〈一銃一狗〉アイヌ犬のイチとヒグマがいた山を改めて歩いてみる
記事には書いていませんが、前回の猟の途中、とある林道をチラッと見ようと車を入れたところ、林道を駆けるヒグマの群れを見つけました。
子を3頭連れた、母子4頭群れでした。子を1〜2頭連れているのが一般的で、3頭以上はわりと珍しいパターンです。
安っぽい感情かもしれませんが、ぼくとしては車を走らせてる中で見つけて撃ちたいわけではないし、ましてやそれが子連れとなると、あえて信条を破って獲る獲物とも思えず、追うことはしませんでした(追えば獲れたかといえば、たぶん難しいシチュエーションだったので、どちらにせよ獲れなかったとは思っています)。
また「子連れは獲らない」と決めているわけではなく、山中で、良いシチュエーションならば獲るときは獲ると思います。ただ優先度として「できればクマは子無しを狙いたい」のが本心です。このあたりの微妙な感情については、また別の機会に……。
ともかく……1度クマがいた場所には別のクマが通る可能性もあると考え、その林道に行ってみることにしました。
新しい山域を歩くのも楽しい
わりと決まった山域を歩くことが多いので、今回のように新しい山域を歩くのは独特のおもしろさがあります。

歩き始めてしばらくして、ヒグマの足跡を見つけました。先日のヒグマの逃走ルートとはまったく別ですし、群れの気配ではないので、別の個体ですね。
新しくもないのですが、かといって “すごく古い” わけでもないので、なんとなく追うことに。
奥へ奥へと吸い込まれる
個人的には足跡を追うのは大好きです。結果的に獲物を見ることができれば最高ですが、そこまでたどり着かなくても、闇雲に歩くのに比べて達成感と満足度が段違いです。
この日の足跡は現れたり消えたりしつつ、谷の奥へ奥へと入っていきました。

全然新しくないですし、休む気配もありません。
あくまで自分の経験上ですが、谷間を抜けるときの足跡はまず休まない印象です。これは鹿も同じ。開けた谷とか、廃林道があった場所などは大変に歩きやすいのですが、同時に動物にとっては落ち着かない場所だと思うんです。たとえば高速道路みたいなものでしょうか。移動には便利だから使うんだけど、決して快適な住まいにはなり得ない——という感じ。
ということはこういう高速道路の痕跡が山に入っていって、寝場所・休み場所に向かうのを期待するわけですが、なかなかそれが大変。
というか、なかなか山に入っていかない。
「どこまで行くんだろう……」
とちょっと不安になってきますが、そのうち足跡が斜面を登っていくのを発見しました。
「さぁこれからが正念場」という感じで、気を引き締めて登っていきます。
関東での山と違って、とにかく藪だらけチシマザサ(ネマガリダケ)がびっしりなので、それがわずかに薄くなる場所を選んで縫うように歩いていきます。
これがとにかく地味で苦労ばかり。イチがちょっと前を歩いてくれるので、いきなりヒグマが現れる心配はあまりしていないのですが、それにしたって緊張感はかなりのもの。クタクタになりながらある程度まで山を登り、イチとイチャイチャタイム。

できるだけイチに山の生水を飲ませないために、先手を打って水を与えるように努力しています。北海道(に限らずですが)の水はエキノコックスに汚染されていることが多く、沸かさずに飲めば感染してしまいます。人間はもちろん、犬も感染します。
○● 症 状
一般的に は特に症状を示さないが,まれに下痢
を呈することがある。
犬のエキノコックス症
拾い食いをしないようにしつけてはいますが、まだまだ欲には勝てないので、完璧とは言えませんが、最善は尽くしています。
ちなみにエキノコックスはプラジクアンテルという薬で100%駆虫できると言われていますので、猟犬として山に放つ以上、飲ませるのが良いかもしれません。一度、獣医師さんと相談して、どういう薬をどういう時期に飲ませるか、全体的なプランを作らないといけませんね。もちろん定番のものは処置していますが、「猟犬ならでは」という薬もありそうな気がします。
斜面を登っていくと、開けた場所に出ました。ちょっと標高を上げただけですが、うっすらと雪が積もっていました。雪の上についた足跡はありませんね。残念。
おまけ:お気に入りのハットです。日本だとあまり知名度がないようですが、Tilleyという1980年創業のカナダのブランドです。そのうちレビュー的なことをしたいとは思っていますが、それはまた別の機会に。

行き帰りの車中は静か
イチには車を好きになって欲しくて、幼い頃から「車に乗ったら楽しい思いができる」ということを徹底してきました。
「車に乗って——降りたら動物病院に直行で——また車に乗って家に帰るだけ」なんて感じだと、次は乗りたくないって気分になるでしょ。だから普段から、車に乗ったら普段より美味しいおやつを与え、降りたら広くて楽しい散歩スポットで、タップリ遊んでもらえる、という経験をさせてきました。動物病院に行くときもその前に楽しい散歩を挟んだりして、とにかく「車=楽しい」と徹底しました。
おかげで、いまはすんなり乗りますし、乗ってからも穏やかなものです。
最初の頃は不安そうでしたけどね。
むしろ疲れていることもあって、「降りたくない」って抵抗することもあります笑
さあさあイチよ、次の猟ではクマに出会えるといいね。
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