単独猟日記:気温が上がった雪山の難しさ

最終更新日

猟に行く前の日、必ず翌日の天気をチェックします。この日はまさに二度見をしてしまう天気でした。

プラスの5度。

わたしの地域では「5度」と言ったら、「マイナス5度」を意味します。それくらい氷点下が当たり前。それがプラスの5度。0度でも暖かいというのに、プラス5度ってどうなるんだろう? 興味津々での出猟となりました。

雪が……重い……

 

スキーを履いての出猟です。いつも雪は軽く柔らかで、スキーを履いていてもフワフワーッと沈んでしまいます。沈むと板の上に雪がドサリと乗ってしまうのですが、なにしろ軽いので軽く板を上げると、またフワフワと散っていきます。

それこそドライアイスの煙の上を歩いているような気分です。普段なら……。

この日は晩から暖かく、雪が溶け始めています。路上はすでに水でビシャビシャ。山の雪はさすがになくなりませんが、溶けて固まったのか、べったりと重い雪質になっています。

これは意外と悪くないもんで、雪が締まって沈まないんです。スイスイと進みます。

登りの斜面もグイグイ登れますね。秀岳荘のスノーハイクを利用していますが、新雪に比べて後ろ向きのブレーキがしっかり効いて、驚くような斜面もまっすぐに登れます。ただ、ちょっとでも板が雪に刺さる形になると、板の上に雪が乗ってしまい、その雪がべったりと重いもんだから足を上げるのは億劫なこと億劫なこと……。

総じて言えば、めちゃくちゃ疲れました。普段の新雪の方が好きかも。

 

立ち止まると板に雪が張り付く

それでも進んでいるうちはいいんです。ちょっと水分補給に立ち止まると、たぶん板の裏の雪が溶けるんでしょう。溶けて、それが雪を吸い付けて凍ってしまい、板の裏にべったりと雪が張り付きます。しかもこれが簡単に落ちない……。

それでも少し進むうちに落ちてくれるんですけどね、立ち止まる度に足に重りをつけたような状態になります。

 

獲物はどこよ

キツネの足跡。まるでスノーボードでもやっているかのようなルートの取り方でかわいいですね。

——とまぁ、わたしにとっては新しい雪質の感覚を楽しんでいました。新しいことは楽しむのが大事ですからね。

「へ〜、立ち止まると雪がくっつくぞ」「雪重いなァ」「転ぶと痛い……」

なんて具合に何が起きても発見なので、とっても勉強になります。

 

でね、そんなことはさておき、獲物がいないのです。

いないだけならいいンです。新しい雪質に翻弄されながら歩いているので、あんまり上手にアプローチできていませんでした。だから早い段階で悟られて逃げられているかもしれないでしょ。それならそれでいいンですよ。

でも違うんです。足跡さえありません。

新しい足跡はもちろん、古いのもない。足跡はキツネばかり。雪山なので、足跡の有無は明確です。ちょっとした谷間を覗き込んで確認するも、まったくない。

 

意を決して、狙っていた奥地のポイントへ

ようやく見つけたシカの足跡。恐らく3頭分と予想。

じつは雪が深くなってきて、いつもの林道に入れなくなりました。それによってこれまでシカの遭遇率が高い場所に行けなくなってしまっていたんです。なにしろ今入れる場所からだとそれなりに遠いので……。

しかし、こうしてブラブラ散策していてもシカには出会えません。意を決してそちらの方まで足を伸ばすことにしました。

スキーの機動力を活かし、できるだけ平坦な場所をグイグイと進んでいきます。そして、狙いを付けていた場所に到着。……するとあるじゃないですか。シカの足跡が(上の写真)。

新しい足跡ではなさそうですが、この辺りのシカの行動パターンやルートを知りたかったので、しばらく追跡しました。足跡はそのうち鬱蒼とした手入れのされていない混交林に吸い込まれていきました。下草である笹藪と、左右から絡み合う小枝の壁に、とても入れず断念。しかしその痕跡が向かう方向は検討がつきました。

深く開けた谷間——“谷の大広間”とわたしが勝手に呼んでいる場所でした。

そこはぼくが前々から狙っていた場所でしたが、あまりに笹藪が多かったので、「雪が深くなったら、ここに来てみよう」と考えていました。しかしいざ雪が深くなると、林道にさえ入れず、この場所にまで来たのは今日が初めてです。

「やっぱりここか〜。でも獲っても回収が大変だなァ」
「そうは言っても、戻っても痕跡1つないんだから、獲る獲らないは抜きにしても、こっちで獲物を探してみよう」

と自問自答しつつ、このあたりを捜索しました。

 

あるある。シカの痕跡!

すると痕跡はちょこちょこ見つかりました。足跡もあれば、上の写真のようなシカの食痕も。

やっぱりいるところにはいますよね。本州でもそうでしたが、シカはけっして山にまんべんなくいるわけではなく、季節・天気などに応じて片寄った場所にいます。その場所が分かっていれば、見つけるのは難しくないですし、逆にそれを外すといくら歩いても出会いの1つもないでしょう(この日の前半のように)。

食痕のあった木下を見ると、毛がパラパラと落ちていました。必死に食べてたんだろうな。

 

このあと、対面の尾根を歩くメスジカ2頭を発見。こちらには気が付いていないものの、テクテクと尾根を歩いていました。バックストップもありましたが、やや遠めでたぶん150mくらい(目測)、すでに13時を過ぎていましたし、回収の大変さを考えて双眼鏡で眺めて終わり。

そうでなくてもゆっくりながら、1度も立ち止まらずに消えていったので撃てなかったかな。

 

思わぬご褒美……タラノキ

帰り道、本当に疲れていて、俯き気味にスキーで歩いていると、とげとげエリアに行き当たりました。

「ああーもうー邪魔だなー」

と一瞬イラッとしましたが、次の瞬間、まさに二度見。

「あ、タラノキじゃん!」

春になればタラの芽がでますね。たっくさん生えてる。春が楽しみです。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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