単独猟日記:腐った雪と鋼鉄の処女林と雨
北海道北部にいると冬はいつも氷点下。ゼロ度になれば暖かい方で、マイナス10度前後になることも少なくありません。
そんな中、3月の今は毎日ゼロ度を超えるようになりました。
暖かいのは、まぁいいとして、寒ければ雪になるところが、暖かいと雨になります。この日も予報は雨。どうなることやら。
雨の日でも出猟しますか?
みなさんは雨でも出猟しますか?
猟のスタイルにもよるかもしれませんね。わたしは雨でも行きます。土砂降りだったり、強風を伴うような場合はまた別ですが、並の雨なら思い切って出猟しようと考えています。
なぜか?
自分の用意している道具や服装が雨に対して有効かどうかを確かめたいから。つまり実験です。
本気で山奥まで入り、1泊2泊しようと思っているようなときは小さなミスでもかなりのストレスになるので、実験みたいなことはしないのですが、それほど奥まで入らないときは、ここぞとばかりにいろいろ実験します。
だから雨だと分かっていても、服装も道具も変えない。そうやって実験してみるわけです。もちろんキツくなったらリカバリーできる範囲でやっています。
この日も実験のつもりで、いつも通りの道具・服装で山に入りました。
新しい足跡がないなァ
幸い雨は本降りになることなく、シトシトシトシトと降っているだけ。全身がしんなりと濡れていますが、特にストレスもありません。
とにかくしばらくは林道を歩きつつ、シカの動向を探ります。足跡があれば、右の山に入っているか、左の山に向かったのかを確認。新しい足跡なら追うつもりでしたが、それほど新しいものもなく、古い足跡も多いわけでもなく、いまいちつかみ所がない状況。
「シカはどこにいるんだ?」
さて、この日は雪がだいぶ溶けていたので、つぼ足(スキー・スノーシューを使わないスタイル)での出猟です。林道の雪など、もはやないに等しい状態。軽快に歩きます。
——が、しかし。
林道を降りたら腰まで沈んだ
「雪が少なくて林道歩きが快適〜」とルンルン気分でしたが、「さて、ここから山に入るか」と林道を降りたらその1歩目でズボボボボボと腰まで沈む事故。
「えぇぇ……」と口に出ましたよ。
すぐに林道に這い上がります。腰から雪が入り冷たい……。スキーを取りに戻ろうとも考えましたが、すでに2Kmは歩いてる。戻るの嫌すぎる。
周りを見て、比較的浅そうな場所を選んで入ります。それでも膝まで雪の中。
「俺はハンターだ」と謎の言葉で自分を鼓舞し、汗をかきかき進んでいきます。
一方その頃、雨も段々と強くなってきました。
待ち伏せ(雨宿り)をしよう
しばらく深い雪の中をラッセル気味に行動していましたが、すさまじい疲労と、徐々に強くなる雨に心が折れ、待ち伏せという名の雨宿りをすることにしました。
ちょうど良い感じの大きな木の下に入ります(上の写真)。ここは雪もなく、笹が伸びているため、待ち伏せには最適。座れば周りから見えないし、立てば360度見渡せます。
視界の範囲でいくつかの獣道があるのを把握しているので、そのあたりを通るのを期待していました。
しかし全然こない。
30〜40分ほど待ちましたが、ダメ。まぁ、正直に言えばこの辺りを通っているのは早朝(あるいは深夜)だと思っているので、通らないのが当然……。雨宿りしたかったから……。
その後、場所を変え、針葉樹林の中で待ち伏せすることに。
モンベルのアルパインサーモボトルのおかげで暖かい飲み物が飲めます。ありがたや。
空腹を感じ、パンを食べ、その辺の木で爪楊枝を作ってシーハーシーハー。
本州で針葉樹林といえば、薄暗いけど下草がなくて、歩きやすい場所というイメージを持っていました。しかし少なくともわたしが行く山域では違います。杉(?)の枝が伸び放題で、歩くとまるで鋼鉄の処女の中を歩いているような有り様になります。もう少し上品に言えば車の洗車機に入っていく感じです。
(ぼくはこういう場所を “鋼鉄の処女林” と呼んでいます)
ところが、シカはこの中を歩いているんですよ。たまに足跡を見つけると、こういう鋼鉄の処女林に入っていきます。途中までは入れても、そのうちイタタタタタタ、となり退散。なかなかうまくいきません。
植樹林なので、手入れがされていないのかも知れませんが、その辺の事情はよくわかりません。
だめだァ
この日は結局、目撃ゼロ。
割と新しい足跡を見つけ、それを追跡したものの、先述の通り鋼鉄の処女林に入られてしまい、それでもハンターの意地でしばらくは追跡したのですが、手の甲に無駄な傷を負っただけで、成果はなく……。
ちょっと消化不良気味の猟でした。
しかし雨対策としてはじつは調子が良かったです。いつも通りの格好で行ったので、雨具も着ていませんでしたが、とくに濡れることもなく、やれそうな感じでした。もっと大雨ならまた違うでしょうけどね。
むしろキツかったのは深い雪。Twitterでお世話になっている先輩ハンターさん曰く、この時期の雪を「雪が腐っている」と表現をするそうです。なんかグズグズで汚くて歩きにくい雪でした。次回はスキーなりスノーシューは必ず使用します。
【宣伝】
犬なし単独忍び猟でイノシシを獲ろうと模索した2年間の様子が本になりました。狩猟に興味がある人はぜひ手に取ってみてください。
また、おもしろいと思ったらこちらをクリックしていただけると、ランキングが上がります。応援のつもりでお願いします。
ブログ村へ