書評:『けもの道 2017秋号』獲物が獲れたその後のこと考えてますか?

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わたしも狩猟を始めて、とにかく最初は「獲物を獲りたい」という気持ちが強かったです。だからこそ、獲るための情報を検索したり、自分なりに工夫したり、人にアドバイスをもらったりして改善に努めてきました。

獲物は食べるために獲っています。獲って終わりではありません。キャッチアンドリリースの釣りとも違います。もしおいしく食べられないならば、とっても意味がないんです。

そんなことに気がつき始めたとき、たまたま手に取った雑誌が、今日ご紹介する『けもの道 2017秋号』です。

この雑誌の特集が「肉の処理」という意味で、すっごく勉強になるものでした。初心者ハンター必見と言いたいくらいです。ご紹介します。

けもの道 2017秋号

『狩猟の道を切り開く狩猟人必読の専門誌』と謳っている狩猟専門誌です。

これまで何冊か読んできていますが、比較的硬派といいますか、コアな狩猟雑誌という印象を持っています。また猟犬に関する話題が豊富なのも印象的ですね。

「初心者ウケ」を狙った記事が少ないような印象もあります。

 

『肉々しい特集』

また、なんというか直球な特集のタイトルです。

その名の通り、肉に関する特集です。これがとにかく必見ですね。もちろん自分なりにリサーチして、研究してきた人にとっては既知のことも多いかもしれませんが、初心者ハンターでまだいろんな人の意見を聞いては右往左往している(わたしのような)人にとっては肉に関する大事な知識をコンパクトにまとめてくれている特集です。

特集の中身はいくつかの章に分かれています。

  • 肉の熟成、ちょっとその前に
  • 絶品!熟成ジビエ肉レシピと家庭で出来るジビエ肉熟成法
  • 鹿肉のプロに聞いた金もみじへのこだわり
  • 生肉・生レバーは厳禁!E型肝炎ウイルスから身を守る
  • ジビエに、と畜検査を応用しよう

これがどれも必見なんですよ。特に嬉しいのが一般のハンターでもできることが多いということ。最上級の設備を持った食肉処理施設でしか出来ないことではなく、普通のハンターが、日常的な狩猟生活の中で気をつけるべきことが分かるんです。

たとえば熟成ひとつとっても、家庭における熟成の問題点とその解決策が提示されています。これを読めば、「あ、こういうところを気をつければいいんだ」と気付くことがあるはずです。

わたしは自分の熟成法を振り返って見て「ああ、際どいやり方してたな」と思いましたね。たまたま腐敗させずに済んでますが、運が良かったと今では思っています。

またE型肝炎ウイルスの話題など、データに基づいたリアルな情報です。危険を煽るわけでもなく、安全だよーとムダに庇うのでもなく、淡々とデータと対策が説明されていきます。

最後のと畜検査のお話などもかなり参考になりますね。獲物を獲って内臓を抜いたとき、その内臓を目視で検査して、問題点を探すというのはとても有意義なことだと思います。ひどい病気にかかっている肉を食べて身体を壊しては意味がありませんからね。

 

とにかく狩猟者必見と言いたいです。

狩猟をやっていると周りの人から「野性の肉って大丈夫なの?」と聞かれることもあると思います。過度に心配している人がいたり、あるいはまったく無頓着で「鹿刺し食おうぜ」と言い出す人がいたり……。そういう時に危険を煽るのでも、安全神話を謳うのでもなく、正しい情報を提示できるようになりたいと思っていたので、その第一歩としてとっても有意義な情報だったと思っています。

 

犬に興味がある人も是非

この雑誌は全体的に(過去の号も含め)犬の話題が豊富です。

今号でも猟犬の育て方であったり、名犬の紹介、あるいは犬を使った猟の実際を語る記事もあります。わたしのように犬なしでやっているハンターとしては、普段見ない世界のことなので、読んでいてうらやましさでため息が出るような記事もあります。

いきなりですが……オシャレな雑誌ではないです。

そのかわり猟の現実を語る傾向が強いように感じました。

『猪猟における止め場の対処 絡み止め編』という記事の最後でこんなことが語られています。

猟の世界は、人も犬も山に入ってナンボ、口や文章やネットの世界で猟師を気取っても経験を積むことはできない。様々な場面で判断と選択と決断が瞬時に要求され、それを繰り返し続けるのが猟である。(中略)自らの足で山に入り、経験を積み重ね、それを続けていくのが猟師への道である。

まさに! って感じです。いや、入口はネットでもなんでもいいと思うんですが、結局は1度でも多く山を歩くことが大事。言葉にできないような、ネットでは書けないような猟の技術ってのがあるんですよね。

ベテランのハンターなんか、年中山を歩いています。下手すりゃ毎日山に入ります。

仕事の都合でなかなかそうもいかない人も多いかもしれませんが、少しでもそれを目指して、時間が合ったら山に行って研究するというのも、楽しいと思います。

もうすぐ猟期が終わりますが、終わってもやることはたくさんあるってわけです。

——なんてことを感じさせる雑誌でした。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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