『大草原の少女みゆきちゃん』羆ハンターの久保俊治氏の娘のドキュメンタリー
『大草原の少女みゆきちゃん』
久保俊治氏をご存じでしょうか。
『プロフェッショナル仕事の流儀』という番組で特集されたこともあり、かなり有名な羆ハンターです。また、『羆撃ち』という書籍も出していて、こちらも定番の狩猟本。
このブログでも紹介したことがあります→書評『羆撃ち』 ヒグマ猟で生きてきた人間の泣き顔
もちろん、ただの有名人というわけではなくて、長い年月で積み重ねてきたハンターとしての経験と知恵に溢れた方なのだろう、と番組や書籍からひしひしと感じるお方です。
さて、今日ご紹介する『大草原の少女みゆきちゃん』は、その久保俊治氏の娘のお話です。
今は娘さんも成人していますが、映像はその娘みゆきちゃんが6歳のころのお話です。生粋のハンターであり、山の中での暮しをしている久保俊治氏の娘です。そんじょそこらの生活とは違うんですよ。
感動のドキュメンタリー
この映像作品はストーリーのある物語ではありません。みゆきちゃんが小学校に入学する頃から、約1年間の密着ドキュメンタリーです。脚色や、おかしな作為がなく、季節ごとの様子をまとめた記録映像のような体裁です。
しかし見入っちゃうんですよ。目が離せません。
家は北海道の知床。小学校までは片道4Km。国道もありますが、父親である久保俊治氏の方針で娘には山道を歩かせます。
「俺たちン時は歩いたんだから……」
そういう理由で、当たり前のように歩くことが決定。
「山を歩くのと、バスで行くのどっちが良い?」と山の中で訊きます。
「バスがいい。だって速いから」
「でも、バスじゃ速いだけでなんにも見えねえだろ。歩けばシカもいるし、鳥もいるし……」
みゆきちゃんは毎日片道4Kmを1.5時間かけて歩きます。4月はまだ良いんです、歩きやすいから。夏に近づくと笹藪が深くなり、大人でも歩きたくないような様相に変わります。それでもみゆきちゃんは背丈ほどもある笹をかき分けて学校に向かうのです。
ここでちょっと感動するのは、久保俊治氏の行動です。みゆきちゃんが歩きやすいように何日もかけて、4Kmの道のりの笹をすべて刈り払うのです。
教育方針として娘に負担を強いる父ではありますが、父もかなり覚悟を持って、自分も苦労しながらサポートしていることが感じられます。
モンゴルで見た景色
わたしは夫婦で1ヶ月ほどモンゴルに滞在したことがあります。北モンゴルの田舎の家庭におじゃまして、その家のお仕事を手伝いながら過ごしました。
朝起きたら、水を汲み、ヤクの乳を搾り、家畜の糞を掃除し……とやることはたくさん。隣の家は肉眼じゃ見えないほど遠く……。外国人であるわたしたち夫婦を見に、近隣の子どもたちが馬でやってくることがありました。その子どもたちが本当に野生児なんです。
日本だったら一生懸命自転車の練習をしているような年頃の子たちが、馬に乗って走り回るんです。馬にでも乗らないと近所の家にも行けませんからね。
羊の毛を刈るのも朝飯前。そういった仕事を手伝うのは普通のことなんです。
みゆきちゃんの生活を見ていると、まさにそれなんです。
久保俊治氏は牛や馬を飼っているのですが、その世話もやります。テキトーに手伝うっていうんじゃなくて、ちゃんと仕事をしているんです。たくましいですよ。
シカの鳴き真似
一瞬だけ映るシーンなのですが、みゆきちゃんが木の上からシカの鳴き真似をするシーンがあります。
それがうまいんですよ。
モンゴルの子たちも馬の鳴き真似がうまくて、わたしなんかは馬鹿の一つ覚えで「ヒヒーン」とか言っちゃいますが、彼らはいろんなシチュエーション別に鳴き声を分けて使えるんです。
みゆきちゃんの姿を見て、やっぱり「あのモンゴルの景色と一緒だ!」と感動しました。
ある種の英才教育
現代的感覚からすると、非合理的な教育だとは思います。
登下校に合計3時間もかかり、家に帰れば家の仕事を手伝うわけで、都会の子のように勉強にだけ集中できる環境ではありません。
でもね、わたしは久保俊治氏の教育方針はある種の英才教育だと思うのです。
ただの「山遊びのプロ」みたいな意味ではなくて、「生きていくことのプロ」のような雰囲気でしょうか。別に山を歩ければ「サバイバル的シチュエーションのプロになれる」ということではないんです。
身体を動かし、手を動かし、親の生き様を見ながら生きていくのは、絶対子どものためになると思います。
目の前で馬が生まれ、牛が生まれ、シカが死に、魚を釣って食べる。都会の大人なんかより、はるかに深い死生観を持っているんじゃないかな?
最近、うちにも子どもが生まれましたが、そのお祝いとしていただいたDVDです。
これを、このタイミングでいただいたことに本当に感謝しています。妻とふたりで見て「こういう子育てがしたいもんだ」と気持ちを新たにしました。
みなさまもぜひ。本当にオススメです。
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