《質問箱》野性の肉は、個性を楽しむモノなんじゃないかなと思う

最終更新日

先日、Twitter経由でやっている質問箱にこんな質問が来ました(質問がある方はこちらへ)。

いい話題だと思うので、改めてわたしの考えを書いてみたいと思います。

質問

質問者さんから頂いた質問はこちらでした。

で、わたしの回答は——

まず、野生の肉というのは個体差がものすごく大きいです。オスとメス、若いのと年寄り、季節、食べてるエサ、仕留め方、血抜き、冷やすまでの時間などなど。だから個体によってかなり違います。あと、そもそも野生の肉の香りが無理という人もいるので、無理しないのも1つでしょう。 私は基本的に鹿肉の臭み取りに苦心したことはないです。料理で生姜やニンニクを一緒に使うくらいかな。臭いと思ったこともないですね。 むしろ解体時の処理の方に気を使いますね。

という具合。短く答えようとがんばっているので言葉足らずな部分もありますが、基本的にこの通りに考えています。

 

質問者さんは「どうやって臭みを取るか?」という質問をされていますが、そもそも論として、臭みとどう向き合うか? みたいなことが重要なのだと思って、こういう回答の仕方をしています。

 

野性の肉と家畜の肉の違い

わたしが狩猟を始めて思ったことは『スーパーの肉の安定感スゲー』でした。

たとえば、鶏もも肉が好きなのでたまに買っていましたが、いつ買っても、どこで買っても同じ味。違いと言えばわずかな重さの違いだけ。それさえ誤差のようなもので、本当に工業製品かと思う安定感です。そしてもちろんいつ食べてもおいしいわけです。

 

ところが野性の肉は違います。

獲物の性別、年齢、季節、食べてるエサによってまったく味が違ってきます。ちょっと香りが違うとかそういうレベルではなく、絶品超絶ウマイ個体もいれば、とても食べられないレベルの個体までいます。

個体の違いだけではなく、処理の違いも味に大きな違いを生みます。よく言われるのは血抜きや冷やすまでの時間。早く血を抜き、冷やした方が臭みは少ないと言われています。

でもそれだけじゃありません。

獲物がストレスを感じると肉がまずくなるとも言われているので、たとえば「撃ったけど、すぐに死ななくて30分逃げ回って、ようやく死んだ」という個体と、「ハンターの存在にも気付かず、頭を撃たれ、死んだことにも気付かなかった」という個体ではずいぶん違ってくるわけです(罠猟師の片桐邦雄さんが生け捕りして、落ち着いてから処理するのはこういう理由だったと記憶しています)。

 

これは何も肉だけの話ではなく、山菜もそうです。

スーパーで売っている野菜はかなりの安定感がありますが、山の中で山菜を採るとやはりいろんな要因でうまかったり、そうでもなかったり……。

 

違いを楽しむこと

野性の肉や山菜を食べるなら、スーパーのような安定感を望むのではなく、そういう違いを楽しむくらいの気持ちでいた方がいいと思います。もちろん獲る側の人間としてはおいしい肉にするために努力することは当然ですが、先述の通り、そもそもその個体がおいしくないことはやっぱりあります。

食べたときに「おいしい」「おいしくない」という会話だけではなく、「これは年とってる個体だから、固いのかな?次はどう料理しよう?」「これは若いから柔らかいな〜」なんて会話を楽しんだらいかがでしょうか。

また、おいしい肉ならシンプルに焼いて塩で食べればいいでしょう。でも口に合わない個体なら香草などを駆使して、食べられるようにするのも楽しみの1つだと思うし、それでも食べられないような個体もあって「ペットの餌にした」なんて話も聞きます。それもまたありでしょう。

 

安易に「臭い」という言葉を使いたくないという気持ち

これはちょっと意地みたいなものかもしれませんが、「ジビエって臭いでしょ」みたいな文脈で使われる「臭い」という言葉を使いたくない気持ちがあります。

この文脈だとまるで「スーパーの肉は臭くない」みたいだけど、正直、これは慣れだと思うんです。

たとえば妻はいわゆる「肉大好き」というタイプではないこともあり、スーパーの牛肉を臭いと感じるそうです。一方で山で獲ってきたシカは臭くないと言います。で、雄のイノシシは臭いそうです。

 

また、ここでいう「臭い」と「野性の肉独特の個性」は紙一重で、フランスのジビエ料理などはこの「個性」を楽しむという面が強いと思います。「個性的な味の肉に味の強いソースをかけて、結果的にうまくなる」という感じ? 料理人ではないので、うまく表現できませんが……。ちょっとしたシカ独特の風味を臭いと言うか、個性的と言うかの違いと言えば良いでしょうか?

だから牛豚と違う香りを差して「臭い」と言い切ってしまうのは嫌ですね。ただ「個性が違う」ってだけのことだと思っています。

 

でもね、臭いものは臭い

「臭い」と「野性の肉独特の個性」は紙一重』とは書いたものの、それでもやはり臭いときはあります。

ある香りに対して、「臭い」と感じるか「個性的」と感じるかはかなり個人差があり、人によってストライクゾーンが広い人もいれば、狭い人もいます。

臭いと感じてしまったら、それはその人にとっては臭いわけで、そういう人(冒頭の質問者さんなど)に対して「これは個性的なんだから黙って食え!」とはとても言えないわけです。

わたしはシカ肉は臭くないと思っていますが、同じ肉を食べて臭いと感じる人は確実にいるはずです。受け取り方に個人差がありますから。

 

ただ、1つ思うのは、臭い肉に出会ったときに——

「これはなんで臭いんだろう? 次は臭くない獲物を獲りたいぞ or 臭くない料理法を考えるぞ or 活用方法を考えるぞ」

なんて具合に楽しめる人は、野性の肉を長く楽しめると思うし、ただ「臭い臭い嫌だ嫌だ」と思う人は、正直、野性の肉に手を出さない方が幸せなのかもしれません。

今回の質問者さんのように「どうすれば臭みを抜けるかな?」と考えている人は、きっと長く楽しめるんじゃないかな?

 

(´-`).。oO(あと、これは小声で言っておきますが、獲ったあとの肉の処理が超いい加減なハンターもいます。そういう人からもらうと、臭いという印象が強くなるかも。信頼できる人からもらいましょうね。あるいは自分で獲るか)

個性を楽しむ

まぁ、繰り返しますが、安定したおいしい食事を求めるならスーパーの素材には勝てません。

わたしもまだまだ経験値は浅いですが、それでも獲る度に、あるいは同じ個体でも部位によって味や食感が違うので、毎回実験って感じです。

そういう違いを楽しんで「今日はこうだったなぁ」なんて思って、たまにまずかったら笑ってごまかして、楽しんじゃうしかない!

 

話は変わりますが……

わたしが質問箱を始めたのは、これから狩猟を始めたいと思った人や、興味を持った人が気軽に聞ける環境を作りたかったからです。

これからも質問には答えていきますので、何か疑問が湧いたら気軽に質問してください。分かることなら答えます。

やまくじの質問箱


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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