単独猟日記:2つの動物の音……何と何?
入山するときは曇っていて、妙な風も吹き、いまにも崩れそうな天気でしたが、それも2時間ほど歩いているとすっきり晴れてくれました。
天気は良いのですが、獲物の気配がない……。そんな日の出来事でした。
シカノスに獲物がいない
シカノスはわたしのブログにたびたび登場する鹿がやたらと多いエリア。広いエリアを指していて、多いときは4群れが1度に入っていたりします。そうでなくても、いけば必ず1群れはいる有力な鹿の付き場なのです。
ところがこの日はいない。
1頭もいない。
シカノスもあと100mも歩けば終わり……。そんなタイミングでした。
四つ足の音
小さな尾根(と呼べないほど小さな尾根状の地形)の向こうから明らかに四つ足の動物が枯葉をまさぐる音がします。近かったこともあり、鳥とか小動物のものではないと確信しました。
小尾根のすぐ向こう。たぶん直線距離は30mもないような場所にいます。音は連続していて、こちらにまったく気が付いていないようです。
一帯が枯葉で埋め尽くされたような場所なので、1歩でも動けば音が出てしまいます。安易に動けません。小尾根が続く地形で、ちょっと走られたら死角に逃げ込まれるのは必至。何度もチャンスがある場所ではないのです。
まずは何頭いるのか、音で判断します。
よく聞いていると、音は2方向から聞こえます。わたしから斜め上にいった先と、斜め下にいった先。ちょうど前方の上と下にいるようです。少なくとも2頭。あるいはもう少しいるのかもしれません。
近いのは上側の音。本当にすぐそこです。石を投げれば当たりそうな距離。
最初は向こうが少しずつ近づいてくるのを期待して、動かずに待っていたのですが、まったく近づいてこない上に、やや遠ざかっている印象さえあったので、こちらから向かって行くことにしました。
相手が動いたら動く
どうやら向こうはエサに夢中になっているようです。結構連続的に音がします。
そこで向こうの音がしているときに1歩動く、という形で近づきます。何歩か動くと、小尾根の向こうに鹿の背中が見えました。頭を下げて地面にあるなにかを食べているようです。
慌ててしゃがみます。しゃがめばお互い死角に隠れるので、ひとまずそこで落ち着くことに。
「ここからあと2〜3歩近づけば撃てるかもしれない。でもすでに距離は20mくらい? これ以上近づけるか?」
下方の音も気になります。そちらのシカに気取られれば、群れごと逃げられるでしょうからね。
意を決して近づく
帽子を取って地面に置き、しゃがんだままの姿勢で2〜3歩近づきます。
言葉でいうのは簡単ですが、最初の発見からここまで20分以上は経過しています。高い緊張感の中でアプローチしていました。
ソーッと頭を上げると鹿は変わらず餌を食べています。
しかしなにかの気配を察したのか、シカがパッと頭を上げました。目が合いました。
「やばい!ばれた!?」
とりあえず中腰の姿勢のまま、動かずに睨み合いを続けます。すると、鹿はまた何事もなかったように餌を食べ始めました。こちらが動かなければ鹿は逃げないものです。
しかし、このときもう1つ問題に気が付きます。バックストップがないんです。頭を撃ちたいのですが、微妙にバックストップがない。身体の下半分くらいはバックストップがありますが、そんなのはバックストップとは呼ばないでしょう。
参った……別の角度から近づかないと撃てない……。
バックストップを確保しようとした矢先……
改めて、別のルートから近づくことを決意したものの、簡単に別のルートから近づけるものでもありません。
近すぎて、音をたてずに動くのが難しすぎます。鹿の音に乗じて少しずつ動きますが、小枝を1本踏んでしまい、鹿が警戒してこちらを向きました。またがっつり目が合います。その瞬間、鹿は猛ダッシュで逃げていきました。
しかし逃げていく足音は1頭分……。
「待てよ! もう1頭いるはず。もしかしたら逃げ遅れているかもしれない!」
この考え方って重要で、群れが逃げるとき、1頭2頭が逃げ遅れて、死角に隠れて我慢していることってよくあるものです。
もう1つ音がした方向に早足で近づくとそこに立っていたのはカモシカ!
「なあに?」とでもいうような表情でこちらを見ています。逃げる気もありません。
「なんでお前がいるんだよ!」
鹿とカモシカが一緒に餌を食べていたようです。
お互い、あんまり気にならないんですね。変なの。
集中力の消耗
この一件でグッタリと疲れてしまったので、普段はまずやらない焚火を熾して、小一時間休憩。そのあと、下山しました。
コーヒーなどを持ってきていないので、お湯を沸かして、そのまま飲みます。近くに笹でもあればお茶にするんですがそれも見当たりませんでした。
それにしてもシカとカモシカが一緒に食べるもんなんですね〜。初めて見ましたよ。おもしろかったァ。
また、おもしろいと思ったらこちらをクリックしていただけると、ランキングが上がります。応援のつもりでお願いします。
ブログ村へ