単独猟日記:関東ではあまりできなかった理想的な忍び猟

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先日、エゾシカを獲りました。そのときの猟が自分としてはとっても理想的でおもしろい猟でした。

その一部始終をご紹介します。

 

【重要】捕獲した獲物の写真(白黒)があります。動物の死体・血の写真が苦手な方は閲覧をお控えください。

雪が積もり行動範囲が広がってきた

すでに雪は何度も降っており、積もるところでは積もっていますが、びっしりと生えた笹藪のすべてを覆い尽くすほどにはなっていません。

ここ最近になり、ようやく場所によっては笹藪も埋まりつつあり、これまでは入る気がしなかった場所に入れるようになってきました。

パッと見では雪原って感じの所も歩くと、ズボッと刺さって、下にはびっしり笹があるような場所も多くて、歩けそうで歩けないことも。もうちょっとしたら一気に歩きやすくなりそうです。

とはいえ、前よりもかなり歩けるところが増えてきて、これまでは入ることも叶わなかったエリアに入れるようになっています。

 

気になる谷に入ってみた

この日は朝一でこれまでは入れなかった尾根筋を歩いてみましたが、めぼしい結果がありません。足跡もあるけど、やや古いし、そもそも多くもなくて、せいぜい「たまに通る」っていうくらいの場所のようでした。

そこで気分を変えてこれまで入りたかったけど入れなかった谷にいくことに(上記の写真)。

こちらは谷なんですが、とても開けており、日も入る場所。風が強いこの地域において、風が遮れるこういう場所はなかなか居心地が良さそうだと以前から思っていたんですが、かなりの笹があり、これまでは入るのを躊躇していました。

さて、入ってみるとさっそく真新しい足跡が……下の写真の赤いラインが新しい足跡のルートですね。

青い方はシカではありますが、古い(2〜3日以内?)です。新旧を判断するひとつの方法としいて、足跡そのものよりも、その周りに散らかった雪を見ると分かりやすいです。脚を上げたときに脚にくっついた雪が足跡の周りに落ちます。それらは小さい粒なので日が当たればすぐに溶けてしまうわけですが、ここの足跡ではそれが残っています。下の写真の青い線はとてもキレイであるのに対し、赤い線の足跡は散らかっているでしょ? 足跡の量も違いますが、周りにフワッと舞った雪も多いのも大きな要因です。

 

とにかく新しい足跡。恐らく3頭分のものです。小さめのが1頭と中くらいの2頭。

「これは追跡せねば」

というわけで静かに追跡開始。最初の頃は足跡が淡々としていて、寄り道している様子があります。それが100mちょっと追跡していると、やや直線的に、歩幅を広げたように見えました。

「もしかしてこちらに気が付いている?」

気付かれているとしたら不利ではありますが、言い換えればすごく近いことを意味します。それにこちらも雪と笹のせいで歩けば音がしてしまうのと同じように、向こうだって不用意に走れば音がするはず。たぶん、ちょっと警戒してペースを上げてはいるのでしょうけど、まだ全力で逃げるほどではないのだろうと想像しました。

 

そのまま追跡すること400m。足跡が2つに分かれました。2頭は小さな尾根の上へ、もう1頭はそのまま谷を進みます。一番大きな足跡が谷の奥に進んでいるので、それを追跡することにしました。

大きいのを獲りたかったのではなく、一時的に分かれたとはいえ、必ず合流するだろうと踏んだからです。合流するときに群れのリーダーの方に寄っていくんじゃないか? と想像しました。そして1番大きい足跡が群れのリーダーかもしれない、と。このあたりは根拠はありません。

ちなみにそのあたりにオシッコがありました。ちょっと力んで出ちゃったかな?

 

そして直後、尾根をソッと回り込むと、シカに追いつきました。

シカは谷のどん詰まりから、尾根に登っていました。つまり、先に尾根に上がった2頭を追う形で別ルートから尾根に上がったわけです(つまり1番大きい足跡に寄っていくという予想は外れた)。

どうやらシカはこちらに気が付いていないものの、ちょっと警戒してこちらの方角を見ています。銃を用意して構えようとすると同時に、シカが尾根に上がりきり、バックストップがない状態。逃げずに睨み合いですが、撃てないものは撃てません。

「距離はせいぜい30〜40m。悔しいぞ」

でも足跡を追跡して追いついたことが心底嬉しいですね。

シカはこちらを警戒するように足早に奥の笹藪の中に潜って姿を消しました——

 

諦めきれない

さて、こうやってバレて逃げられると諦めがちですが、まだがっつり逃げられたわけでもなさそうですので、さらに追跡することにしました。

なにしろシカが逃げ込んだのは濃い藪の中。動けば音がします。耳を澄ましても音がしないので、恐らく藪に飛び込んでからあまり移動していないのだろうと読みました。

ソーッと尾根を登り、藪の入口を覗きます。足跡が数頭分。するとちょっと先でガサゴソ音が。ジワジワ逃げています。相手が逃げているときは、こちらが音をたててもそうそうバレませんので、思い切って藪に入っていきます。

何歩か歩いてはSLLS(Stop, Listen, Look, Smellの略で、観察の基本)を繰り返し、できるだけシカに合わせて動きます。足跡がまた分かれます。1つの足跡が藪を抜けて別の谷に向かっていたので、そちらに賭け、追跡。谷を降りて、また次の尾根を登り、また次の谷を降りようとしている痕跡を見つけました。

「もしかして向こう側の尾根にいるんじゃ?」

と藪の中から出ず、笹藪の隙間から向こうの尾根を観察。すると予想的中。尾根の上の方に1頭います。その前にさらに2頭のお尻。こちらを警戒して見ていますが、わたしは藪の中にいるので、動かなければ見つかりません。

鉄砲を用意して、藪の隙間から銃口を出して狙いを合わせます。距離は35m(GPS計測)。まったく不安はありません。

付け忘れていた耳栓もして、改めて狙い込んで発砲。胸に当たり、そのまま斜面を転げ落ちました。

 

エゾシカは大きい

 

北海道はロングレンジシューティング!

なんて言われていますが、わたしの猟風だとそういうことばかりでもないですね。正直ハーフライフルの性能を活かすこともない距離での捕獲が多いようです。

動物の行動を読み、忍び寄り、捕獲する……そのプロセスをおもしろく感じます。

今回はそのプロセスがとても理想的でした。終始緊張感があり、余計なことなど考えず、足跡の動きに一喜一憂し、その変化から動物の考えを想像し、どうにか先読みしようとして、外れたり当たったり……。

関東にいたときはなかなか長い距離をトラッキングすることは難しいです。条件が良い地形であれば可能ですが、いつもいつもそうはなりません。その点、雪があるとトラッキングしやすいですね。付き場回りが基本だった関東でのスタイルに対して、もっとトラッキングに重きを置いた猟風になりそうです。

 

獲ったらハツの日

獲物を獲った日は必ずハツですね。本当はレバーも食べたいんですが、今回は当たっちゃっていたのでパス。

 

ハツは塩胡椒で焼くだけでおいしいです。わたしは1/3は塩胡椒で、残りは酒・醤油・生姜に漬けて焼きました。日本酒に合う!

 

そんなわけで、北海道に来ても楽しく猟をやれています。

もっと雪が深くなればスキーになるんだろうけど、まだそこまでは至らず。楽しみだ!


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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