猟場を広げることを優先して獲物を獲らない狩猟
北海道の猟期は(地域によるが)10月1日から。うちもそう。
北海道は猟期が長いので、全体をフラットに捉えず、時期時期で取り組み方を変えていく方が一層おもしろいのかな、と思っている。
猟期の最初はまずは探索モード。良い猟場、良いルートを開拓する。北海道に来て2年目なので、まだ知っている山が少ない。だからこそこの探索モードが重要になってくる。今日も気持ちは100%探索モード。どうなることやら。
獲物は3分で現れる
この日は林道探検がメイン。夏の間に仕事の合間を縫って探検してきた場所だが、いかんせんすきま時間での探索なので浅い。今日はひたすら歩いて林道を奥まで探検しつつ、途中途中で山には入れそうな場所を見つけて、さらにそこを掘り下げて探検していくというのが、今日のプラン。
車が入れなくなる終点から歩き始めて3分ほどでシカの2頭群れ。探索と言いつつも、良いタイミングで、良い獲物がいれば獲るつもりで来ているので鉄砲は持っている。林道にいたシカは林道から飛び出て、撃てる場所まで逃げた挙げ句、見えていないと思っているのかジッと隠れている(つもり)。
こちらも林道を降りて、鉄砲を銃袋から出して弾は込めずに構えてみる。
「撃てないよな〜」
とわざと声に出して終わり。ぼくは基本的に1日1頭しか獲らない。2頭も3頭も持ち帰れないし、車のクーラーボックスにでも入れて山に戻ることはできるけど、焦って肉をため込むと、冷凍庫が埋まってしまう。
最近、お国の「シカを減らそう! 駆除の担い手大募集」なムードを考えると、ぼくはまったく役立たず。
山で過ごす時間を楽しんでいる部分も大きいもんで、最初の30分くらいは(必死にシカを探すくせに)撃たないことが多い。
ヒグマの……糞
北海道の山奥を1人で歩いていればヒグマの存在を気にしない瞬間はない。林道では鉄砲を出せないもので、それがゆえに余計にヒグマの存在が気になってしまう。
そんなときに見つけたのが上の写真。ヒグマの糞だ。もちろん突っつき回して食べたものを観察する。
写真を見れば分かる通り、毛が大量に混ざっている。シカの毛だろう。たぶん。周りを見渡してしまう。匂いを嗅ぎ、ヒグマの存在を探すがわからない。だいたい匂いでは分からないとも言われている。
ときにヒグマの通過跡は獣臭い臭気がするという者もいるが、それはたいていキツネの匂い(臭腺からの分泌物)か、あるいは地面などが湿気を含んで生じたかび臭さを誤認したものと思われる。
ヒグマ大全:P.038
少し歩いて、森に入ってみると今度はヒグマの爪痕らしき痕跡を発見。
シカの角の研ぎ跡はささくれが上側にできる。対してヒグマの爪痕だとささくれが下にできる(と言われている)。このあとも絵に描いたように下側にささくれ(人差し指の先)。
研ぎ跡は1つではなく、複数見つけることができた。断言はできないものの、それなりにヒグマの痕跡の濃い場所のようだ。
さらに探検を続ける。
シカの痕跡が濃くなる
これまで繰り返し書いてきたように、ぼくがいる地域の山は笹藪がものすごく濃い。あまりの藪の濃さにとても入れない場所が大半だ。それだと忍び猟にならないので、雪が積もるのを待つのだが、それだとつまらない。歩ける場所を探すのが今回の目的だ。
歩き始めて2時間弱で、まさにそういう場所を見つけた。針葉樹林帯。地形図を見るとゆるやかな下り坂だが、周りの地形と比べるはるかになだらかなエリアだ。
「これ、シカノスっぽいぞ」
関東でぼくがシカノスと呼んでいたエリアがあった。そこはいつ行ってもいくつかのシカ群れが入っているような場所で、獲物が欲しけりゃシカノスに行け、とさえ思っていた。そのあたりの話は『山のクジラを獲りたくて―単独忍び猟記』にも書いた。
方角や地形も割と似ていたが、それ以上にパッと見たときの雰囲気が「ああ、シカがいそうだよね」という場所。こういう直感は大事だ。実はこの場所は地形図を見たときに気になって印を付けていた場所だった。
歩き始めるとすぐに新しめのシカ糞。
触ってみるとわずかに温かい気がする。温かいというと大袈裟だが、冷え切ってはいないくらいの感じだ。
そこから薄い藪を超えるとメスジカが走った。すかさず構える。距離は50m(距離計で計測)。こっちを向いて棒立ち。バイタル丸見え。小さめの成獣サイズ。はっきり言って美味しい獲物だった。
しかし撃つのを躊躇した。正直、探検がすごく順調だった。この時にいた場所も含めて、良さそうな場所がいくつかあって、もっと探検したかった。ヒグマの痕跡をもっと探してみたかった。
結局、引き金は引かなかった。おそらく2〜3分はスコープ越しに睨み合いをして、ゆるやかに逃げていった。
そして同じ針葉樹林を探検していると、さらに別の1頭。その後はさらに1頭。
とりあえず、手元の地図に「シカノス?」とハテナマーク付きで記録。内心、かなり嬉しい発見だった。わりと広く歩ける場所で、シカも多い。
山でのごはん
今期、1つの目標として「ちゃんとメシを作る」というものがある。これにはこれで、自分なりの狩猟と山の哲学が合ってのことだが、それはまた別のお話。今日も、ちゃんと料理をした。
朝から延々と雨が降り続けていた。それも少なくない量だ。途中で白樺の倒木を見つけた(上の写真のお尻の下)ので、その樹皮をたっぷりと頂き、ガムテの着火剤と組み合わせて着火。すぐに火は起きた。
料理と言っても焚火台でご飯を炊きつつ、鶏もも肉とネギを焼いただけ。疲れた身体を癒すように多めの塩をかければ完成。
ちなみに料理油の代わりにチューブのバターを常に携行している。
バターは油よりもアウトドアで使いやすいと思う。それに「今日は疲れたからもっとカロリーが欲しい」ってときに、炊き上がったご飯にバターを混ぜればバターライスになる。簡単に摂取カロリーを増やせる。
鶏もも肉とネギはぼくの鉄板アウトドア飯の1つ。超好き。その魅力を語り続ける記事を書きたいくらい。
とにかくそいつらを食って満足した。
今期も良い猟期
ほんと、心底よい猟期になりそうです。
去年は「笹藪が濃くて山に入れねー」となっていましたが、今期は少しは入れる場所を見つけられて、どうやら獲物も獲れそうな感じ。
ほんと楽しみな猟期です。
また、おもしろいと思ったらこちらをクリックしていただけると、ランキングが上がります。応援のつもりでお願いします。
ブログ村へ