書評『秋田マタギ聞書』マタギ系の資料として使いやすい1冊
すこし高い本ではありますが、マタギに興味を持ち、いろいろ知りたくなったらぜひ読みたい1冊です。
秋田マタギ聞書
秋田マタギに関する本の中でも “資料” として役に立つ1冊です。
著者である武藤鉄城氏が当時(昭和初期)のマタギ一人ひとりに話を聞き、その内容をまとめたもの。約35人分のマタギの話が掲載されています。圧倒的な情報量です。
インタビューをまとめたものなのですので、情報が散漫になっている印象を受けるかもしれません。また、ハラハラする物語とか、理路整然とした体系だったまとめ方もされていません。むしろ聞いたまんま、その通りに書き取っていった感じです。まさに「聞書」。
だから人によって少し違うことを言っていたり、同じことを少し角度を変えて何度も説明していたりします。
……、君はだれだ!?
今度はイヌ……?
——はい。
たしかにクマさんが言うとおり、いろんな人の話がざっくばらんに書かれているので、「マタギの道具のことを知りたい」とか「マタギの狩猟の方法を知りたい」という具体的に探したいものがあるときに困る。
ところが、そんなことがないんです。極めて当たり前のことなんですが、ちゃんと最後に索引がついています。たとえば “カネ餅” で索引を引くと「何ページと何ページに出てくるよ」と瞬時に分かるわけです。
しかも、実際にマタギが口にする情報だからこれ以上ない信憑性。
しかも、一人二人に聞いて書いたものではないので、いろんな人のいろんな意見を読むことができる。
しかも、、、
う……。
しかも、各マタギの住んでいる町の名前も紹介されているから、「阿仁ではこう」「打当ではこう」「玉川ではこう」ってな具合に地域ごとの違いに気付くことができたりもする。
この膨大なインタビューと索引のおかげで、この本の資料としての価値が生まれてくるのです。
で、おもしろいの?
おもしろい! どうも、マタギの人たちって経験談とか、人から聞いた昔話なんかをおもしろく話すセンスがあるようで(あるいは著者のまとめ方がいいのか?)、おもしろい話が随所に出てくる。
ささいな言い伝えのひとつですが、個人的におもしろいと感じたものは——
妻の不義 夫が山へ行ってる間に妻が他の男と悪いことなどすると、猿がその真似をして見せるものである。そういう時は獲るもんでないと云われている。
p.55 中嶋順一郎さん 田沢村玉川 昭和18年7月10日
そうそう。想像するとおもしろいでしょ?
イヌさんも口が悪いね。
エピソードてんこ盛り
こんな感じの小さな話から、クマとの大格闘のエピソードまで、大小様々なエピソードが紹介されていきます。
もちろん資料的な面も強いので、初めてマタギ系の本を読む人には勧めにくいですね。あくまでマタギ文化に興味を持って、「もっと知りたい!」と思った人にオススメしたい1冊です。
ところで……。
おわりだけどね。クマさんはこれからも登場する予定なんですか?
なんか、かっこいいっすね。
はぁ……。
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