書評 『マタギ——狩人の記録』 マタギ系書籍でイチオシ!

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このブログで何冊もマタギ系の書籍を紹介してきましたが、今日の1冊はその中でもイチオシの戸川幸夫さんの著作になります。

戸川幸夫さんをご存じでしょうか?

戸川幸夫さんをご存じですか?

『高安犬物語』で直木賞を受賞した小説家です。受賞作はもちろん、ほかにも動物系の小説を多数発表されており、《動物文学》というジャンルを確立した作家として有名です。

そんな動物に興味を持った著者は、必然とも言える流れで、マタギにも興味を持ったようです。そこで発表されたのが『マタギ』です。

この本は昭和37年に発表され、ルポルタージュ形式で書かれています。

約50年前に書かれた著作ということで、最近書かれたマタギ系の本と比べると、やはりひと味違います。マタギと呼ばれる人々も今より多く、今では消えてしまったであろう文化の数々がまだギリギリ残っている時代でした。

今の時代の本ならば「~~という文化が昔はあったが、今はない」とか「今では○○さんだけがこの文化を守っている」と書かれるような事柄が、戸川幸夫さんの著作では「だいぶ少なくなってきているが、まだ~~の文化は生きている」という言いかたになります

マタギ宿!

たとえばマタギ宿の話がとてもおもしろい。

マタギは猟期になると、自分の村を出て、遠くの山で狩りをすることがあります。当然、その土地の宿に泊めてもらうのですが、どこでも自由に泊めてもらえるわけではありませんでした。

まずその土地のマタギに許可を取り、決まった宿にだけ泊まります。その宿を「マタギ宿」と呼ぶのです。

こんな文化、もう残っていません。しかし、戸川幸夫さんが宮城県の七ガ宿のマタギ宿に泊まったときのやりとりを見ると、この頃はまだマタギ宿の片鱗というか、その心が生きていたことがうかがえるのです。

今は旅館業ではなく駄菓子などを売っていた。これがマタギ宿だった。その家の内儀はわたしの姿を靴の先から帽子までジロジロと観察した挙げ句に云った。
「嫌んだァ、おらぁマタギの人だちだら扱い方わかってるンけんどもよぅ、東京の人だバ、何していいかわからねもン、ほかサ行ってけろてバ」
(中略)
マタギ宿にただの旅の人を泊めては山神様にすまねえとも云った。

とまぁ、マタギではない戸川幸夫さんを泊めるのを渋ったのです。しかしほかに泊まるところもない。そのとき、戸川幸夫さんと同行していたマタギのシカリ(頭領)がこうフォローしました。

「この人はマタギと同じだ。山言葉も知っているし、山の作法も心得てなさるだから」

こうして、ようやく泊まることを許されたのです。この出来事が昭和30年。約60年前。決して遠い昔の話ではないンです。この宿にしてもすでに旅館業は営んでいないとはいえ、その心は生きていたエピソードでしょう。

写真が豊富

この著作。すごい枚数の写真が掲載されています。どれもこれも1960年前後のもの。そのどれもがおもしろい。文章を読まずとも、写真とキャプションだけ読んでいってもおもしろいと思えるほど、すばらしい写真のセレクションです。

わたしの中で、絶対手放さないと決めた1冊でした。

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