書評『猟犬探偵』人情溢れるハードボイルド猟犬ストーリー
自身も狩猟家である稲見一良(いなみいつら)氏の作品は、やはり鉄砲や狩猟に関わるものが多く、やはり狩猟をやる読書家としては見逃せない作家なのです。
今日ご紹介するのは『猟犬探偵』。これがまたおもしろいんですよ。
『猟犬探偵』
猟犬探偵……そのタイトルの通り、設定は「猟犬を探す探偵の話」です。同じ主人公で書かれた連作短編になっています。いわゆるハードボイルドで探偵もの。普段はあまりハードボイルドを読まない私ですが、この作品は楽しく読めました。
さて、連作短編の1作目は主人公の竜門が猟犬を探しているシーンから始まります。
猟に出たきり帰ってこない猟犬。ハンター自身が3日間かけて探していたが見つからず、これ以上時間がかかると命に関わる、と探偵の竜門に頼るわけです。
竜門は狼やアイヌ犬に似ているらしいジョーという犬を飼っており、ジョーに匂いを拾わせて追います。
目当ての猟犬はすぐに見つかりますが、そのタイミングで依頼の電話が……。しかし、それは猟犬を探す依頼ではありませんでした。
「あなたが失踪した猟犬専門の探偵だとは十分承知してます 。その上でのお願いですが 、この少年とトナカイを探してもらいたいのです 。足手まといになるだけかも知れませんが 、わたしも手伝います 」
「ドテチン、カラチン」より
わたしはハードボイルドものはなんとなく食わず嫌いしてきたクチなのですが、この猟犬探偵を読んで「ハードボイルドおもしろい!」と気付かされましたね。
とにかく人間ドラマなんですよ。この短編集に関して言えば人間ドラマ+犬のドラマ。それもどこか哀愁漂うドラマ。
トナカイを探す1作目は、厳しい父親のもとで育てられた四男坊の話です。「馬に乗れない男は男じゃない」という哲学を持つ父親の元、3人の兄は乗れるのに、自分だけ馬に乗れない四男坊の苦悩。四男坊とトナカイをつなぐ糸。そしてその四男坊の救いの物語。
短編小説の良さは切れ味です。
短い物語の中にギュッと詰まった感情の渦が読み手に伝わってきます。
犬か猟が好きならぜひ
猟犬探偵と言いつつ、猟犬を探す話だけではないのですが、時折挟まれる猟のシーンや猟犬の魅力には惹きつけられるはずです。
それもフィクションらしいカッコいい猟の場面なんですよねー。
おすすめの一冊です。
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