初めてシカを処理施設に卸して思ったこと

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先日、自分が獲ったシカを、初めて地元の処理施設に卸しました。

これまで、たとえ有害鳥獣駆除で捕獲した獲物でも、肉は自家消費していました。しかし、非猟期の駆除を少し積極的にやろうとすると、全部を自家消費するのは無理があったので、今後のために試しに卸してみることにしましたのです。

降ろそうと思った背景と、その後、自分なりに感じたことを記録してみようと思います。

※今日の内容はすべて非猟期の牧草地での駆除の話です。ぼくが冬に取り組んでいる狩猟とは別物であると、ご理解ください。

駆除を活用すべきという考えではないけれど

過去に書いたように「駆除した個体を利活用しなくてはいけない」とは思っていません。むしろその思想は駆除の目的からすると、邪魔になり得るとさえ思っています。

参考:【駆除と狩猟の難しさ】目的が違えば方法も変わってくる

 

とはいえ獲って捨てる駆除を積極的にやりたいと、ぼくは思っていません。できる限り全部自家消費してやる、と思っていました。本音と建て前と言われそうですが、僕の中ではわりと整理が付いている話です。

わたしの住む地域の駆除は個人ごとに捕獲上限が決まっており、その数は多くありません。年によって異なりますが、半年で10頭前後というところでしょうか。100も200も獲ることはできません。

だから「駆除効率を最大限高めて、獲れる獲物はガンガン獲る」という必要がないんです。ちょっと他の地域とは事情が異なります(と、ぼくは理解しています)。

 

でも自家消費するには多い

上限が多くないので、自家消費できるかなーと思っていましたが、半年で10頭となるとすべてを自家消費するのは難しいです。友人に配ったりもしますが、それでも多い。もちろん好きな部位に絞って持ち帰ればどうとでもなるし、そうしてもいいのですが、ここで牧草地での狩猟独特の事情が出てきます。

牧草地ではすべて回収が基本です。まさか牧草地を掘り返して埋めるわけにはいきません。

車から近い場所で獲るので回収するのはいいんですが、それを持ち帰って解体できる場所がないと、自家消費することもままならないんです。「うちで解体していいよ」と言ってくれている人がいて、そこを頼ればいいのですが、それでも残滓はゴミ処理場などに持ち込む手間があります。

現地で獲物を回収して、苦労して車に積み込み、解体させてくれる家に運び込み、背ロースとモモをとり、残りを小分けしてゴミ袋に入れて、ゴミ処理場に持ち込むとなると、大変な手間です。ちょっと気も使いますしね。

ましてや、獲ったあとで「今日はうちでは解体できないんだ」となったら、困っちゃいます。まさに途方に暮れる状態。

(だから解体できるような小屋が欲しいのよね。これは別の話)

 

食肉処理施設へ持ち込む建前

さて、ちょっと話が変わりますが、ぼくはゲストハウスを経営しています。うちの宿の朝食は妻が料理した鹿肉カレーです。

もちろん使う鹿肉は食肉処理施設から仕入れたもの。法律をご存じの人は分かると思いますが、個人が解体した肉を販売するのは違法です。だからわざわざ仕入れるんです。

うちのお客さんからよく言われるのが「これ、ご主人が獲ったシカなんですか?」という言葉。

そりゃそうですよね。お客さんとしてはちょっと期待すると思います。自分が泊まった宿のオーナーがハンターで、その人が獲った肉と言われたらちょっとロマンがありますもんね。でも違う。嘘はつけませんので、いつも正直に「販売用のお肉は許可の取れた処理施設から仕入れている」とお伝えしています。

で、あるとき思いました。

「ぼくがその処理施設にシカを卸せば循環するじゃないか!」

つまり——

ぼくがシカを獲る → 食肉処理施設に卸す → 施設で販売用に加工 → うちで仕入れる → うちのお客さんに提供する

というわけです。もちろん、いろんなハンターから仕入れているので、お客さんが口にするのは、僕の獲ったシカ肉とは言えません。しかし——

「ぼくらのような地元のハンターが獲ったシカを処理してくれる施設があるので、そこから仕入れてます。ぼくもそこに卸してるんですよ」

と話すことができるわけです。

 

実際にやってみて思ったこと

まぁ、建前として、そんなことを思ったので、試しにやってみることにしました。

先日駆除で鹿を捕獲したので、大急ぎで施設にメッセージ。

ぼく「今から肉を持ち込んでもいいですか?」
施設「お願いします」

大急ぎで回収して、肉を施設に持ち込みました。そこで手早く処理されていくのを横目に、オーナーが出てきて、買い取り費用を払ってくれました。帰りの車内、シカの回収と車への積み込みでかいていた汗が冷えていくのを感じながら、どこか清々しい気持ちがありました。

「ああよかった」

本当にそう思いました。ぼくは自分のやっている狩猟が、できるだけ「生活の一部になるように」ということを意識しています。好きでやっていることだし、傍目には “ただの趣味” と見られるかもしれません。どう見られても構わないのですが、自分の中では趣味であり、生活における実益でもある、ということを大事にしているのは事実です。

シカの売買で稼ごうという気持ちはないのですが、今回のように本業である宿泊業に自分の活動(=狩猟)が結びつく感覚は、不思議と満足感がありました。

最近はブログや書籍の読者が泊まりに来てくれることもあり、ますますやまくじとしての活動と本業の結びつきを感じていたので、それが少し強化されたような感覚を持ちました。

 

非猟期は積極的にやりたいかな

猟期になれば山に入り、それは100%自家消費用に獲ることになりますが、非猟期の有害鳥獣駆除は少し割り切って食肉として引き取ってもらうのを優先していこうかな、と今は思っています。

(引き取り条件もあるので、毎回引き取ってもらえるわけでもないでしょうけれど)

 

偶然なのか、自分の性格なのか分かりませんが、自分のいろんな活動がゆるやかに繋がっていくのを感じています。また、妻が鹿肉を料理し、お客さんに提供しているのもまさに “つながり” の1つ。

そういうつながりを今後も大切にしていきたいな、と思っています。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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