書評『罠ガール 1』真面目な駆除マンガ
罠ガール。
「女子高生が罠で獲物を獲る狩猟マンガ」と聞いて、わたしが真っ先に連想したのは頭文字Dだった。
頭文字Dの主人公である藤原拓海は13歳のころから無免許で(本人にその気はなかったが)走り屋としての英才教育を受けていた。18歳で免許を取って、走り屋デビューすると、周りは初心者ドライバー扱いするが、実は天才的に速くて誰も勝てない。そんな藤原拓海が、より速い人とレースを繰り広げるヒーロー的物語だ。
さて、罠ガール。こちらもそういう系統のものかな、と思った。たとえば家族に天才的ハンターがいて、英才教育を受けて……という具合に。
でも違った。主人公の千代丸こと “ちーちゃん” はすっごい真面目に猟のこと、獣のこと、鳥獣被害のことを勉強している普通の女子高生だ。まぁ、それ自体が普通じゃないとも言えるけど。
そんなちーちゃんの猟日記とも言えるマンガになっている。
『罠ガール』
このマンガを私が短くまとめて良いなら「真面目な駆除ガールの話」だ。
あるいは、ちょっとだけ連想したのは『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』だったりする。「もしも女子高生が鳥獣被害対策に真面目に取り組んだら」ってなところだろうか。
それくらい真面目で、言い換えれば隙のないマンガだ。矢口高雄氏の『マタギ』とは違う。もちろん、どちらが良いということではなく、あちらはマタギの伝承にフィクション的なおもしろさをしっかり加え、読み応えのあるエンタメ作品としておもしろく読んだ。

で、『罠ガール』はといえば、やはり真面目。どう真面目か? たとえば3捕獲目(第3話)の『ビワを守れ』で、自宅のビワを鹿が食べに来るというエピソードがある。
「シカがビワを食べるから駆除をする」と決めず、まずシカよけネットを張る事から始める。エピソードを全て語るのも野暮なので内容は省略するが、いろいろ防護策を講じた上でそれでもダメだから駆除に踏み切る、というスタンスだ。
このエピソードを読んだとき、これは真面目な駆除マンガなんだ、と感じた。
それこそ「マンガで分かる有害鳥獣駆除」とも言えるような内容だ。
そして真面目なあとがき
マンガ自体も真面目な印象なのですが、最後のあとがきもやっぱり真面目。
少しでも被害の現状や対策について伝えられたらと思い、描かせて頂きました。
引用元:罠ガールのあとがき
駆除の世界も奥が深いだろうし、こうしてマンガを通して駆除への理解が広がるかなーとも思う。
「んで、おもしろくないのか?」
真面目真面目と書いているので、そう捉えられたら困るので、すこし補足してみよう。
たしかにハラハラドキドキ、波瀾万丈、ドラマティックな物語ではないかもしれない。でも獣を獲るのだから駆け引きもある。ある意味で本当の “猟の駆け引き” を読めるという面もある。たとえば雄ジカがかかったとき、止め刺しができずに、助けを呼ぶ場面がある。
そのときの緊迫感はなかなかのものだ。
また、この第1巻の中で徐々に登場人物が増えていっている。後半で別の女性ハンターが登場しており、その人物の動きも含めてとっても気になる。
地域との関係なんかも描かれているので、わな猟の実情を楽しく読むにはとてもいい気がする。
第2巻が出たら読むつもりだ。
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