単独猟を安全にこなすために意識していること
猟に出るからには獲物を獲りたいわけで、「どうすれば獲れるのか?」ということは誰でも考えると思います。
しかし本当はもっと大事なことは安全に猟を終えること。獲れないとしても、その日が無事に終わり、帰ってウマいビールでも飲めたなら、それでいいじゃないですか。
グループ猟ならば、なにかあっても助けてもらえます。でも単独だとそうはいきません。登山の世界でも単独行はいろいろ知識や経験が必要で、なかなか踏み出せない人もいる行為です。ましてや猟となれば、道なき道も行くし、本当に人が入らない場所に入っていくし、何かあってもだーれも助けてくれません。
だからこそ “安全に猟を終える” というのは単独猟をする人にとってはとても大事なものだと思っています。
今日は「安全に単独猟をやる」というテーマで気をつけていること、意識していることを挙げてみたいと思います。いろいろ不足もあると思います。どうか、みなさまの気をつけていることもシェアしてください。
1.山を知っておく
やっぱりこれが大事。
とにかくその山について知っていることが重要。冬の寒い季節になる前に、その山を歩き回っておいて、地形を理解したり、地図に現れない崖や急斜面など、危険箇所を把握しておくのが大事です。
いきなり猟で入ると、「いけると思った場所が実は3mの崖になってて通れない。仕方ないから藪をひたすらかき分けて向こうの尾根に出よう」みたいな力技に頼る結果になり、結果として効率よく獲物を探せないし、危ないです。
通れる場所、通れない場所を把握しておいて、スマートに歩けた方がいいですね。それでもどうしてもひどい場所に入らなきゃいけないこともあるんですが、ちゃんと把握してはいるのと、わけも分からず危ない場所に入るのとでは意味が違います。
2.早めの下山
猟は日没までできます。わたしの住んでいる地域だと(日によりますが)概ね16時台後半に日没です。
日没になれば(当たり前ですが)日が暮れます。
始めたばかりでまだ獲物を獲ったことがなかったときは、最後の望みをかけて、日没のその瞬間まで山の中で過ごすようにしていました。しかし、今は早めの下山を心掛けていますね。少なくとも、最後まで粘るとしても林道近くで粘ります。
というのも、前に書きましたが、山の中で暗くなると本当に怖いです。
参考:単独猟で暗闇を歩くのは恐ろしいとこと、それに対する備え。
たとえば日没の5分前に獲物が獲れたとしましょう。初の獲物だったりすると、解体のやり方も確立してなくて、手探り状態です。日没を迎えた山の中で、手探りの解体ってかなり辛いです。慣れてくればヘッデン1つで解体できるでしょうけど、最初は本当に戸惑います。
日没まで猟をすることに反対はしませんが、林道近くまで降りておくことを強くオススメします。それなら解体を終えてから、肉を持ち帰るのも安全。
3.体力は3〜4割残す
下山した瞬間、マラソン選手のゴールシーンのように倒れ込むような山行はよくないです。
楽々笑って一服ってくらいのほうがいいですね。だから体力を3〜4割残して下山するイメージでいるといいと思います。
猟の場合は々山に繰り返し入る人が多いと思います。だから「今日はちょっとキツかったな」と思えば、次回からは微調整して、少し楽なコースを歩けばいい。そうやって体力を3〜4割残すスタイルを確立していくといいと思います。
わたしも最初の頃は「下山すると筋肉痛!」って感じでしたが、最近はそんなこともなく、気軽なもんです。体力がついたってのもあると思いますが、無理しなくなったのが大きいです。
4.備えあれば憂いなし→FAK
FAK=ファーストエイドキットは必ず持参しましょう。
わたしもずっと持ち歩いていますが、いまのところ1度も使っていません。それでいいと思っています。マーフィーの法則で「準備していれば、そのトラブルは起きない」というような意味の言葉があったと思いますが、まさにそれが重要です。
(余談ですが、わたしは昔システムエンジニアとして、システムの開発/管理をしていましたが、その当時から「準備していればトラブルは起きない」という信念を持っています)
小さなヒヤリハットはあります。解体中に刃先が手に当たったこともあります。そのとき使っていたゴム手袋が切れましたが、手は切れませんでした。もしあのときぱっくり切れていたら、と思うとやっぱり怖いです。ガーゼや止血に使えるものを持っているにこしたことはありません。
→追記:その後、指をバッサリ切る事故をやらかしましたが、FAKがあって乗り越えました。
5.水と食べ物は余計に
よく「おにぎりは下山するまで1つ残しておく」と言いますね。秋田のマタギもこういう考えで食事を考えていたはずです。
わたしもその考えに従い、おにぎりをいくつか持って行きますが、全部を食べることはありません。必ず(少なくとも)1つは残しておいて、下山したとき、あるいは下山目前に食べます。
水も同じです。
下山したときにちょっと残っているくらいが丁度いいですね。わたしはいつも500mlの水を残して下山しています。ペットボトルに予備の水を入れているので、それをあけることなく下山するイメージです。
獲物が獲れたときは、下山で大変な体力を使うので、そういうときだけその500mlのペットボトルに手を付けます。
6.獲物が獲れたときのことを考える
『早めの下山』の中でも書きましたが、猟は日没までやれるにせよ、もし日没直前に獲物が獲れたら暗闇の中で解体し、暗闇の中を下山することになります。
それが一概に悪いとはいいませんが、よく考えて、自信があるときだけにした方がいいと思います。
たとえばわたしがイノシシを獲ったとき(参考:単独猟日記15:山のクジラを獲りました)、下山に向かうルートで、「このイノシシを撃ったら、下山は暗くなるかもしれない」という気持ちがありました。
実はそれが理由で一瞬だけ撃つかどうか迷いましたが、結果としては撃ちました。なぜならそこから林道までのルートはこれまで何度も歩いており、ハッキリした道ができている場所だったからです。また、ここから先、下山まで登りのルートもなく、平坦な道と、あとはゆるい下りのみ。
「時間は際どいけど、ヘッデンも持っているので、最悪暗闇になっても下山できる」
と判断して撃ちました。たとえば、その日の山歩きで想像以上に時間がかかってしまい、林道からまだまだ遠い場所にいたならば、撃たないという選択肢もあると思います。
とにかくそこで獲物を獲っても大丈夫か? よく考えたいところです。とくに初心者は。
7.地図は読めること
ついつい獲物を追って普段入らない山奥に入ることもあります。
それでも地図を読めればちゃんと帰ることができます。GPSなども併用しつつ、地図を読めるのは必須技術だと思います。
高度な地図読みはできないにせよ、地形図を見慣れておきたいところです。
とにかく安全優先
山奥で足をくじけばそれだけで行動不能状態になるかもしれません。
ちょっとした滑落で、気を失って、気付けば夜なんてことになるかもしれません。
山に入る以上、そういう可能性をゼロにすることはできません。しかし、備えあれば憂いなし。ちゃんとした計画と、準備と、技術でリスクを軽減したいです。
そうやって安全にやっていればこそ、安心して獲物も獲れるんじゃないかな?
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