狩猟をやるのに獣害を語る必要はないよなーという話とぼくにとっての駆除
ぼくが猟を続ける中で少しずつ強く思うようになってきていることの1つが、タイトルの通り「狩猟をやるのに獣害を語る必要はないよなー」というもの。
釣りをするのに外来魚を語る必要もないし、山菜を採るのに外来種を語る必要もないのと同じ。
なのに狩猟の世界ではどうも「獣害被害があるから狩猟をやる」という大義名分が必要になることが多いです。TV番組なんかでもそう。いろんな本でもそう。
——と言いつつも、わかるのよね。ぼくも猟を始めて最初の頃はちょっと思っていたりしました。ぼくの本でも少しだけそういうことを書いた覚えがあります。
その辺りの話をツラツラと……。
狩猟の本当の目的
要するに狩猟に対してちょっと後ろめたさを感じているから、みんなが獣害を語り、駆除を盾に狩猟を正当化するわけです。
やっぱり魚や山菜と違い、大型の哺乳類を殺めるのは心が咎める、ということなんでしょうね。その感覚はわかります。自分だって、初めての1頭を撃ったとき、やっぱり重くのしかかる感情はありました。
でも、本当の狩猟の目的を見失いたくないな、と何年か狩猟を続けた今は思います。
ぼくは自分が食べるためにやっています。世間の人が無農薬野菜やら平飼いのニワトリやら和牛やらイベリコ豚を食べたいのと同じように、「自分が獲った肉を食べたい」だけ。
もちろん、食べたいからといって絶滅危惧種を獲る気はありませんし、保護すべき地域個体群があるならば、それを尊重します。その点において「駆除しなければならないほど獲物がたくさんいて、駆除してほしいと願う人がいる」という状態は、少なくとも自分が狩猟を続けるために背中を押してくれているのは確かです。でも、それが目的ではない。
初めての1頭を撃ったとき「重くのしかかる感情があった」と書きましたが、それ以上に喜びがあった。その喜びこそ、狩猟を続ける源泉であり、そのことは今後も強調し続けたいと思うんです。
非狩猟者から言われる「獣害があるもんね」
たまにTVなどでも、リアルな知人からも言われる言葉の1つが「獣害があるもんね」というもの。
「ぼく狩猟をやってるんですよ」
「へ〜、獣害被害がひどいらしいもんね」
みたいな文脈。それを聞くたびに「違う違うソージャナイ」と早口で捲し立てたくなります。
少なくとも身近な人には「やまくじは好きでやってんのね」とちゃんと理解してほしい。そんな風に思います。みんなきっと好意で言ってくれてるんだと思うんです。理解を示してくれているんだろう、と。
狩猟の王道は……
ちょっと言葉選びが難しいし、立場が変われば答えが変わるだろうというのは承知の上で、ぼくは狩猟の王道は「肉のため、自分のために獲ること」にあると思っています。
駆除が邪道と言いたいわけじゃありません。駆除は駆除であり、狩猟とは別物だと思います。求められる知識、技術、意識が違う。
たまたま今はシカなどが増えすぎて「とにかく減らせ」という状態にありますが、もう少し適正数になる未来がやってくれば、「ただ減らすのではなく、適切な場所で、適切な手法で駆除しないと効果がない」「いや、減らす以外にもやることがあるのでは?」という感じで、いわゆる狩猟で「好きに獲る」とは違うステージになるんじゃないかな?と思います(すでに地域によってはそうなのでは?)。
アメリカでパークレンジャーなどがワイルドライフ・マネージメント(野生動物管理)に取り組んだりしますが、かといって一般の狩猟者をパークレンジャーワイルドライフレンジャーとは呼びません。ハンターはハンター。パークレンジャーはパークレンジャー。
もうぶっちゃけ言えば、駆除の人の方が社会的には偉いんですよ。尊敬する気持ちもあります。「それと一緒にしてもらっちゃー、駆除の人に失礼だー」とさえ思います。
一定の協力関係もある
で、ここまで書いて言うのもアレですが、ぼくも駆除の従事者として末席に座らせていただいておりまして、微力ながら獲ったりもします。でもこれはあくまで、駆除への協力なんだと思っています。
なんというか、狩猟者として技能を活かしたお手伝いとでもいいましょうか。駆除する人がたくさん必要だから協力する事態であって、たとえば山で遭難者が出たとき、山に慣れた人間が捜索ボランティア(有償ボランティア)として参加するみたいな感じ。そうやって捜索ボランティアに参加したとて、やっぱり山岳救助隊とは名乗らないと思うんです。
救助隊と捜索ボランティアの関係みたいに、ワイルドライフレンジャーと駆除ボランティアの関係もあった方がいいんじゃないか?みたいな。
なんかそういう関係をイメージしているので、やっぱり狩猟は狩猟、駆除は駆除、と分けて考えたいと思うんです。分けつつ協力関係にあるもの。
ぼくが狩猟をやる理由は駆除じゃなくて、自分のため。そういうこと。
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