書評 『釣魚大全』色あせない363年前の釣り本

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1年ほど前に読んだ本ですが、釣り好きなら読む価値のある1冊です。

小説家である開高健が勧めていたことから、名前は知っているという人も多い『釣魚大全』。300年も前の本なのにいま読んでもおもしろい。まさに名著です。ぜひご覧あれ。

 

釣魚大全

《書籍版》

《Kindle版》

この『釣魚大全』は1653年にロンドンで刊行されました。実に363年も前のことです。

歴史の話に深入りしませんが(よく知らないので……)、当時はピューリタン革命が起きていました。イングランド・スコットランド・アイルランドで内乱が起きていたんですね。ひと言で言えば争いが絶えない、不安定な時代だったようです。

そんな中、随筆家アイザック・ウォルトンが『釣魚大全』を発表。

混沌とした時代に真っ向から抗うような、ほのぼのとした釣りの本です。当時の混乱を思うと、強いコントラストを感じられます。それほど「平和」な本です。

 

全編会話調

この本は延々と会話で紡ぐ物語です。たとえば冒頭――

【釣り師】やっと追いつきましたよ.おはようございます。あなたがご用事でウェア町の方に行かれるのではないかと思って、あなたを追いかけ、トテナム丘を急いで登ってきたのですよ。気持ちの良い、すばらしい五月の朝ですね。

【旅人】ええ、大体ご推察通りです。朝食までに、ウェア待ちの三マイル手前の……(略)

ちょっと長くなるので、延々と引用するのはやめておきましょう。主な登場人物は【釣り師】と【旅人】。【旅人】は少しだけ【釣り師】を軽蔑している節があります。それがはっきり現れるのはここ。【釣り師】が自分が釣りをすることを明かした直後のセリフです。

【旅人】ずけずけ正直に言わせてもらえば、あなたが釣り師と伺って私は少々残念に思います。というのは、多くの謹厳実直な人は釣り師を軽蔑していますし、趣味人の多くも釣り師をあざけっていますからね。

とまぁ、「他の人は釣り師を軽蔑している」という言い方ですが、結局はこの旅人も少し軽蔑しているわけです。

そしてこの『釣魚大全』は全体を通して、【釣り師】が【旅人】に釣りの魅力を伝えていく本なのです。

【旅人】は素直で、愛想のいい人間です。釣りの魅力を知るにつれ、どんどん【釣り人】のことを好きになっていき、もっと知りたいという気持ちになっていくんです。

あなたが釣り好きなら、読んでいて「そうそう、そうなんだよ。釣りはいいんだよ!」と声を大にして言いたくなることまちがいなし。

 

古くさい言い伝えがおもしろい

さすが300年前の本で、突拍子もないと思える意見がさも堂々と書かれていることも、わたしはおもしろいと思ってしまいます。

印象に残っているのはここですね――

【釣り師】パイクが産卵によって繁殖することは疑う余地もないことですが、しかし不思議なことに、今まで一匹もパイクがいなかったようなところであっても、いわゆるパイク藻と呼ばれる水草とか、他のゼラチン質の物質などから太陽熱のおかげで、ある特定の池ではパイクが発生することがありうるとゲスナーは語っています。

ちなみにゲスナー(1516~1565)はスイスの博物学者で、「植物大鑑」「植物誌」「世界文献目録」を著した人です(大辞泉より)。

というわけで、当時は比較的マジで「藻」や「ゼラチン質の物質」が太陽熱でパイクになると考えられていたようなんですね。いやはや、なんだか趣があっていいじゃないですか。

 

ぜひ冬の間にどうぞ

釣り師のみなさん、冬は釣りに行かないなんて人も多いかと思います(特に淡水専門の人)。

そんな人は週末、暖かい部屋で、ウイスキーを垂らしたコーヒーを片手に、こういう本をめくってみるのも一興ですよ。

日本の本が好みなら、開高健の釣り系の本もオススメ。それはそれで、改めてご紹介します。

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