山で取り組む種目が変われば、“合理的” の感覚も変わってくる

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登山、釣り、狩猟、山菜狩り、里山探検など、いろんな形で山に行きます。

ぼくは考えるのが好きだから、持って行く道具の選び方や、使い方、服の選び方など「なんでもいい」と考えることはあまりありません。持っているものの範囲内で最適なモノ、合理的なモノを選ぶように心掛けています。

でも、同じ山のアクティビティでも、種目が変われば、合理的な道具も変わってくるものです。

結論を言えば「だから他人の道具を参考にするときは、やっている種目が同じかどうかを本気で考えた方がいいよ」というお話です。

ところで、その種目ってみんな同じなんでしょうか?

登山と忍び猟

登山と忍び猟はどちらも山を歩く行為です。忍び猟は歩いた末に獲物を仕留めるという違いはありますが、大半の時間は「延々と山を歩いている」と言って間違いありません。

であれば、かなり共通点がありそう——それどころかまったく同じ道具でよさそうですよね。ところが意外とそうでもない。参考になることや共通点はあるけど、まったく同じではない。

登山はグイグイと登っていくことが多いから、かなり暖まります。忍び猟でもそういう場面もありますが、でも良い場所ではかなりゆっくり進むこともあり、寒い地域だと油断するとかなり冷えます。

また、コースタイムなどを意識する登山だと、「合理性」を追求し、ハイドレーションシステムを使うこともありますね。ザックからストローを伸ばして吸う、あのシステムです。

忍び猟ではそこまで歩くことを追求する必要がないだろうと “ぼくは” 思います。少なくとも “ぼくの忍び猟” という種目においては、立ち止まって休憩するのも狩猟の一部というか、少し山を休ませて、自分の気配を殺す良い機会だと思っています。

意識してちょこちょこ立ち止まり、ゆっくり休むことで、山を不必要に荒らさない(緊張感を高めない)というやり方もあると思うので、ハイドレーションシステムが合理的だと思っていません。

 

“ぼくの○○” という種目を作ること

さて、急に “ぼくの忍び猟” という言葉を使いました。

同じ登山でも “ぼくの登山”“あなたの登山” は別の種目だと思っています。スピードを意識して、最短時間でピークハントを目指すスタイルと、草木の写真を撮りながら、「間に合わなければ頂上は諦めりゃいいや」と思って歩くスタイルとでは、求められる合理性ってまったく違うわけです。

“僕の忍び猟” と先ほどあえて書いたのは、“誰かの忍び猟” では、グイグイと広範囲を探ることを優先するかもしれないから。その場合はハイドレーションシステムが合理的かもしれないわけです。

 

安易にカテゴライズしちゃもったいない

“登山” とか “トレラン” というように、山でのアクティビティにはカテゴリーがあります。ジャンルと言ってもいい。

でもその言葉に囚われると、みんなと同じ登山・トレランをやらなきゃいけない気がしちゃう。そうじゃなくて、“ぼくの登山” ・ “ぼくのトレラン” といった感じで、あの人の登山と僕の登山は別物なのだ、とはっきり認識して取り組んだ方がおもしろい。そのわかりやすい例が “ブッシュクラフト”

“ブッシュクラフト” では「バトニングして薪を作って、フェザースティックを作って、メタルマッチをナイフで擦って火をつける」みたいなイメージがあると思います。もともとはそんなことなかったんですけどね。でも、今見るとみんなそんな感じです。

でも「僕のブッシュクラフトではZIPPOと松ぼっくりで着火する」でいいんですよ。もっと言えば「ぼくのブッシュクラフトではその場で1番簡単な方法を選ぶ」でいい。そのときライターと着火剤を持っていればそれを使えばいい。

「そんなのブッシュクラフトじゃない」

と言う人もいるかもしれないけど、「ぼくのブッシュクラフトではそうなんだよ」でOK。

その代わり、その競技はあなたしか知らないから、「合理的な道具・方法・技術」は自分で考えないといけない。

考えることをやめたら、それは「ぼくのブッシュクラフト」や「ぼくの登山」ではなく、「だれかのブッシュクラフト・登山」になってしまう。

 

合理性を考えることは、「ぼくの○○」を考えること

種目ごとの合理性の話から飛んだように思ったかもしれませんが、この「山での合理性を他人任せにしない姿勢」こそ、「ぼくの○○」というオリジナル種目を作ることに繋がるし、逆に「ぼくの○○」を意識することが、自分にとっての合理性を考えることに繋がると思っているのです。

「日帰り登山ではこれが1番合理的だね」

と偉い人が言ったとしても、それは「“その人の日帰り登山” ではこれが1番合理的だね」であり、「僕の日帰り登山では違うかもしれない」と思わなくちゃいけない。

当たり前のことなんだけど、ここに気が付かないまま「世界共通の唯一の答えがあると思っている人がいる」ことにも最近気が付いています

「単独忍び猟」ではどの鉄砲が1番いいんでしょうか?

そんなことを聞かれたことがありますが、「人による」 としか言いようがない。なぜならば、“ぼくの単独忍び猟” と “あなたの単独忍び猟” は別の種目だからです。さらに言えば、“今のぼくの単独忍び猟” と “3年後のぼくの単独忍び猟” は別かもしれない。当たり前ですよね。

だからあえて聞くなら——

あなたにとって「単独忍び猟」に1番適した鉄砲ってどれですか?

なら答えやすい。まぁ、実際は前者のような質問が来ても、後者のようなニュアンスだと思って答えるんですけどね。

 

山ではみんなが共通の種目に取り組んでいるわけではなくて、あなた独自の種目を作り上げているのだと認識することで、道具が必要な技術に違いが出て来るものだと思いますよ。

というお話です。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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