〈一銃一狗〉廃林道でヒグマの足跡を追う
廃林道はこの時期の鉄板ルートになります。
なにしろ山はチシマザサで覆われています。チシマザサは人の背丈を超えるほど成長し、太く、しかも山一面に密生するため、はっきり言ってフラフラと藪漕ぎできるような状況ではありません。
となると少しは開けたところを繋いで歩くことになりますが、その始点となるのが廃林道です。
昔林道だったところは藪も薄く、通りやすくなっています。当然、動物も利用しており、ほぼ確実に廃林道=けもの道になっています。ヒグマも同様。ぼくはまずこの手の廃林道から探ることが多いです。
というわけで、廃林道で足跡を追った、ある日の猟の記録です。
いきなりヒグマの足跡!
その場所はある林道の終点から短い藪漕ぎをしてたどり着く旧作業道のような場所です。
その作業道らしき道は、他のどこの道にも繋がっていません。おそらく昔は繋がっていたんでしょうけど、すでに道の両端は完全な森+藪になっており、パッと見では通れる感じはしません。その藪を「エイっ!」と抜けると、秘密の道にたどり着きます。
この場所はGoogleの衛星写真で見つけました。「ここ、道っぽいけど、どこかから入れないかな?」と模索し、見つけた秘密の場所です。
その場所に付くなりいきなり足跡(上記写真)に出会います。踏まれていない枯葉が乗っているので「つい今」ってことはないでしょうけれど、かといって古いものでもありません。喜び勇んで追うことにしました。
イチが横道にそれる
廃林道は足跡がつきやすい地質ではなく、ときどきハッキリと痕跡を残しつつも、その間は「足跡に見ようと思えば見える」という際どい痕跡を追っていました。
正直わからない部分が多かったものの「きっとヒグマだってこの歩きやすい廃林道を行くはず」と道に沿って歩いていたんですが、イチが突然、横の斜面を登っていきます。
普段はイチも一番歩きやすいルートを進むので、何か匂いでもあるのかな、としばらくついていきますが、ヒグマの痕跡は見つからず、その代わりオスジカが一頭。
「シカはいいんだよ!」と心の中で活を入れて、ヒグマのルートに戻ります。このパターンが非常に多いです。
ヒグマの足跡に興奮
ヒグマを獲りたい、というのは紛れもない事実なんですが、そもそも山を歩いていてヒグマの気配を感じると、それだけで嬉しくなってしまいます。だから糞や足跡などハッキリとした痕跡を見つけると、本当に嬉しくて、それだけで満足しちゃうほどです(よくないね)。
上の写真は前足と後ろ足がはっきり見えますね。後ろにあるのが前足です。
上の写真には爪痕がこれでもかってくらいハッキリ映っています。クマは爪を引っ込めるわけではないんですが、足跡には残らないことが多いです。歩くときはフワッフワッと音をたてないように、爪がつかないようにしているのかも?
これを見ると大きさがわかりますかね? ぼくの小指の先から親指の先までが19cmくらいです。足跡を見ると、それほど馬鹿でかいわけではありませんね。パッと見で15cmくらいでしょうか(適当ですいません)。
ヒグマの足は横幅が15cmを越えるとオスであると言われています。
門 崎 允 昭 (森林保護 No.255、1996年掲載)
「分かること」
1,ヒグマの手足の横幅(足跡も同じ)が、9 cm以下は一歳未満である。
2,ヒグマの手足の横幅(足跡も同じ)が、15 cm以上は雄である。雌の手足の横幅は最大でも14.5cmである。
3,爪を除く手足の縦幅が22cm以上は雄である。
ヒグマの足跡から年齢や性別が分かるか
足跡の大きさから性別の推測は可能とはいえ、足跡の大きさと身体の大きさは比例しない、と言われています(ヒグマ大全)。だからこれを見て、一概に身体が大きいとか小さいとかは言えないようです。
今回のが「パッと見で15cmくらい」ということで、オスともメスとも言えない感じですね。だからちゃんと測らないといけないんですよ。この記事を書きながら、今後は必ず測れるものを持って行こう、と決意した次第です。
でも、足跡を見ながら、こんなことを考えるのがおもしろいです。歩幅なんかもちゃんと測ったら、そこから読み取れる情報は多そうです。
ちゃんと休むこと
猟犬の飼い主として感じている責任の1つが「適度な休憩をとらせること」だったりします。
イチはまだ生後9ヶ月。身体こそ成犬なみになってきていますが、中身は子どもです。山に行くとはしゃいじゃって、あっちへダッシュ、こっちへダッシュといった無駄な動きが増えがちです。そのせいもあって、やっぱり疲れ切っちゃうんですよね。
猟の後半になると、疲れて無駄な動きが減り、「帰ろうよ」という素振りを見せ始めます。これがかなり露骨で、車がある方向に勝手に進んでいき、「はやくおいでよ」といわんばかりに振り返ります。ぼくが帰る素振り見せず、別の方向に進もうとすると、ちゃんとついていきますが、わざとぼくの前に出て、クルンと向きを変え「こっちだよ」とでも言うように、車に向かって行きます。
とまぁ、可愛いといえば可愛いんですが、本人は疲れているわけで、かわいそうでもあるんです。
なので、意識的に猟の途中で休憩をとらせるように心がけています。
座って、一緒にくっついて15分くらいだらだらします。最初の頃は「もっと行こうよ」とガツガツしていましたが、最近は少しは休み上手になってきたかな。
ヒグマの痕跡は藪に消え……
消えたり現れたりする足跡をひたすら追っていましたが、そのうち足跡は消えてしまいました。
問題はどこで道をそれたのか、です。
最後に見つけた足跡まで戻り、慎重に地面を見ながら「らしき痕跡」を探します。そしてどこかでそれた場所がないか、廃林道の左右をよく見ていきます。
延々とそれをやっていましたが、確信を持って「ここだ」と思える場所を見つけられず、わずかに「もしかしてこっちかな」と思う場所に入っていきます。
こういう場所って足跡がはっきりしないんで、なんとも言えず、それにしてもあまりに痕跡が見当たらないので、読み違えたなーというのがぼくの感触です。
どんどんと藪が増えていき、終始藪漕ぎ状態。どこにいてもおかしくないけど、どこにもいない。
ヒグマよ、どこにいるのだ。
ああ疲れた
ヒグマ猟だとどうしてもいつも汚れます。
シカ猟だと、こんな藪漕ぎしたり、汚れるルートを選ばずとも、歩きやすいところを歩いていれば、そこそこ獲れますからね。あんまり無理する必要がありません。
それに対して、ヒグマ探しは偶然頼りの出会いは期待しづらいこともあり、追うとなったら、汚れても、痛くても、きつくても追わないとたどり着けません。ってかたどり着けていません。
まだまだ汚れたりない……。そういうことなんでしょうか。
難しいぞ。
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