獲物を撃つ前後に思うこと、感傷に浸るタイミング
狩猟をやっているといろんな考え方の人がいることに気がつきます。
同じ狩猟でも目的は違うし、目的が違えば取り組み方も違う。ざっくり言えば「環境のため・駆除のため」の人もいれば、「自給自足的な目的」の人もいるし、「趣味としての狩猟」の人もいる。さらに言えば、これらの2〜3つの目的が混ざっている人が多いのが現実かもしれません。
たとえば「レジャーとしての狩猟を楽しみつつ、そこで得られた肉を食べる自給自足的な喜びを感じている」みたいな、ね。
別にどの考え方が正しいとか間違えているとか思いません。人それぞれ狩猟との付き合い方があるということでしょう。
今日はわたしが獲物を撮る瞬間、また獲ったあとに思うことを正直に書いてみたいと思います。ほかのハンターを代表するつもりもなく、あくまで個人的な思いです。
自分の中でも狩猟に取り組む中で変わっていく部分もあるでしょう。あくまで2シーズン目を終えた初心者が、狩猟を通じてリアルに感じていることを記録したいと思います。
獲物がいた!
山を歩いています。
向こうに見慣れた鹿のシルエット。双眼鏡で確認するとメスジカ。こちらに気が付いておらず、突っ立っています。
弾を込め、腰を下ろし、座り撃ちの姿勢をとります。銃を構えて狙点を決めます。
――ヘッドショットでいけそうか……
すでに絞り始めているトリガーをさらに絞り発砲。視界が揺れ、また戻る。鹿が斜面を落ちていくのがチラリと見える。
ここまでの過程では、はっきり言って何も考えていません。
動物に対する罪悪感とか感謝の念とか、考えようがないんです。スムーズに仕留めるためにも、余計なことは考えず自分が考える1番良い撃ち方を探すだけ。姿勢、タイミング、安全性……撃つかどうかの判断も含めて、頭の中でグワーッと考えています。
動物に対する気持ちは、この時点ではほぼゼロです。
倒れていてくれ
わたしは斜面で撃つ場面が多いので、撃った獲物は下に落ちていきます。
落ちていく様子を見れば「絶対死んでる」と確信できることが多いのですが、たまに逃げるように落ちていく鹿もいて、その身体を見つけるまではとにかく「倒れていてくれ……」と祈る気持ちが強いです。
半矢はもちろんイヤですが、何十分もかけて死ぬようなのもイヤ。即死していてほしいという気持ちです。
無心からの安堵
身体を見つけると、大抵はその時点で事切れています。
すぐに腰の剣ナタを取り出して、胸元にひと突き。軽い手応えとともにドロっと血が出てくるのを確認。
身体の向きを変え血が流れやすいようにしてやります。必要に応じて心臓を押して血が抜けやすくすることも。
ここで暫しの休憩。
ここまではかなり無心です。何も考えていないというより、考える余裕がないのかもしれません。
血が流れていくのを近くに座って眺めます。鉄砲をしまったり、解体道具を準備します。
このとき初めて「ああよかった」と思いますね。
1発目で仕留めることができたことを心底嬉しく思います。
「ああよかった、ああよかった」
と何度も頭の中で呟いてるのはこのとき。
1頭獲ったら解体して帰るので、妻に「獲れたよー」と報告します。それはつまり「解体したら帰るよ」という合図。
狩猟も妻が協力してくれているからできるわけですから、その妻に「うまく獲れたよ」と伝える時はやっぱり嬉しいものです。
解体はやはり無心
解体が始まると、また無心に戻ります。
淡々と解体を進めます。ハンターじゃない人に分かりやすく例えるなら、小骨が多い魚を食べる時の心境です。無心でしょ? 綺麗に食べようと、集中して食べるでしょ? 同じです。
南無阿弥陀仏と唱えながら解体することもないし、感謝の念を思い浮かべながら解体するわけでもないです。
家族においしい肉を持ち帰れるように、自分なりに丁寧に解体をするわけです。
帰り道は少し感傷に浸る
じつはわたしが1番感傷に浸るのは帰り道。
「朝、山に入る時より、山の獲物は確実に1頭減っている。その1頭を背中に背負っているんだな」と考えちゃいます。朝は生きてた鹿やイノシシです。自分が死ぬなんて考えてもいなかったはず。それがたしかに死んで、肉になり、背中に背負っている。
山の生き物が1つ減って、それが自分の食い物になるんだな……と。人間的に言えば輪廻とでもいうのでしょうか? 食物連鎖的なことを考えます。
なぜか撃つときでも、解体するときでもなく、帰り道に考えます。
儀式的なこと
獲物を前に手を合わせることは……たまにあります。かといって必ずやるわけでもない。
でも解体中の儀式として、獲物の心臓をちょっと高いところに置いて頭を下げるということはやります。なんとなくやります。見よう見まねですが、ちょっと気持ちに整理がつくような気がします。
あと解体の最初のひと切りはナガサでやります。秋田マタギのやり方です。ただの真似ですが、気持ちのどこかで、マタギ的な心構えを忘れないようにしたいのかも。
まだまだ未熟です。
自分のやり方も確立してなくて、やるたびに変わったりもします。これからも変わっていくんでしょう。
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