味ドストライクの小さいナイフ。刃が短いナイフって強烈に惹かれます。

 

こちらは台湾で野菜の収穫に使われるナイフらしいです。弧の内側に刃が付いています(左端除く)。ピカピカのナイフが並ぶ中、こちらは伝統的な道具という感じで、むしろかっこいいと感じましたよ。

 

こちらもわたしの趣味にストライクなナイフ。飴色になったスタッグがステキですね〜。装飾を施すのではなく、こういう色味で渋さを出しているのがステキです。アウトドア用の基本的なナイフとしてこんなのを使っていたら、超カッコいいと思います。

 

ナイフ好きの大交流会

こういうナイフイベントって本当におもしろいですね。

普通は、まずナイフを好きになり、それからナイフ作家さんを好きになるのかもしれませんが、こういう場では、逆にまずナイフ作家さんを好きになって、その人が作るナイフを使いたくなるっていう作用がある気がします。

 

最後に、ひとりの来場者として「こういう展示が増えてほしい」という要望を書かせてください。

それは「実際に使われたナイフの展示」です。今回もいくつかのブースで見かけました。それらはナイフ作家さんが実際に日常的に使っているナイフです。シースは飴色にエイジングされ、ナイフは研ぎ減りしている。すごくリアルな展示で、それだけでも見ていておもしろいと感じました。

実際に自分が何年も使ったら、どう変化していくのか見ることができるという意味で参考にもなりますし、なにより作家さんと話が盛り上がりやすい気がしました。「このナイフは主に何に使ってるんですか?」「狩猟だよ」「へぇ、どうしてこういうデザインにしたんですか?」なんて具合に。

 

ともかく楽しいイベントでした。次にこういう機会があるとしたら来年の春くらいでしょうか。楽しみにしています。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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