フェールラーベンのVidda Proジャケットを1シーズン使った感想
昨年からフェールラーベン大好き人間になりまして、ズボンもジャケットもフェールラーベンを愛用し始めています。
自分なりにこのジャケットの好きなところと、弱点と、用途などを挙げていきます。
Vidda Pro Jacketはどんなもの?
綿35%・ポリ65%で作られたG-1000エコと呼ばれる素材です。この素材が特徴の大きな一端を担います。
ポケットが8つあり、公式サイトの言葉を借りれば “8つの広々としたポケットがついているのが大きな特徴で、ちょっとした遠出ではバックパックの必要がないくらいです(公式サイト)” ということになるんですが、後に説明するとおり、そんな良いことだらけではありません。ポケットには落とし穴と言いますか、万能ではないことは強調したいです。
総評をまとめると「樹林帯での活動に最適な、適度な性能のジャケット」っていう感じでしょうか。
なんか切れ味悪い褒め方ですが、ぼくはめちゃくちゃ好きです。ただ、この記事を読んだ方にはよく理解して好きになってほしいな、という願いから、こういう書き方をしています。
生地がいいよね
このジャケットの大きな特徴はG1000という生地にあると思います。
綿とポリの混合で、織り方で堅牢性を確保しており、めちゃくちゃ丈夫です。ぼくが冗談で猛獣と呼ぶアイヌ犬のイチくんと本気でじゃれあったりして、それこそ犬の爪がガリガリ当たってますが、穴ひとつ空きません。
ただ、綿ポリだけでは防水性はありません。世間の高価なアウトドア業界の流れとしては「ゴアテックスを使おう」となるわけですが、そこでフェールラーベンの答えは「オイルを入れればいいじゃないか」だったわけです。
オイルを塗り込むことで、撥水性を上げていきます。その分、通気性は下がります。たくさん塗れば撥水性アップで通気性ダウン——というトレードオフになります。
このあたりの設計思想に共感するかどうかが、このジャケットを好きになるかどうかの境目になります。
ゴアテックスの防水性と透湿性能はやっぱり凄いわけです。一方で、環境負荷も非常に高いと言われております(興味がある人はゴアテックス+PFCなどで検索してみてください。ゴアテックス回りも対策を進めているそうで、改善もあるらしいです)。ぼくは環境大臣でもないですし、活動家でもありません。「環境に悪いなんて最悪だ」と声高に叫ぶつもりはありません。だって、それを言い始めたら、環境に悪いことだらけですからね。
ただ、ぼくは違った角度から「ゴアテックスいらなくね?」と思うようになっています。少なくとも、ぼくの活動範囲ではいらないな、と。
ぼくは高所登山などをしているわけではありません。低山を這いずり回って、狩猟やら山菜を採ったり、山遊びをするだけ。突然の豪雨があれば、車に戻れば良いし、わかっていれば最初から深くは入山しません。
登山(とくに高所・長期の登山)だと防水性と通気性と軽さが求められるのに対して、狩猟だと防水性はそこそこでいいから、通気性と丈夫さを重視したいと思うようになりました。
オイルで工夫できる
ここまで書いたとおり、こいつはオイルを塗ってなんぼのジャケットです。時期によっては塗らないという選択肢もあると思います。
そういう選択ができることが強みなんですよね。
塗るとしても、塗り方に工夫ができます。
たとえば脇の下は雨では濡れないけど、汗で蒸れやすい場所です。通気性重視でぼくはほとんどオイルは塗りません。一方で肩なんかはかなりしっかり2重3重に塗ります。
場所によって塗り方を変えることで自分に最適な撥水性・通気性を追究できるおもしろさがあります。
ポケット収納はいいけど、過剰な期待は禁物
ポケットが8つあって、公式サイトには「ちょっとした遠出ではバックパックの必要がないくらいです」なんて書かれていますが、そこまで完璧じゃありません。
たとえば腹辺りのポケットは手を突っ込むようなポケットと、上から物を入れるタイプのポケットが重なっています。表側のポケットに嵩張る物を入れると、裏側のポケットは圧迫されて、手を入れるのも窮屈になります。
胸のポケットもそうです。二重になっており、その両方にたっぷりとものがはいるわけではないのです。薄い物、小さいものなら両方に入りますが、嵩張る物はどちらか一方しか入らないと思っていいです。
ゲームポケット(背嚢)でもあれば、「バックパックの必要がないくらい」と言えますが、それはありません。なので、「たっぷり入る」というイメージは持たない方がいいです。
また、現実問題として、ザックを背負うと腰ベルトやチェストベルトのせいで、大半のポケットが潰されます。現実的にはポケットにたくさん詰め込んで使うものではないと思います。
と書くとなんだかネガティブキャンペーンをしている感じですが、たしかにちょっとした外出で役立つのは事実です。たとえば犬の散歩で、犬のおやつ、うんち袋、犬用の飲み水、手袋などを持っていくのにポケットは大活躍です。それぞれの定位置を決めてやることで、アクセス性も良くて、とても使いやすい。毎朝晩の散歩でこのジャケットを着ていますが、かなりお気に入りです。
また、山で露営や長めに停滞するときなんかにも強みを発揮します。行動中は荷物はザックに入れているでしょうけど、停滞中はちょこまかと道具を使うと思います。ライター・ナイフ・あまりのロープ・カメラのバッテリー……などなど。なんか思い出せないようなちょっとした物を使うと思うんですが、そういうのをポケットに放り込んでおけば良い。
ポケットが全部いちいち広いので、入らないものはないです。
本当に便利ですよ。
ただひたすら登って降りる登山をしていると、あんまりその恩恵は感じないと思います。
防水性の現実
オイルを塗ることで撥水性アップ、という話はすでに書いたとおりですが、撥水はすれど防水ではありません。
土砂降りの中で行動し続ければじわじわっと濡れてきます。実際、何度となく土砂降りの中で行動していますが、服は水分を含んで重くなります。数時間くらいだったら中の服はあまり濡れないです。ジワッと湿るくらい?
狩猟中であれ、なんであれ、ぼくにとっては十分な性能ですが、完璧な性能ではありません。
たとえば高山の寒風吹き付けるクソ寒い稜線でビバークしなくちゃいけないなんてときに、着てたい服ではありません。そういうときはゴアテックスがいいんじゃないかな〜。
また積雪期にもすごくいいです。本当に寒い時期だと防水性能とか不要です。どうせ雪ですから払えば落ちます。
中途半端な寒さだと服の上で溶けてジワッと濡れることもありますが、まぁなんとかなります。
首回りもいい感じ
首回りの作りも好きです。
ぼくはフードが嫌いで、雨が予想されるならできるだけハットで行動したいタイプです。
横殴りの雨なら諦めてフードを被りますが、できるだけハットで行動したいです。で、そうなったときに問題は首回りです。
首や襟元から濡れてきては身体が濡れてしまいます。しかしVidda Pro Jacketは首回りがしっかり立つので、だいぶ防御してくれるんです。
樹林帯に最適な活動服
というわけで、ぼくの結論は「樹林帯での活動服」です。
森林限界を超えるなら別の選択肢があるでしょう。今は樹林帯でしか活動していないぼくとしてはかなり信頼できる相棒って感覚です。これくらい信頼できるジャケットは初めてかもしれません。
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