キャンプを目的にするか、ほかの目的のためにキャンプするかの違い
キャンプが好きな人は多いと思います。ここでいうキャンプは広い意味でのキャンプ。キャンプ場のキャンプも、林道脇での野営も、ブッシュクラフトみたいなものも含めます。
「キャンプが趣味です」
「週末にブッシュクラフトしたいな〜」
なんて思っている人に、もしかしたら1歩だけ世界が広がるかもしれないお話です。
山での寝泊まりは本来は「手段」だった
山で寝ることは、本来は目的ではなく手段だったはずです。
たとえば車もなかった大昔——隣の村に行くのに山を越えなければならず、途中で1泊しなくてはいけなかった——というような感じ。
あるいは釣りや狩猟で山に入る人も、今なら「登山口」「入渓ポイント」まで車で行くところでしょうけど、昔だと全行程が歩きだったわけで、日帰りするよりも、山で寝泊まりしちゃった方が合理的だったでしょう。
たとえば北欧から入ってきた新しい(といっても、もう新しくない)スタイルにブッシュクラフトというキャンプスタイルがありますが、あれだって、恐らくは北欧系の山屋——山を越えて移動しなくてはいけなかったすべての人——が山で快適に過ごす為のイロハだっただろうと思います。
手段が目的になることはよくあること
というように、野営だとか、ブッシュクラフトだとかは昔は旅の手段だったはずなのが、今ではそれ自体が目的になっています。
いわゆる「キャンプ」なんてその最たるもので、車でキャンプ場に直行して、寝泊まりして、家に直帰するわけです。
こういう現象事態はなんらおかしいことでもなくて、よくあること。例えば釣りだって、昔なら釣った魚を食べる・売るのが目的だったのが、スポーツフィッシングと言って「釣るけど食わない」という、まさに釣ること自体が目的になっているわけです。
そもそもが「登山」という趣味も同じでしょう。
登山なんてもともとは移動手段だったはず。山を越えて移動することが目的だったものが、いわゆるピークハントの登山自体がスポーツ化して、目的になり、みんな楽しんでいるわけです。
だから、こういう「昔は手段だったものが、目的になる」ということはバカにすることでもないし、極めて普通のことだと思っています。
野営が手段になると深みが増す面もある
実を言うと、ぼくはキャンプを目的にしたキャンプってあまりしたことがありません。
昔はバイクに熱くなっていました。日帰りツーリングでは我慢できなくなり、1泊2泊のツーリングをやるようになっていました。最初はユースホステルなどを利用していたものの、都合のいい場所になかったり、事前予約の面倒さに嫌気が差して、キャンプするようになりました。
キャンプ場を使う事もありましたが、だいたいは山の中。林道のどん詰まりなんかにバイクを停めて、誰もいないところで野営するスタイルです。誰にも気兼ねなく、予約もせず、好きなところに寝られる自由を満喫しました。
あくまでバイクツーリングが目的だったので、バイクの荷物はそこそこに押さえたい。あんまり増えすぎると運転の楽しさが半減します。
だから最小限のテント、寝袋、銀マット、小さなガスストーブ1つ。唯一の贅沢品は小さな折りたたみのテーブルと焚火台でした。
焚火台は焚火ではなく、炭火焼きをするためのもの。山奥でひとりきりで炭火焼きの焼き肉をする贅沢と言ったらもう……。あの香ばしい香り、爆ぜる音の魅力、寒い日は炭火で湯を温め作る焼酎のお湯割り。最高でしょ。
その後、登山や渓流釣りなどにも興味を持ち、やっぱり「山の中で長く遊ぶため」に野営をするようになりました。
山を長く歩くことが目的なので自ずと荷物は少なくなります。バイク以上にシビアです。荷物が増えれば登山や釣りが辛く、つまらなくなりますからね。
テントは軽量で狭い山岳テント。あとは寝袋やマットだけ。ランタンなんて持ったことがありません。小型のヘッデンと、ロウソクを数本。そのくせ、缶ビールだけは1本持って行くわけです。で、明るいうちに缶ビールを飲み干して、その空き缶を細工してロウソク立てを作るのです。
ろうそくの明るさを最大限活かす為に観音開きのロウソク立てを作り、その明かりでどうにか読書したりもしました。
ペグの重さを削減するために、ペグはいつも現地で自作です。ナイフも重いのはイヤだったので、小さなフォールディングナイフ。ちなみにこれを愛用していました。
場所によっては焚火をすることもありました。テントじゃ重い! とタープやツエルトだけで寝泊まりすることもありました。その当時はブッシュクラフトなんて言葉は知りませんでしたが(そもそもブッシュクラフトっていう言葉が日本で広がったのはいつなんだろう?)、焚火で暖をとり、タープで寝るようなスタイルはそういう言葉以前からあったものです。
最近のブッシュクラフト系の動画を見ると「山に入って寝ることが目的」というスタイルが多いように思います。
最初に書いたとおり、手段が目的化するのは趣味の世界では普通のことなので、それを否定する気も、バカにする気もありません。普通のこと。
でも、ことキャンプに関しては「手段」として見てみると、オモシロさが増すと思うのです。
たとえば「山を長く歩くこと」が目的ならば、当然荷物は減らさなくてはいけません。「必要なものは山で現地調達する」というブッシュクラフトの信念が活きています(ブッシュクラフト目的で山に入っているのに荷物が多い人いるでしょ?)。
ランタンや重い調理道具は排除し、ギリギリに荷物を削り、テントを使わず、小さなタープだけで寝る。その最小限の荷物の中で——
「どうやったら少しでも快適になるかな」
と考えることで生まれるおもしろさがあるはずです。
大事なコトはほかに目的があること
たとえば渓流釣りを目的に野営することはあります。
釣りが目的なので、釣りの邪魔になるものは減らしたいわけですよ。
荷物を選ぶときに「あー、これを持って行ったら寝るときは快適だけど、行動中は邪魔くさいぞ」って。
いつだってその戦いなんです。寝るときの快適さと行動するときの快適さ。
キャンプやブッシュクラフトが目的ならば、車を横付けして、荷物を下ろすだけなんで、別に荷物が増えても何にも問題ないけど、日中は行動するならばそうはいかないわけ。その葛藤の中におもしろさがあるわけです。
もし今、キャンプやブッシュクラフトが趣味の人がいたら、その趣味と別の行為を合体させて、キャンプを「寝る手段」として活かしたら、また違うおもしろさがあると思うんです。
たとえば「自転車で長旅するためのキャンプ」とか、「バイクツーリングを続けるためのキャンプ」とか。
僕の場合で言えば、釣りや狩猟を目的にした野営とか。
山で寝泊まりする技術って、じつはすごい便利で高い技術が求められるんです。それを持っているなら、ぜひ活かして、ほかの遊びにも展開していったらいいと——ぼくは思うのです。
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