映画『ハンター』物語も主人公も語りすぎない寡黙な狩猟映画

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今日ご紹介するのはハンターにオススメの映画です。その名も『ハンター』。

タイトルを見ただけで、ハンターならつい見たくなる作品ですね。これがおもしろいんですよ。賛否分かれそうなエンディングも含めて、良い映画でした。

『ハンター』

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まずはあらすじを——

百戦錬磨の傭兵にして凄腕のハンターであるマーティンは、とあるバイオ・テクノロジー企業の依頼でタスマニア島を訪れた。彼の目的は、すでに絶滅したとされるタスマニアタイガーの生き残りを捕獲すること。この困難極まりない任務を遂行するために、未開の秘境へ足を踏み入れたマーティンは着実に調査を重ね、ベースキャンプ代わりの民家で暮らす女性とその幼い子供たちと心を通わせていく。そんな母子と家族のように触れ合う日々は、ひたすら冷たい人生を歩んできたマーティンの胸の奥底に熱い何かを甦らせていった。やがてこの仕事への倫理的な疑念に駆られた彼は、秘かに迫り来る脅威との闘いを強いられ、人生最大の決断を迫られていくのだった…。
ハンター|Amazonビデオ

凄腕ハンターという言葉から連想するように、主人公マーティンは多くを語りません。黙って淡々と調査を進めてます。山でも無駄口ひとつ叩くこともなく、木でくくり罠を自作し、足跡を探し、タスマニアタイガーを追います。とにかく山のシーンは静か。静かなだけに生々しく、自然の深さも感じられ、見ていて「いい山だなァ。こんな山に行ってみたいなァ」と思わずにはいられません。

 

2軸の物語

マーティンがタスマニアタイガーを探すというのがX軸の物語とするなら、ベースキャンプとしている村での人間関係がY軸の物語です。

村での人間関係は、最初こそただの面倒ないざこざでしかありません。マーティンも「放っておいてくれ」というオーラ全開で、不干渉を貫きますが、泊めてくれていた民家の子どもがガシガシとマーティンの懐に入っていき、しまいにはマーティンも心を開きます。しかしこれにより、マーティンは村での人間関係に巻き込まれていきます。

このX軸とY軸の物語が絡み合いながら、タスマニアタイガーがただの絶滅した生き物ではない、ということが分かってくるのです。

タスマニアタイガーは見つかるのか? そもそもなぜタスマニアタイガーを追っているのか? という点が物語の1つのピークとなります。

 

ウィレム・デフォーの演じる寡黙なハンター像

凄腕ハンターといえば、寡黙で、我が強い印象がありませんか?

たとえば “マタギ” という言葉から連想する人間像もきっとそうだと思います。

ウィレム・デフォーが演じるハンターマーティンもまさにこのパターンです。しかしいわゆるマタギと違うのは、マーティンが傭兵あがりであることでしょうか。

たとえばザックはモーリシステムのついた、コヨーテブラウンのミリタリー色の強いデザイン。そのザック1つで12日間の山ごもりをハンドも繰り返します。荷物は少なく、雨が降っても、動じず、自然にあるものだけで罠を淡々と作っていく姿は、サバイバル好き・ブッシュクラフト好きの人にも響くものがあるだろうと思います。

このマーティンというハンターがカッコいいんですよ。男が惚れるタイプの人物像です。パパッと荷物を背負って、山にこもり、生きていくマーティンの姿をもっと見ていたかったとさえ思います。

 

環境保護活動 vs 現実

この映画には環境保護活動家と、村の人たちの対立も描かれています。対立の内容はバーに貼られたチラシが全てを物語っています。

「自然より仕事を守ろう」

山奥の村で、主要産業が林業であり、木を伐採しそれを販売することでなり立っている村です。そこに「伐採反対!」という声高に叫ぶ環境保護家たち。そりゃ争いになりますよ。

この対立については何も着地しません。どうすべきか、映画は語りません。ただ「そういう問題がある」という事実だけをポーーンと見ている人に投げかけるだけです。

 

伏線や謎をすべてあきらかにしない映画です。それがこの映画の魅力だと思っています。

昨今の映画や小説はなにもかも明らかにしていく傾向があり、個人的にはそれが嫌です。そんなに潔癖にならなくてもいいんだ、と叫びたい。見終わった後に「あれはこのあとどうなるんだろう?」とぼんやり考えちゃうくらいがよい物語なんです。

そういう意味でも良い余韻のある映画でした。梅雨の夜にどうぞ。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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