手のひらサイズの冒険論:ぼくは冒険的行為が好きなんだと思う

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冒険と聞いて何を思い浮かべるだろう?

南極点単独無補給踏破とか、K2北壁登頂とか、気球で世界一周とか、そういう感じのいかにも難しそうなヤツを思い浮かべるだろうと思う。

もちろんそれが正しいのだけど、もっと手近なところに冒険的行為はあると思う。

手のひらサイズの冒険

過去に「手のひらサイズの冒険」という言葉を使ったことがある。

人類未踏の地に立つことも冒険だが、すでに誰かが立った場所に、別のルートから、あるいは別の方法でアプローチするのも冒険だ。
さらに言えば、人類とかそんな大袈裟なことを抜きにして、「自分が立ったことがない場所に立つこと」も冒険だと思う。自分未踏の地。
手のひらサイズの冒険。
テンカラしながら雨の渓流探索

ぼくはこの言葉がとても好きで、大事にしている。ぼくにとって山で遊ぶという行為は何らかの形で「手のひらサイズの冒険」だと思っているし、いつもどこかに冒険的要素を持つように意識している。

 

手のひらサイズの冒険たるもの

 

なにをすれば「手のひらサイズの冒険」なのだろう?

別にかしこまった定義なんてない。なにしろ誰のためでもない、自分のためだけにやることなのだから、社会的な定義なんて必要ないだろう。でも、最先端の『冒険』を参考に考えるのが自然だと思う。

わざわざかしこまって考えてみよう。

 

1.未到の地へ行く

人類にとってもっとも分かりやすい『冒険』と言えば、誰も行ったことがない人類未到の地を踏むこと。これが冒険の原点なんじゃないかな。

手のひらサイズの冒険となると、「人類未到」ではなく「自分未踏」くらいの感覚になる。自分が行ったことがない場所に行くことはそれ自体が冒険だ。

さらに、ぼく個人の価値観としては「ルートが確立されていない」という条件も重要。登山道がガッチリ決まってる所じゃなくて、自分でルートを決めていく要素があった方が冒険感が強く、おもしろくなる。

 

2.ルートの難易度を上げる、行ったことがないルートを選ぶ

同じ山を登るとしても、ルート次第で難易度はまったく違う。

たとえば最初は1番簡単なルートを選んで登り、次回はあえて別ルートから攻めれば、同じ山で2度も冒険を楽しめる。

 

3.道具や手法に制限を設ける

高地に行く本当の冒険家だと「無酸素」だとか「単独」という冠がつくと、より高度な冒険だと言われるようになる。

ほかにも服部文祥さんのサバイバル登山のように「食料・燃料を現地調達」することで、みんなが登る山でも一気に冒険になることもある。

あるいはあえて極夜(1日中日が昇らない状態。白夜の逆)の中を4ヶ月もかけて歩くという冒険もある。

昔は「人類未到の地に行けば冒険」だったはずだが、未到の地が少ない現代では、歩き方や道具に、あえて制限を設けることで『冒険が成立する』という面がある。この辺りの話に興味があったら、こちらの本がオススメだ。

 

さて、『手のひらサイズの冒険』的に考えると、たとえば「昼間登った山を夜に登る」なんてこともありえるかもしれない。GPSに頼って登った場所を地図とコンパスだけで登るのもいい。服部文祥さんのように食料を現地調達するのもおもしろい。

 

ぼくは冒険的行為が好きなんだと思う

ぼくは決して冒険家ではない。言うまでもない。

これからも冒険家になることは……まぁ、たぶん、きっと、恐らくはないのだろう。

でも、冒険的感覚はとても好きだ。たとえば町でも「この細い路地はどこにつながるんだろう? 確かめてみよう」と知らない道を歩き、それがどこに繋がるか分かったとき、小さな感動があったりする。

狩猟では登山道のない場所を歩く。もちろん獲物を探して歩くのだけど、ときどき「この名もない山の頂点に行こう」と、狩猟モードから冒険モードに変わるときがある。渓流の水が流れ出す場所を見つけるためにひたすら沢を登ったこともある。

もちろん狩猟で山に入るときは獲物を獲るために歩いているわけで、それを疎かにすることはないのだけど、心のどこかに冒険的要素を楽しむ自分がいるのにも気づいている。そして、その「手のひらサイズの冒険」の中で獲った獲物に喜びを感じているのかもしれない、とさえ思う。

たとえば猟場の中に整備された登山道があったとしても、そこを歩きながら獲ることにあまり魅力は感じない。途中でそういう場所を歩くこともあるかもしれないが、許される限り誰かが決めたルートではなく、自分が歩こうと思った場所に足を置きたい。

 

前から言っているのだけど、「獲物が獲れればなんでもOK」と思ったことがない。獲るプロセスも重要なのだ。たとえばぼくが駆除を最優先するハンターならば、こんな自己満足のプロセスなんかより、より効率よく獲ることだけが重要なはずだけど、そこまで割り切れない自分がいる。

 

次の猟期にGPSを使わないこと

次の猟期に考えていることが1つある。それは「GPSを使わない」ということ。

たとえば旅行をするとき、カーナビとgoogleマップを駆使して、1度も迷わずに行動する人が多いと思う。そうやって合理的になった結果おもしろくなったかと言えば、そうでもないんじゃないかな、と思うンだ。道に迷った結果、すごい景色の場所を見つけちゃうことがあるわけだ。

そんなことを考えた結果、山でのメインのナビツールとして「GPS系ツールを使わない」ことにした。未来永劫使わないという意味ではなく、とりあえず、使わずに猟期を迎えてみる。GPSナシで猟をやった結果、自分がどんなことを思うのか知りたい。

おもしろいと思うのか。つまらないと思うのか。めんどくさいと思うのか。

その結果自分がどうするのか? またGPSに戻るか? 地図とコンパスに落ち着くか?

昔は地図とコンパスだけでナビゲーションしていたので、基本的な技術は備えているつもり。だけど、まぁどうなることやら……。「手のひらサイズの冒険家」として、バックアップのGPSは携行する(スマホがその機能を持つ)つもりだけどね。本当の冒険家なら、そんなバックアップしないんだろうけどね、そのあたりが手のひらサイズたる所以なのだよ。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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