書評 『マタギに学ぶ登山技術』
書籍のタイトルを見たとき、買わずにはいられなかったのが、今日ご紹介する『マタギに学ぶ登山技術』です。
登山技術というよりはマタギの技術のアソート本
全体的にちょっとムリして「登山技術」に結びつけている印象はありますが、それを差し引けば、マタギの技術をおいしいとこ取りした本だとも言えます。
たとえば服装に関して、マタギの雪山での服装を紹介している章があります。そこには獣の毛皮を羽織ったマタギの姿が描かれていて、マタギに興味がある人なら興味深く読めると思います。
そしてそれを踏まえた現代の登山者に対するアドバイスとして、極めて一般的な知識——たとえば下着は化繊系かウールケーの上下セットの下着を勧めるなど、読んでいて「それマタギと関係ない!」と突っ込みたくなる箇所があるのは事実です。
とはいえ、服装のこと、食料のこと、歩き方のこと、焚き火のことなど、マタギが意識しているいろんなことを幅広く扱っていて、読んでいて「なるほどねぇ」と頷くページがたくさんありました。
焚き火の起こし方
中でも、焚き火の起こし方については丁寧に描かれています。
白神山地を歩いているときのこと、大雨で身体が冷えてきた著者。一緒に歩いていたマタギが雨の中で焚き火を起こす様子が描かれています。
雨の中でそんなに簡単に火を起こせるものなのだろうか。雨にたっぷり濡れている木や地面を見ながら首をかしげるばかりだ。
しかし、そんな疑いをよそに
予想に反して、あれよあれよという間にたきぎがバチバチと音をたてて煙が上がってきた。
という具合に、5分とかからず火をおこしてしまうのです。
その過程の細かいテクニックもちゃんと紹介されています。火をおこすときに使うべき木の種類から、その並べ方まで丁寧に。
これをそのまま「登山技術」としてマネしたい、というよりも、こうした豊富な植生の知識がマタギという人たちを支えていた、ということにわたしは強く感動を覚えるのです。
マタギという歴史を途絶えさせたくない
最近、ブッシュクラフトという名の下に、北欧の山の技術をアウトドア遊びとして取り入れようという動きがあります。わたしもYouTubeでブッシュクラフトの動画を見て楽しんでいます。
しかし心のどこかに「わざわざ北欧の技術を学ばなくても、日本にはマタギの技術があるじゃないか!」とも考えてしまいます(ブッシュクラフトを否定したいのではないのではありません。事実、わたしも楽しんでますから)。
そんなわけで、今回ご紹介したような、「マタギの技術を活用しよう」という本は応援したくなるのです。
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