書評『狩猟生活Vol.3』鳥猟づくしの中で羆の隠し味

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昨年創刊された狩猟雑誌である『狩猟生活』。その第3号が先日発売されました。

今号の特集は鳥猟。散弾銃でのカモ撃ちはもちろん、エアライフル、網猟までカバーされています。

そして、特集とは別に企画されているのが羆猟。久保俊治氏の記事です。

なかなか読み応えがありますよ。

いろんな人の鳥猟

狩猟を始めてつくづく痛感したのは、狩猟のスタイルは人それぞれってこと。四つ足猟でも、鳥猟でも、本当にみんな違うんですよ。

わたしは単独忍び猟がメインですが、同じ単独忍び猟をやる人でも、入る山によって、狙う獲物によって、あるいは本人が好きな猟法によって、まったくアプローチが違ってくるもんなんです。

その違いがおもしろいし、こういう雑誌で読みたいモノって、その違いだったりするんです。

で、この『狩猟生活』という雑誌はVol.1からVol.2〜3と続けて、“リアル・ドキュメント” という特集(?)を組んでいて、その中でテーマに沿ったいろんな人の猟を描いています。

Vol.1は鳥・シシ・鹿など幅広く扱っています。Vol.1だからかな? Vol2は罠猟。片桐邦雄氏の猟から、秋田マタギの罠猟などまで取りあげていました。

で、今回は鳥です。

「鳥猟はマラソンである」

どの記事もおもしろいし、順位付けする気はないですが、最初にパラパラめくっていて目についたのが、「鳥猟はマラソンである」という記事の最初の写真でした。

何気なくライターの名前を見ると田中康弘氏。マタギに関する書籍や、最近だと『山怪』が有名ですね。

言い方が適切か分かりませんが、素朴な猟なんですよ。ハラハラドキドキのドラマチックな展開や、手に汗握る緊張感があるわけじゃなくて、普通のハンターの1日とでも言いましょうか。

でも、それこそ猟だと思うんですよ。そりゃ、時にはみんなに語りたくなるような出来事もあるでしょうし、キツい体験もあるでしょうけれど(わたしでさえ少しはある)、普段の猟はもっと素朴で、淡々としていて、「あれ〜いね〜な〜」と首をかしげつつ、寒い手を擦り合わせて帰ってくるような、そういうもんだと思うんですよ。

まあ猟という物は “当たるも八卦” ではないが “獲れぬも猟” なのである。

とまあ、記事に書いてあるとおりだと思うんです。この日の猟も残念ながら獲物には恵まれないのですが、猟の途中で弟子的な若いハンターと偶然会い、一緒に周り、終わってからは猟仲間たちとの新年会と流れていくんです。

獲れる猟ばかり注目しちゃいますし、人に話したくなりますが、まさに “獲れぬも猟” だし、それこそ “リアル・ドキュメント” だと思うんですよ。

 

「400年以上続く集弾伝統猟」

こちらの記事は、本当に勉強になりましたね。

越網猟ってご存じですか? たしか狩猟読本に書いてあった記憶がありますが、実際にやっている人に会ったことも、見たことも、こうして雑誌の記事で見たこともありません。

おもいっきりざっくり言えば、飛んでくるカモ目がけて網を投げて、カモを絡め取るような猟です。

宮崎県の佐土原町では、飛んでくるカモに向かって網を投げる「越網(こえあみ)猟」という集団猟を江戸時代から400年以上も続けているらしい。

歴史ある猟法です。きっと今じゃやっている人もごく一部だし、これから「よーし、越網猟だ!」と突然始める人も多くないとは思うんです。でも、こういう雑誌がこうして取りあげることで、改めてみんなの目にとまるというのは、メディアとしての大きな役割りだと思うんです。

とってもおもしろく読ませて頂きました。

 

「羆を求めて」

北海道の羆猟師である久保俊治氏の猟に瀬戸祐介氏が同行するという記事です。

“かつて久保さんとフチがヒグマを追って歩いたところを、一緒に歩いてみたかった”

という瀬戸さんの要望に応える形で、11月下旬の羆猟に同行した記事です。フチってなんだ? という方は、こちらの『羆撃ち』を読むと分かります。

フチは久保俊治氏が連れて歩いた犬。アイヌ犬です。

アイヌ語で「火の女神」という意味を持つ「アペ・フチ・カムイ」から取って「フチ」と名づけた。この名前なら冬の凍えた唇でも呟ける。
羆撃ち P160

子犬の頃から可能性を感じ、大事に育て、しつけ、良き猟の仲間として久保俊治氏と行動を共にした犬でした。この羆撃ちという本は、私の中では久保俊治氏の自伝というよりも、フチの一代記に近いとさえ思っています。

そういえば、過去にこの羆撃ちを紹介する記事を書いたことがありますね。

参考:書評『羆撃ち』 ヒグマ猟で生きてきた人間の泣き顔

この記事の中で羆は獲れませんが、それは大した問題ではありません。羆はそんなポンポンと獲れるものではないですし、瀬戸祐介氏としても、獲れる獲れないが重要ではなかったはずです。羆撃ちとしての久保俊治氏の猟法、考え方、感覚……そういうものを見たかったのだと思います。

そういう意味では成功していると思いますね。

 

雑誌っておもしろいよなぁ

わたしは雑誌が好きなんです。

本も好きで暇さえあれば読んでしまうのですが、雑誌も同じように好きですね。本にはないおもしろさがあります。

いくつか狩猟雑誌ってありますけど、どれも違うおもしろさがあると思っていて、この狩猟生活は「鳥猟はマラソンである」という記事の紹介で書いたような素朴さがあるような気がしています。

羆撃ちの記事でさえ、過度に飾らず、久保俊治氏の猟を伝えることに終始していて、地に足がついた印象です。

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