「狩猟で生きていけるか?」問題について考えてみる

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「狩猟で食っていけますか?」という質問を受けたことがあり、それ以来、自分でもボンヤリ考えている。自分なりの現段階での答えを書いてみます。

あくまでわたしが見聞きした周囲の情報をベースにしているので、いくらでも例外はあるでしょう。

ケース1:肉を売って生きていくという正当派猟師の道

まず考えてみたいのは山で獲った肉を売って生きていくという正当派な猟師の道。

「ひとり山に入り、獲物を獲って、その肉を売って、自分が食っていくくらいの収入が得られれば嬉しい」と思う人もいるのではないでしょうか。

わたしが「猟師」と聞いて真っ先に思い浮かべるのはこのスタイルの生き方ですが、まずよっぽどの幸運に恵まれないと難しいと思います。

ひと昔前は獲った肉を簡単に売ることはできたようです。私の知っているハンターでも「若い頃はシシ売って生計を立ててた」なんて人がいます。恐らく40〜50年前の事でしょう。

当時は獲った肉を地元の旅館組合に卸していたそうです。かなりの額で売れたようで、サラリーマンになるなんて馬鹿らしいと言っていました。

 

しかし今は獲った肉を自由に売ることはできません。細かい話は抜きにしますが、保健所の許可やら、販売の許可やらいろいろあります。解体施設を作るにもかなりの投資が必要で、大きく投資をしてしまえば、自分で獲った獲物を売るだけでは借金を返せません。

こういうスタイルの会社はいくつもありますが、簡単な商売ではないようです。

チャレンジする価値はあると思いますが、ほそぼそと獲物を獲って、ちょろっと売って、生活費を稼ぐという、いわゆる猟師ってイメージにはならないと思います。

ケース2:駆除で稼ぐ

日本は全国的に駆除が必要とされています。地域によっては1頭1万円を超える報奨金をもらえることがあるそうです。シカ1頭1.3万円って地域もあります。

「たとえば報奨金が1頭で13,000円入るとして……年間で300頭くらい獲れれば……390万円!!!! 細々となら生きていける!」

——と考える人もいると思いますが、これもいろいろ課題があります。

 

第1の課題は「単独で駆除をやれる地域は多くない」

私の周囲の地域(関東)に限って言えば、単独で駆除をやれるのは稀のようです。つまり巻狩がメイン。となると自由に出猟できるわけではなく、参加している猟隊が出猟するときだけが、獲物を獲るチャンスとなる。当然、グループで獲るのだから、報奨金も山分けだ。10人で巻狩をして、5頭獲れたら、(先ほどの例では)6.5万円。1人あたり6500円の報奨金となる。

グループ猟はサラリーマンなども参加しているので週末が主な出猟日となるわけで、年間50回くらいしか出猟できないかもしれない。毎回5頭獲れても6500*50=32.5万円。生活費にはとてもならない。だいたい毎回5頭獲れれば良いが、0のときもある。どれだけ獲れるかは地域にいる獲物の数と、グループの腕前にかかっているわけで、それで食ってくのは無理でしょう。

 

第2の課題は「そもそも単独でたくさん獲れるか?」

単独で駆除をやれる地域はある。具体的に思いつく場所は北海道。北海道では巻狩よりも単独の流し猟の方が主流で、駆除もそのスタイルが多いようです(これも地域によるので要確認)。

YouTubeなんかを見ていると、牧草地に棒立ちしているシカをガンガン獲るような映像もあります。あんなのを見ていると「1日1頭どころか、2頭3頭獲れちゃうだろ!」と思うのも無理はないし、獲れる人はそれくらい獲るそうです。

たとえば1頭1万円もらえるとすれば、1日2〜3頭獲れれば「日当2〜3万円」と言えるわけで、生活できる可能性がちらついてくるかもしれません。

ただ、これも楽じゃない。まず牧草地は私有地であり、牧草を育てている畑のような土地。誰でも自由に撃てる場所じゃないんです。その土地の所有者に許可をもらわなくてはいけません。

牧草地の所有者と密に連携をとって「いま、シカがいるよ〜」という連絡をもらえるくらいの信頼関係を築けないとコンスタントに獲物を獲るのは難しいでしょう。

もちろん、牧草地を避けて、山に入って獲物を獲ることは可能です。その場合は、ポンポンと獲れるものじゃないし、獲った獲物は持ちかえって、所定の場所に運ぶ必要があるので(地域による)、2〜3頭獲ってしまうと、運べなくなる可能性が出てきます。つまり数が獲れない。

年に100頭以上獲る人もいるので、可能性がないとは言わないが、ポンッと北海道に移住して、そこまでの猟果を得るのには時間がかかるでしょうね。

 

第3の課題は「結構コストもかかるということ」

年に300頭獲るとして(これ自体難しいけど)、報奨金を350万くらい得られるとしましょう。ギリギリ食っていける可能性はある……ように見えます。しかしコストも多いんです。

まず弾代。散弾銃の場合はサボットを使うことが多いので、市販弾だと1発500〜800円くらいになります。自分で作るという可能性はありますが、北海道では鉛弾は禁止されており、自作するのは難しいと聞きます(よく知らない)。

1発600円の弾を使うとして、300頭を獲るのに何発撃つか? 全弾必中で、すべての獲物に1発しか撃たないとしても、300発で18万円。実際には外すこともあるし、半矢にすることもあるし、止め矢を撃つこともあるだろうから、300頭を獲るのに、そうですね……600発撃つとすれば36万円。900発撃つとすれば54万円。さらにスコープ合わせも含め、射撃場での練習も必要となれば、10万円は上乗せになります。

狩猟登録やら保険なんかで数万円。

狩猟車のガソリン代……少なく見積もっても日に数百円。200回出猟して数万円から10万円台にはなるでしょうね。

狩猟車の維持費……流し猟でかなり走るし、悪路も走るとなれば修理代を含め、維持費はそれなりにかかる可能性があります。車検なんかも含めれば数十万。

ほかにもたくさんあります。装備品の買い替え、細かな経費、税金……

全部足せば、少なく見積もっても50万円は越えます。車でハデな修理が入れば100万を超えるかもしれません。あるいはもっと……。

そもそも……、300頭をコンスタントに獲れるかって問題もあるでしょう……。

簡単ではないです。

 

→この駆除費のシミュレーションを遊びで考えてみたことがあります。参考にどうぞ。

《収支シミュレーション》狩猟の駆除費だけで稼ぐとどうなる? 

ケース3:駆除系企業に雇用されてみる

じつは駆除を担う会社や団体というのは猟友会以外にもいろいろあります。

わたしが知っている会社の1つは “フォレスターズプロ”(知り合いという意味ではなく、ただ会社の存在を知っているだけ)。

リンク先の採用情報を見ると

職種A:主にシカ等の猟銃・罠による捕獲。 職種B:主にシカ等の調査、捕獲補助
職種A:18万円~24万円 職種B:18万円~22万円 (月額)

フォレスターズプロ

とある。月給20万前後ということで、年収は240万とお世辞にも多くはないが、安定的にお金をもらえるという安心感はあると思います。

少なくとも1〜2年、こういうところでお世話になって勉強させてもらうというのはありかもしれません。

おまけ:コンテンツ収入

この記事のテーマはあくまで、猟師的な生き方ができるか? という点から始まっています。そういう意味では少しズレるのだけど、狩猟に伴うコンテンツ収入とか、体験の販売という視点はありえます。

例えば私のブログも狩猟ブログなので、狩猟をコンテンツにして広告収入を得ています。そのほか、YouTubeなどでの動画配信、雑誌、書籍、講演会など、いろいろなコンテンツ収入が考えられます。

ただ、これらに関しては「できるできない」を語る必要もないかな、と思います。コンテンツが魅力的なら儲かるし、そうでなければ儲からない。ある意味では、狩猟周辺の収入源の中で最も大きくなる可能性があるかな、とも思います。魅力があれば……。

体験を売る系の商売はすでにいろんな方が始めています。非狩猟者を狩猟に同行させたり、解体体験したり、罠を見学したり……。

このあたりは可能性はあるとは思います。

やっぱり副業として考えた方が……

ケース1に書いたとおり、肉を売るだけで生きていくのはかなり厳しいと思います。

駆除の報奨金をあてにするならケース2で書いたように北海道など、自由に猟ができる場所に根を張って、地域との信頼関係を築きながら、時間をかけて猟果をあげていくのもありかもしれません。ただそれにしても初年度からがっつり稼ぐというのは難しいし、なによりその状況が長く続くとは限りません。鹿の数が適正値になれば、駆除の必要性は減ります。役所の判断1つで収入源を失ったり、報奨金が減ったりするかもしれないわけで、多大なリスクを背負っていることは忘れてはいけないと思います。

また、足をケガしてしまえば、それで収入は絶たれる……。やはりリスクは大きいですね。

 

というわけで「狩猟で食ってくことは可能か?」という問いに対するわたしの答えは「かなり難しい。短期的にがんばることは可能かもしれないが、リスクが多い。他の収入源を持って、副業として狩猟を考えるくらいが現実的じゃないか?」となります。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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