猟記:ヒグマに昂ぶり、シカには逃げられ、雨は土砂降り
また猟の日に雨。雨男になってしまったのかもしれない。
それも小雨かと思いきや、雷を伴う土砂降りに……。どうなることやら。
山に入るなり、ヒグマの痕跡を見つけてしまう
やってきたのは前回と同じ場所。前回はヒグマの糞に、爪の研ぎ跡を見つけたという話を書いた。
そして今日も、である。
ヒグマに関する経験値は極めて少ないのだが、先日解体したヒグマと同じくらいの大きさに感じた。その直感を信じるなら290kgということになる。根拠が薄いので大ハズレの可能性も高いが。
上の写真は後ろ足、下の写真は前足。「足跡どこ?」と思った人もいるかもしれないが、地面の石のめり込み具合を見てもらうと分かると思う。写真中央だけめり込んでるでしょ?
ヒグマの前足と後ろ足の見分け方は——
ヒトが足の裏の全面を着地したときにできるような跡はヒグマの足の跡であり、踵を浮かせて着地したときにできるような跡はヒグマの手の跡である。
ヒグマ大全
というわけなので、1枚目の写真は確実に後ろ足。二枚目の写真はやや不明瞭だけど、後ろ足の大きさと比較して、前足だと思っている。
ヒグマに関する勉強中なので、この足跡を追っていくということも脳裏に浮かんだのだけど、向かう先が開けた場所ならいざ知らず、いきなり笹藪に入り込んでおり、ここは安全を優先して方向転換。
正直怖い。
雨はやまない
最初は小雨だったものの、だんだん強くなってきている。
幸い気温は低くないし、いわゆる登山と違って高所を目指すものでもないので、いくつか注意点だけ抑えておけば過度に怯えることはない。雨具を着ているわけでもないのだが、モンベルのソフトシェルジャケットが撥水してくれるのでほとんど濡れない。
針葉樹林帯に入ると、さっそくシカらしき気配。こちらの気配に気づいていないようだったが、自然と離れていってしまい藪から出て来ることはなかった。
その後、少し離れた場所でシカに遭遇。30m弱くらいの場所に立っていたのだが、それに気づけず、走り始めてからようやく気が付いた。静かに追ったものの、距離を詰められず段々離されて終わり。
うまくいかないが、この場所は前回もシカに遭遇している場所。前回の記事の中で「シカノスっぽいぞ」と触れている場所だった。
「これ、シカノスっぽいぞ」
関東でぼくがシカノスと呼んでいたエリアがあった。そこはいつ行ってもいくつかのシカ群れが入っているような場所で、獲物が欲しけりゃシカノスに行け、とさえ思っていた。そのあたりの話は『山のクジラを獲りたくて―単独忍び猟記』にも書いた。
猟場を広げることを優先して獲物を獲らない狩猟
地図に「シカノス?」とメモしてあったのを、「エゾシカノス」と訂正。ここは間違いなく多い場所。実際に痕跡も多い。
比較的歩きやすい針葉樹林帯だが、途中途中で藪の壁がある。必ずこういうトンネルがあったりするので、そういう場所を見つけて歩けばそれほど苦戦しない。心の中で「あるこう〜あるこう〜わたしは〜げんき〜」とトトロの「さんぽ」が流れている(最近、2才の娘が保育園で覚えた曲だ)。
こういう針葉樹林帯は比較的雨も避けやすいため、長めの休憩をとることにした。
「ここが快適かな?」
と座り込んだ場所。お尻を付けようとしたら、この有り様。
シカの毛だ。この近くでシカが死んだらしい。前回の猟で見つけたヒグマの糞からそれほど離れていない。シカの毛がたっぷり含まれた糞……、そしてシカの死んだ痕跡……。それらを結びつける根拠は薄いのだけど、結びつけずにはいられない。
ここで休むのはやめることにした。
GoProで撮影しているのだけど
動画というコンテンツは好きだ。見るのも好きだけど作るのも楽しい。
じつは今期になってから、上の写真に見えるように、GoProを装着してみてる。いろいろ工夫した結果、ストレスなく使えている。獲ってきた素材も編集して、すでに公開準備までできているのだけど、じつはまだ1つも公開していない。
狩猟や鉄砲が絡む動画はどうしても躊躇してしまう。
いつも言っているのだが、たとえ違反をしていなくても、「違反に見える映像」だとか「違反じゃないことを証明できない映像」というのはあるものだ。
そういうツッコミがとても面倒なので、何度も自分で検閲するのだけど、なーーーーんとなく不安がつきまとう。
心配性なだけなんだけどね。
そのうち気持ちの整理がついたら公開するかもしれない。そのときまでは塩漬けして寝かせておく。
ヒグマの足跡を見つけたシーンだけを抜粋してみたので、興味があればどうぞ。
ヒグマの足跡を見つけたシーン。
本当は狩猟1日分を編集したんだけど、なんとなく狩猟動画って見せるのに躊躇するので、まだ非公開。この部分だけ抜粋してシェアします。
足跡を見つけた瞬間に固まり、左右を見渡してしまう自分。 pic.twitter.com/Y2ec8IPjRA
— やまくじ『山のクジラを獲りたくて』 (@yamakuji_jp) October 6, 2020
昼飯はごはんとカレーとベーコンと
土砂降りの雨の直後(まだ少し降っている)に焚火台で焚火をしなくてはならなくなった。米を炊かねばメシがないのだ。
雨の中の焚火はこれまでも何度も経験しているが、意外とすんなりできるもの。特別な技術はない。普通の手順を丁寧にやること。
- 焚き付けとなるものをいつもよりたくさん用意する(この日はダケカンバの樹皮と枯れた笹の茎をたっぷり確保)
- 小枝を山盛りに用意
- ダケカンバの樹皮に着火後、笹の茎と小枝を山盛りにする
- 上から笹の葉を置き、雨を防ぎつつ、熱をこもらせる
だいたいこれで火はつく。雨の時はバトニングで薪の中心部分を露出させるのも有効な手段だが、ダケカンバの樹皮や笹の茎、竹など油分を含んだ焚き付けがたっぷり手に入るならそっちの方が簡単。ケースバイケースだろうが、実際にはバトニングを必要とすることはあまりない。
料理とも言えないような飯。米にベーコンに温めたカレー。それだけ。できあがりの写真を撮るのを忘れた。夢中で食べた証だ。
食べ終わる頃に雨もあがり
食べ終わる頃には雨もあがり、陽射しが気持ちよくなってきたので、良さそうな場所で待ち伏せという名の日なたぼっこ。
こういう時間も好きだ。
この日は自分のミスで獲物は獲れなかったが、ヒグマの痕跡に出会えたのが本当に嬉しい。
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