初めての猟銃でボルト式を検討している人に伝えたい弾代のこと

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ここ最近、「1挺目にボルトアクションを買おうかと思ってますが、アドバイスありますか?」という種類の質問を何度か頂いた。訊かれるたびに自分なりに思うことを答えてきたけど、せっかくなので、記事にしてまとめてみたいと思う。

「最初はこの銃を買いなさい」と能書きを垂れるほど猟銃について詳しいわけではないんだけど、それでも自分の短い経験の中から思うこともある。

いろいろある情報の1つとして読んでほしい。

定番のボルトアクション式の散弾銃

世の中の全ての銃なんて知る由もないのだけど、日本で流通している定番のボルトアクション式散弾銃はこの4つ当たりかな、と思う(この中でも新旧モデルがあったり、銃床違いや上位モデルのようなものもある。そのへんはまぁご自身で調べて頂ければ、と)。

メーカー 口径 銃身タイプ
MSS-20 ミロク 20番 スムースボア
A-Bolt Browning 12番 ハーフライフル
210 サベージ 12番 ハーフライフル
220 サベージ 20番 ハーフライフル

これ以外にもターハントも出回っているかな?

 

口径と銃身タイプの一般論

この記事では個々のモデルの優劣を語りたいわけではない。それでも上記のモデルを紹介したのは、実のところ「モデルを決めると口径と銃身のタイプが決まる」という当たり前な点を強調したかったから。

個人的な意見に入る前に、一般論としての口径や銃身タイプごとのメリット・デメリットを挙げてみる。

<口径>

12番 20番
威力 強い 弱い
反動 強い 弱い

 

<銃身タイプ>

スムースボア ハーフライフル
精度 低い 高い
有効射程距離 短い 長い
散弾を撃てるか? 撃てる 撃てない※1
弾代 安い 高い

※1 撃つことはできるでしょうが、オススメできる使い方ではないはずです。

 

正直なところ、一部微妙な項目もある。たとえば精度。スムースボアが低くて、ハーフライフルが高いと簡単に言い切ってしまって良いのかな? と疑問がある。良い弾と良い銃身に、良い腕が伴ったときに “ポテンシャルが高いはず” という意味で、あくまで一般論としてこう書いた。

また有効射程距離なども個人的に実験したわけでもないし、確固たる情報を持っているわけでないので、だけどやっぱり150m〜200mという距離だとハーフライフルが上なのは間違いないと思う。たぶん。

銃の世界は想像以上にいろんな要素が入り組んでいて、一概に「○○なら、××だ」と言いきれないことがあるということを、最近身にしみて感じているので、上記はあくまで「初めての銃を選ぶときに、ある程度知っておきたいこと」くらいに思って欲しい。

 

どう選ぶか?

もちろん、銃を選ぶ上で1番重要な点は「好きである」こと。

好きならそれを買おう。好きであること以上のメリットはないと思う。好きなら練習にも身が入るし、丁寧にお手入れするし、愛着が湧けば長く使うことにも繋がり、それはつまりその銃に慣れて、ポテンシャルを活かせるようになる。

 

でも「A-BoltもMSS-20も同じくらい好きで決めきれない」みたいに、迷ってしまうケースも多いと思う。

そこで1つ、銃を持つ前はあまり重要視しないかもしれないけど、所持してからは超重要になる事実を強調しておきたい。

“弾代” だ。

ハーフライフルではサボットと呼ばれる弾を使う。細かい話は抜きにするけど、とにかく高い。1発で400〜700円くらい。一方で、スムースボアで使うのは普通のスラッグ弾。こちらは定番のレッドバードという弾が1発200〜250円くらいで買える。

その差は2〜3.5倍。サボットの中でも値段の幅があるけど、ぶっちゃけ自由に選べるモノでもない。というのも銃との相性があるから。最初はいろいろ試してみて、もし相性が良い弾が600円なら、それと付き合っていくことになる。

仮にスラッグとサボットの差が3倍であるとして、それが意味することは

『スラッグは同じ予算で3倍練習できる』

ということ。たとえば3万円あったら、スラッグだと150発。サボットだと50発となる。「いや、べつにお金はあるから気にならない」というならいいけど、並の人は、ギリギリの予算の中で練習していくことになると思うから、気にしておきたい。

 

銃の精度 < 射手の腕

さて、銃身タイプの話で「ハーフライフルの方が精度が高い」と書いたが、補足として「あくまで良い銃身、良い弾、良い腕が揃ってこそ」とも書いた。

どんな精度が高い銃を使っていても、腕がなけりゃ当たらない。そして腕は練習しないと磨かれない。

お金だけが全てではないけれど、ハーフライフルを使うと練習に3倍の金がかかるわけで、練習量は1/3になりかねない。そうなると、成長曲線は鈍くなり、なかなかうまくならない。うまくならないと当たらない。

——ちょっと極論だとは思うけど……ネ。

お金だけが練習のハードルじゃないのも事実。仕事の都合で1ヶ月に1回しか射撃場に行けないなら、ハーフライフルでも、スムースボアでも練習量は変わらないかもしれない。弾が安かろうが高かろうが、集中して練習できる弾の数は限られている。

 

初めての銃を買うまでは「銃のスペックやポテンシャル」に気持ちがいきがちだけど(私もそう)、結局は練習しないと精度は活かされない。

とくに初心者は撃ったら撃った分だけうまくなると思う(いま、自分がそのステージにいて、実感している)。

最初はドカンと撃って、当たったり外れたりするだけだけど、数十発撃つ頃には少しはフォームのことが気になって、あれこれ改善されてくる。数百発も撃てば最初はバラバラだった立射のグルーピングも良くなる兆しが見えてくる。

「弾代が安ければ早くそこまで到達できる」という考え方もあると思う。

 

でも好きならそれでいい

あえて繰り返すけど、ハーフライフルを否定する気はさらさらない。わたしがMSS-20を選んだ理由は、弾代が安いからなんかじゃなくて「好きだから」だった。

でも、買ってから弾代という現実に直面して、「ああ、サボットに比べて安くて助かった」とつくづく思った。じゃなけりゃこんなに練習はできなかった。

たとえばサベージやA-Boltが好きなら、それが絶対オススメ。好きなら弾代なんかどうにかしてでも練習すると思う。でも、少なくともそういう弾代のことも考えて選んだ方がいいかな、とは思う。

 

手詰めという手もある

初期費用はかかるけど、弾を自作するという手はある(手詰めとかリローディングとも言う)。

手詰めすると普通のスラッグと変わらない価格帯(あるいはもっと安い??)になってくると聞く。

ただ、手詰めは手詰めで奥が深いようで、「チョロッと作ったら安くて当たる弾だった」なんてことはないようで、当たる弾を作るためには山のようにハズレの弾を作っては撃つことになるらしい。つまり、長期的には安上がりになるかもしれないけど、初期投資は発生する。

 

2挺目にするという手も、やっぱりある

1挺目にボルトアクションが欲しいという気持ちを止める気はないけれど、銃の初心者としてはクレーの練習なんかもしたいと思う。そうなると、ボルト式だと厳しい(できないわけじゃないけど、推奨されているものではない)。

それなら上下か自動あたりをしばらくの練習用と割り切って買うのはありだと思う。その銃でクレーも練習できるし、スラッグの基本的な射撃を身につけてからハーフライフルを買えば、最初からある程度の基礎を身につけた状態で扱える。

 

でもハーフライフルのポテンシャルは時々羨ましく感じる

というわけで、個人的な意見としてはもしボルトアクションを1挺目に買うなら「(予算が潤沢にあるんでない限り)最初の1梃で迷ったらスムースボアにしておこう」と思ってはいるのだけど、時々ハーフライフルが羨ましくなるんだよね。

Twitterなんかで「150〜200mでこれくらい当たる」って話を見ると、ネ……。

そんなにちょくちょく買い替えられるものじゃないから、最初からハーフライフルが欲しいって気持ちは、実は分かる。そしてその判断が悪いとは思わない。

ただ「弾代」だけはちょっと気に止めておいた方がいいかもよ、という提案。

 

いろいろみなさんもご意見があると思います。ぜひTwitterあたりで教えてください。


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狩猟やってます。ひとりで歩き獲物を追う単独忍び猟が好き。2022年からはアイヌ犬のイチを連れて一銃一狗に挑戦します。狩猟系ブログ《山のクジラを獲りたくて》運営。狩猟系の本を集めるのが趣味。雑誌『狩猟生活』『ガンズ&シューティング』に寄稿し始めました。 ヤマノクジラショップ始めました:https://yamanokujira.theshop.jp

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