忍び猟における双眼鏡の倍率について考える(6倍か8倍か)
ぼくは双眼鏡という道具が好きだ。
山の中で双眼鏡を覗くと、子どもの頃に見た冒険映画の主人公にでもなったような気持ちになる。
そんな双眼鏡は忍び猟の強い味方でもある。それどころか、ないと落ち着かないというくらい大事な道具。
これまでは8倍の双眼鏡を使ってきたが、故障してしまった。そこで次に手にしたのが6倍の双眼鏡だった。
山に6倍の双眼鏡を持って行き、実際にシカを見つけたりもしたので、そのときの経験を元に、自分なりに考える「双眼鏡は6倍か8倍か論」を書いてみたいと思います。
忍び猟で双眼鏡を使うわけ
ぼくの経験上、忍び猟で双眼鏡を使う場面はいくつかある。
- このあたりに獲物はいるだろうか? → 双眼鏡で一帯を眺めながら獲物を探す
- あそこにシカっぽい何かが見えるけど…… → 双眼鏡で確認
- 薄い藪の向こうで何かが動いた → 双眼鏡で確認
※3つ目の補足:双眼鏡を使うと藪の向こう側を見通すことができる。藪の向こうにピントを合わせると、肉眼ではとても識別できない藪の向こう側の様子をはっきり見える。
6倍か、8倍か、
これらの場面ごとに、有利な倍率は違ってくると思っている(厳密に言えば、山の様子によっても違うけど)。
たとえば漠然と獲物を探すとき——
倍率が低いと視野が広い分、広範囲を素早く探せる。
倍率が高いと時間はかかるが、見落としが減る
——と考えられる。個人的には「シカっぽい何かを確認するため」に双眼鏡を使うときは、6倍でも8倍でも関係ないと思ってる。まともな双眼鏡の6倍で覗いてシカかどうか判別できないなら、それはもはや撃つべきじゃないと思う(スラッグが前提なので)。
また、「薄い藪の向こうで何かが動いた」という場面については「僅差で6倍が有利かも」と仮説を持っている。遠ければ8倍が有利だが、それ以上に「藪の向こう」というそもそも見えにくい場面を観察しようとしているので、6倍の視野の広さが有利に働くのではないか、と考えている。
つまり、最初に挙げた「漠然と獲物を探すとき」に8倍が有利か、6倍が有利か、という話になる。
ぼくは8倍をずっと使ってきて不便を感じることはほとんどないのだけど、あえていえば「もっと素早く探したい」という気持ちはあった。
それが6倍に興味を持った理由だった。
良い双眼鏡の条件
人間の目は思ったよりもよくできていて、探しているものがハッキリしていれば、かなり遠くても、見えにくい状態でも、たとえ一部分しか見えなくても素早く見つけることができる。
猟を始めてすぐの頃は、やっぱりシカやイノシシといった動物を見慣れていないもんだから、探すのがワンテンポ遅かった。
しかし徐々に慣れてきて、以前に比べればずっと素早く見つけることができるようになった。あとから考えるとビックリするような距離でも、肉眼で「あれ? いまシカがいた気がする」と異変に気づき、双眼鏡で確認するような場面が増えてきた。
端的に言えば「はじめた頃よりも、低い倍率の双眼鏡で十分にシカを見つけられる気がする」という感覚を持っている。
獲物を見慣れる前は高倍率で、できるだけ丁寧に探すことを心掛けていたが、徐々に自分の目が鍛えられて、低倍率でもよくなった、ということだ。
そうなると、獲物を見つけるために必要な双眼鏡の条件バランスが変わってくる。
忍び猟に使う良い双眼鏡の条件を挙げるなら
- 遠くが大きく見えること(倍率が高め)
- はっきり・明るく見えること(明るいこと)
- 広い視野で見えること(視野広め)
- 軽いこと(軽量)
ってな感じで考えていたけど、自分の目が鍛えられてくると「1.遠くが大きく見えること」は優先度が下がるイメージだ。一方で視野が広く、軽量で、明るいレンズであることの優先度が上がる。
6倍なら対物レンズが小さくてもいい
(知っている人には当たり前の話だが)倍率を下げると、対物レンズが小さくなっても明るいままである。実際に計算してみよう。
明るさ = ひとみ径² = (対物レンズ径 ÷ 倍率)²
これが計算式になる。たとえばぼくが使っていた8×42の双眼鏡だと……
(42 ÷ 8)² = 27.56
一方で、いま試している双眼鏡は6×30なので……
(30 ÷ 6)² = 25.00
となる。わずかに8×42の方が明るいことになるが、それほど大きな差ではない。一方で、小さい分、双眼鏡自体が小さく軽くなる。
8倍がいいか、6倍がいいか
まぁ、これは結論を出すのは無粋な話題だと思っている。
好みが大きいし、突き詰めれば「どっちを使ったって、獲れる人は獲れる」という話になる。8倍だから獲れるとか、6倍だから獲れる、ってことはないと思う。
それを大前提として、これからはじめる人に勧めるなら8倍かな。やっぱりよく見るってのは大事だと思うから。でも予算の都合などで、対物レンズの小さい安いモデルを買うのであれば、いっそ倍率を落とした方がいい気もする。暗い双眼鏡は、杉林なんかで使いにくい。
というわけではじめに買うのは8×42あたりのもの。で、将来買い足すなら6×30あたりのもの。と考えるのがいい気がする。
それなら6倍にも8倍にも用途がある。うまく使い分けやすいと思う。
ちなみに8×42や6×30にこだわるのはひとみ径の大きさを意識してのことだ。細かいことはたとえばKenko Tokinaなどのページを読んでほしいみてほしいのだけど、対物レンズ径を倍率で割った数字をひとみ径と呼び、それが5mm程度あれば、薄暗い中でも双眼鏡を覗いてストレスがないと言われている。
8x42ならひとみ径は5.25mm、6×30なら5mmと、ちょうどひとみ径5mmを保ったスペックになっている。シカ撃ちをする場合、薄暗い針葉樹林帯とか、早朝・日暮れ前などの薄暗い場面での使用が少なくない。そういう大事な場面で使えるものがいいだろうと思って、この辺りのスペックを意識している。
蛇足だが、この辺りの数字上のスペックも重要だが、「安い8×42よりも、超高級な8×30の方がはるかによく見える」ということは普通にあることなので、もしお金があるなら、そうやってスペックの壁を軽々乗り越えてもいい。
6倍なら何を買うか
個人的には8×42という双眼鏡はとてもおもしろかった。とても明るく、遠くが見え、本当にいつまでも見ていたくなる双眼鏡だった。壊れなければ引き続き使ったのは間違いない(修理は高額になったので断念した)。だから8倍なら アトレックIIHR8×42WP を勧めたい。決して軽量なものではないが、見ていて楽しいとは思ったし、それが重要だと思う。
双眼鏡の故障という消極的な理由で使い始めたのが、アトレックライト 6×30 だ。こちらは仲良くさせてもらっているリロ氏のお下がり品を購入させてもらった。手に持った瞬間「軽い!」と感動した。あくまでこれまで自分が使っていたものと比べて、という話だが。
モデルとしては1つランクが落ちるので、その分だけ見え味も悪くなるが、十分に実用範囲。価格は1万円ちょっと、と安いのも嬉しい。
今後、本格的に「6倍でいこう」と決意したら、こちらのモデルを購入してグレードアップしてもいいかも、と思っている。
じつは6倍ってのはニッチなのかなんなのか、高価格帯のモデルが少ない。たとえばNikonの上級モデルやスワロフスキーやツァイスやらに6倍ってのがないようなのだ。他のメーカーなんかでも6倍というと、入門機的なものが多い。
そんな中で、上記のヒノデは6倍の上級(っぽい)機種を作っているようで、気になっている。実物を見たことがないので確信はないのだけど。
というわけで、最近、気持ちとしては6×30という双眼鏡に気持ちが傾いている。忍び猟用には6×30、車に積んでおく用に8×42なんて具合に使い分けたいな〜と思ったり。
まぁ、あれだ。双眼鏡が好きなんだ、ぼくは。
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