映画『エベレスト』最悪な遭難事故を描いた映画を通して商業登山について考える

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昔は登山家の夢だった世界最高峰だったエベレストですが、今ではエベレスト登山ツアーなんてものができて、金さえ払えば誰でも登れるようになりました。

そんな登山ガイド付きのエベレスト商業登山が主流となった1996年頃、実際に起きたエベレスト大量遭難を描いた映画が今日ご紹介する『エベレスト』です。

映像美と過酷な描写で、気付けば涙が出てくるような映画でした。

『エベレスト』

“1996年のエベレスト大量遭難” をご存じでしょうか? エベレスト登山史上2番目にひどい遭難事故だったと言われています(1番は2014年の雪崩)。

参考:1996年のエベレスト大量遭難|Wikipedia

エベレストは1953年にイギリス隊により初登頂されました。その後、登山技術が確立され、参加者を募って登頂するツアーが主流となります。ルート工作などはガイドやシェルパが行いますので、アマチュア登山家でも金さえ払えれば登れる時代になったわけです。

そんな商業登山が主流となっていた1996年がこの映画の舞台です。

エベレストベースキャンプは登山ツアー客でごった返します。天気が良い日に登りたいのは、どのツアー会社も一緒です。なにしろ普通の登山以上に天気が重要になる登山です。万が一、頂上アタック中に嵐に遭えば、遭難……つまり死が待っているわけです。

となると、みーんな天気予報を元に、同じ日に頂上アタックするのは必然。

すると登山コースはツアー客で大渋滞。思ったようなスピードで登れなくなります。すると時間がかかる。登るのに時間がかかると危険度が高まります。登頂を断念するツアー会社もある一方、無理をするツアー会社も出てきます。

そんな無理をしたツアー会社の1つ “アドベンチャー・コンサルタンツ社” がこの映画の中心です。

ツアーの成功=ビジネスの成功

アドベンチャー・コンサルタンツ社は去年、登頂者を出すことができていませんでした。ガイドであるロブは、ちゃんと安全意識の高い人間で、昨年の頂上アタックでは、頂上を目の前にして「時間がない」と断念。正しい判断でした。

さて、ツアー会社としては遭難者を出さないことも重要ですが、ビジネス的観点では登頂者を出すことも重要です。「去年は○○人を登頂させた」と宣伝したいわけです。

真面目なガイドであるロブも、そういうビジネス的観点が抜けきらなかったのかもしれません。

客のひとりが、頂上を目前に時間切れになります。

「登らせてくれ!!!」

悲痛な客の叫び。確かに頂上は目の前。あれがもしエベレストでなければ、絶対登ったでしょう。しかし、場所は8000mを越える場所。1歩足を出すのもやっとです。

「だめだ時間切れだ」
「お願いだ!」

というやりとりの末、ガイドのロブは登ることを許します。そして客とロブで頂上を目指し、その客を登頂させるのです。14時までに登頂できなければ断念、と決めていたものの、このときすでに16時。日が暮れ始めると同時に嵐がくる。酸素ボンベがなくなる。低体温症の症状も出てくる。

ロブと客は下山できるのか?

そのころ下山中だった他の客は嵐をどうやり過ごせるのか? そして下山できるのか?

誰かが悪人だったり、とんでもない馬鹿がいておきた事故というよりも、ちょっとした人間の隙に自然の猛威がスルリと入り込んで起きた悲劇だと感じました。もちろん、計画を無視して登頂を目指したことはガイドとしていかがなものか、とも思いますが……だけど人間ってだれしもこういう隙があるものだとも思います。

エベレストを登るということは、そういう隙1つも許されない難しいものなのだと痛感しました。

商業登山の是非

この映画を見れば「商業登山ってどうなのよ!?」と言いたくもなると思います。

登山技術もなく、自分以外の誰かが命がけで済ませてくれたルート工作に従って登るだけ……。そんなの冒険でもないんでもない、ただの道楽じゃないか、と。

この映画の中でも、一瞬、アイゼンの装着の仕方さえ知らないツアー客が映る場面があります。そんな人間がエベレストに挑戦して何になるのか……、と。

こういった商業登山ってネパールにとっては大きな外貨収入になっていますし、シェルパにとっても大きな収入源になっているようです。そういうシェルパと話をしたことがありますが、怖いけど、家族を支えるために大事な収入源になっていると言っていました。

わたしは個人的な意見として、金にものを言わせた商業登山を尊敬してはいません。他人の命をかけて登るのってどうなのか? と思うンです。かけるのは自分の命で十分だろう、と。

わたしはアンナプルナの周囲を210Kmほど歩くトレッキングをしたことがあります。夫婦ふたりきりで歩き通しました。アンナプルナ・サーキットと呼ばれるコースです。最高標高5,416m。そりゃ8000m峰とは比べものにならないけど、それでも結構大変です。

そのコースでも、シェルパに荷物を持たせて、自分は軽装でスタスタと前を歩くツアー客に何度も遭遇しました。大荷物を背負い、見えないほどの後方を歩いているんです。もしそのシェルパが倒れても、誰も気がつくことはないでしょう。

手伝ってもらうのが悪いとは思わないけれど、そのシェルパのことを同じチームの仲間として、ケアしてあげているか? と疑問がつきませんでした。

なんでそんな荷物が多いんだろう? と見ていると、分厚い観光ガイドブックだったり、夜読むための本を持ってきているわけです。ガイドブックなんて、必要なページだけ切り取って持ってくればいいのに……、と思います。

商業登山を一様に否定する気はありません。たとえば山を深く楽しむために、あるいは自分に足りない部分を補うために、ガイドやポーターを雇うことはあり得ると思います。完全に依存する関係ではなく、同じチームとして支え合う関係性で。

かつては一部の人だけが叶えられた夢を、グッと叶えやすくしてくれたのが商業登山であるのも事実。それによって人生に張り合いが出た、なんて人もいるだろうと思います。ほら、最近じゃ「宇宙に行くツアー」みたいなものも出始めているんでしょ? そりゃ、行けるなら行きたいと思う人もいますよね……。

この映画はエベレストの厳しさをとてもストレートに表現していると思います。自分の命を賭けているんだ、と分かって挑戦してほしいな、と。

蛇足っぽく言うけど、映像が半端なくキレイです。どうやって撮影したんだろう……。

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