なぜか否定的に言われることがある単独猟のことを考える
これは猟を始める前から持っていた疑問です。
また、猟を始めた今となっても同じ疑問を持っています。
単独猟を目の敵にしたり、「まずは巻狩の猟隊で下積みをしないと」といきなり単独でやることを止める人が多い印象を持っています。
自分なりに単独猟について考えてみたいと思います。1つの記事で書ききれる気がしないのですが、、、
野良ハンターとさえ言う人がいる
猟隊に属すことなく山で単独猟をやる人のことを “野良ハンター” と呼んで揶揄する記事がありました(こちら)。
この記事の内容や野良ハンターという言葉に納得していませんが、それはともかくとしても、こうした言葉が生まれるくらい、単独で山に入るハンターを毛嫌いする人がいるというのは受け止めておかないといけませんね。
(ちなみに、もし猟隊に属さないハンターを野良ハンターと呼ぶならば、今あっちこっちで勧められているエアライフル猟など、まさに野良ハンターを増産しているとしか思えないのですが……。いや、わたしは野良ハンターだなんて思っていませんよ)
ちなみに野良ハンターという記述があった記事に対しては納得できないのですが、ブログ自体は狩猟に興味を持ったときにお世話になったもので、感謝もしているし、むしろ好きなんです。分かりやすいし、適度にデフォルメされているので、取っつきやすい。そのデフォルメの過程で野良ハンターという言葉が生まれてしまったのでしょうか? う〜ん。
また、この記事を訂正して欲しいとか、戦いたいってこともでないです。むしろこういう意見は氷山の一角で、こう考えている人が一定数いるという現実として受け止めました。
いきなり単独猟なんて甘いよ
「いきなり単独猟なんて甘いよ」とは、とある銃砲店の店主の言葉でした。
この言葉はいまだに心の中に残っていて、いつも考えさせられます。愚痴っているのではなく、「いきなり単独猟が甘い」という言葉の意味がわたしなりに分かる気がするからこそ、どうして「甘いと思う理由」を具体的に説明し、それをクリアするための道筋を示す人がいないのだろう? とモヤモヤするのです。
このことはいつか別の記事に書いてみるつもりですが、簡単に言えば「単独(大物)猟」にはいろんな技術が要求されます。パッと思いつくだけでも……
- (安全な)山歩きの技術
- 応急処置
- 地図読み・ナビゲーション
- ビバーク(遭難時の対策)
- 安全な鉄砲の取り扱い
- 安全な猟の仕方
- アニマルトラッキング
- 射撃の技術
- 解体の技術
- 肉処理の技術
すべてを完璧に身につけないといけないとはまったく思いませんし、そんな人はそうそういないと思います。しかし少なくとも自分の技量を理解して取り組む必要はあるでしょう。
たとえば地図読みの技術に自信がなければ、GPSを活用して、道迷いのリスクを軽減すればいい。
あるいは遭難などの対策に自信がなければ、あまり山奥に入らないとか、夏のうちにその山に通い詰めて、その山に慣れておくのもいい。
何か不安があれば獲物がいても撃たなきゃいい。
恐らく「いきなり単独猟は甘いよ」と仰る人は技術がない人を認めない! という気持ちがあるのか、そういう人が事故を起こして狩猟業界全体の評価を下げることを危惧しているのでしょう。
そういう気持ちが「甘いよ」とか「野良ハンター」って言葉に見え隠れしているような気がします。
でも、ならば、そういうことを筋道を立てて説明してあげればいいのに……。そうしたらどういう準備をすればいいのか、気付く人も多いだろうに。
まずは巻狩で……
「まずは巻狩で」という意見は分からないわけじゃないんです。っていうかよく分かる。巻狩に行くと猟のイロハを学べるし、先輩方の知見をかなり頂くことができます。
わたしもじつは巻狩から始めています(両隊の意向で、その内容はあまりブログに書いていないだけです)。
そこで学ぶことは多いです。注意点も分かるし、なにより猟の雰囲気が分かる。
でも、何年も巻狩をやらないと単独で猟をやってはいけないとも思いません。うまく両方を平行してやってもいいと思います。
危ないのは単独ハンターだけか?
わたしは「単独ハンターはみんな思慮深い謙虚で安全なハンターばかりだ!」と言うつもりはありません。と、同時に「グループに属したハンターはルールを守った尊敬できる人ばかりだ」とも思いません。どちらにも尊敬できる人がいて、どちらにも危険なハンターがいます。
単独ハンターだけを指差して、「危険だ」と語るのはやっぱりおかしいと思いますね。
自分と違う人を認めないと
正直な話、巻狩をやる人も、単独でやる人も、お互いを貶す必要なんてないと思うんです。
どっちもおもしろい猟だと思うし、それぞれ魅力がある。わたしは巻狩の猟隊にも参加しています。あれはあれでおもしろい。でもわたしにとっては単独の方がさらにおもしろい。
狩猟って、みんな「おもしろい」と思ってやっているはずでしょう? 嫌で嫌で仕方がないけど、社会的な責任だからってなモチベーションでやっている人って多くないと思います。
たくさんの仲間と取り組むのが好きな人、犬とパートナーを組んで取り組むのが好きな人、静かに単独でやるのが好きな人、気の合う2〜3人の仲間とやるのが好きな人、じっくりわなで獲るのが好きな人……。いろんな人がいますし、それでいいじゃないですか。
毛鉤釣りを始めようとしている人に、「まずはエサ釣りから」と言っても、、ねェ。
とはいえ思うのはメンターの存在価値
ここまで書いた内容から分かると思いますが、わたしのスタンスは
「ちゃんと準備をして、安全に取り組めるなら、最初から単独猟でいいんじゃない?」
って感じです。
でも、願わくば探した方がいいと思うのはメンターの存在。メンターとは「良き指導者。優れた助言者。恩師。(大辞林)」という意味。
猟隊に入るかどうかは抜きにして、「こういうときはどうすれば?」と相談できる人。困ったときに相談できる人。猟のアドバイスをしてくれる人。そういう人が身の回りにいるとずいぶんやりやすくなると思う。ちゃんと一緒に考えてくれる人。
そういう人がいるといいと思います。わたしの場合は父でした。鳥撃ちなので、大物猟のノウハウは教えてもらえませんでしたが、安全に猟をするためのイロハは教えてもらったし、鉄砲の取り扱いなども教えてくれました。
「ま、獲れなくても良いんだから、ゆっくり獲物を観察するつもりで行きな」
みたいなことを言ってくれましたね。
またアメリカの例
アメリカでは単独も普通のことですが、同時にメンター的な存在の人と一緒に行くことも普通です。
(アメリカを例にするのは向こうに親戚がいて、ハンターなので、いろいろ情報が入ってくるからです)
たとえば10才の私の従兄弟が、アメリカでシカを獲りました。——と言うと
「アメリカは銃社会だから、規制がゆるゆるだな」
と思う人もいるかもしれませんが、ちょっと早計です。アメリカの銃規制は確かにゆるいですが、狩猟は逆に日本よりキツい印象です。徹底的に動物の管理をしています。獲っていい頭数も厳密で、「自由に獲り放題」ってわけじゃないんです。いわゆる日本で言う県別の狩猟登録が向こうにもあり、その登録時に「君はシカを10頭ね」と頭数も含めて許可をもらうのです。
さて、10才の従兄弟の話に戻ります。
10才だと1人での猟はできないそうです。詳しく聞いていませんが、狩猟経験者と同行していればOKという状態。つまり車で言う仮免に近い形式です。親がハンターでしたので、親と同行して、みごとにシカを仕留めた、というわけ。
これは子どもの例ですが、猟は「まずはメンターと」という考えが垣間見えますね。
話が散弾のように広がって……
すいませんね。話が広がっていってしまいました。そう、まるで散弾のように……。
何が言いたいかというと、「単独猟を志す人のための道筋」ってのが、今は分かりにくいのかもしれないなということ。
みんな模索模索でやっている印象。わたしもそうです。自分のやり方がいいのか、悪いのか……。
とにかく単独か巻狩かの前に、初心者なのは間違いのない事実なので、謙虚に取り組むしかない。
Twitterを通していろんな先輩ハンターの声を聞けたのは本当にありがたいと思いましたね。単独ハンターが何に気をつけているか? 巻狩のハンターが単独ハンターに対してどう思っているか? 何を迷惑に感じているか? そういうツイートを見て「我が身を正す」といいますか、自分の振る舞いを考えるきっかけになりました。
わたしは単独猟ってとっても魅力的だと思っています。多くの人が魅力的だと思っているとも思っています。エアライフルの流行もそういう面があるのではないでしょうか? 静かに、人に迷惑をかけず猟に取り組みたいという気持ちとエアライフルって相性がいい気がします(やったことないけど)。
非難されないように、誰にも見られていない猟だからこそ、自分を律して取り組みたいものです。
野良ハンターと言われないように。
また、おもしろいと思ったらこちらをクリックしていただけると、ランキングが上がります。応援のつもりでお願いします。
ブログ村へ